- 質問
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母の有料老人ホーム入居を検討しています。母には昔から通院している診療内科があり、入居後も同じ病院へ通うことを希望しているのですが、今までと同じ病院に通院し続けることはできますか?
- 回答
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条件さえ整えば、入居後も通い慣れた医療機関に通うことはできます。ただし、老人ホームの場所がその病院から遠く離れていたり、スタッフの付き添い費や交通費などの金銭的負担がかかることもあります。また、通院が本人の身体的な負担となるような場合は、老人ホームの協力医療機関の受診を勧められます。
通い慣れた医療機関に通い続けたい強い希望がある場合は、老人ホーム見学の際に通院について確認を取るようにしましょう。今回は老人ホーム入居後の通院と健康管理について解説していきます。
1.ほとんどの介護施設は訪問診療で対応
老人ホームには協力医療機関と呼ばれる提携病院があります。協力医療機関の主な診療科目は内科、精神科、歯科です。定期的に協力医療機関の医師が老人ホームを訪問し、ホーム内での診察(訪問診療)を受けることができます。
ただ、これまで通い慣れた病院に通いたい、かかりつけの先生のもとへ行きたい、という希望がある場合は、入居前に相談をしてみましょう。
本人が通院できる状態か
身体的に自立している方であれば、自宅から病院に行くのと同様に通院は可能でしょう。しかし、体が不自由で一人では通院できない場合はホーム側との相談となります。
その上で通院可能な条件が整えば、協力医療機関以外の通院も可能です。また、本人の医療情報は老人ホーム側で常に把握していますので、他の医療機関からの投薬の対応などにも相談にのってくれるでしょう。
協力医療機関の医師は定期的に老人ホームに訪問してくれ、館内で診療を受けることができます。心身だけでなく経済的にも負担が軽くなるので、メリットの一つとして覚えておきましょう。
通院介助は自費になる?
有料老人ホームでは必要に応じて通院介助を行なう場合があり、通院にかかる費用はすべて施設の管理規定に定められています。
通院介助が介護保険対象内のサービスに該当するのか、実費負担がかかるものなのかは老人ホームによって異なるため、詳細は管理規定を確認しましょう。
提携外の病院であっても「半径2km以内の送迎は無料」といった老人ホームもあります。
2.協力医療機関外の病院付き添いは家族がおこなう
通院は、病院と処方された薬の受け取りで計2か所に足を運ぶことが多く、思いのほか体力を使います。元気なうちはできても、加齢とともに通院そのものが負担になるはずです。
一人で通院できない場合は家族が対応
協力医療機関以外の病院へ本人が一人で通院できない場合は、まず家族が付き添うことになります。家族が付き添えない場合は、ホームの職員が付き添ってくれるところもありますが、有料サービスとなる場合が多く、例えば「30分で1,500円」といった費用が発生します。
通院介助だけ別の介護サービスを利用する
施設スタッフは人手不足のところも多く、人員体制次第では有料サービスでも断られる場合もあります。その際は通院介助をしてくれる有償ヘルパーの利用を検討しなければなりません。
有償ヘルパーを通院時に利用する場合は、自費で介護事業所と別途契約を結ぶことになります。
介護のシェアリングサービスも一考
通院時の送迎介助などをヘルパーに依頼する場合など、介護シェアリングサービスが注目されています。介護シェアリングサービスとは、時間単位でヘルパーをスポット利用できる介護保険外の自費サービスです。
ネットで簡単に申込ができ、数時間単位で利用できる使い勝手の良さが魅力で、こうしたサービスは続々と登場しています。入居する老人ホームとは別に、通院介助にヘルパーを必要とする際は検討してみてはいかがでしょうか。
このように、家族以外の方が付き添う場合は、別途費用が掛かることが多いので、入居契約前に確認をしておきましょう。
通院にかかる交通費|遠距離だと思わぬ出費に
さらに歩行ができず公共交通機関での通院が難しい場合は、タクシーを使うこととなり交通費もかかります。
自治体によっては通院にかかるタクシーの費用を「福祉タクシー券」として助成してくれるところがあります。その対象は身体障害者2級以上(人工透析を受けられている方も含む)または療育手帳A1またはA2以上の方などです。
福祉タクシーの利用券は利用する基準や申請方法が各自治体により異なっている場合が多いので、ホームの責任者やケアマネジャーに確認する。あるいは居住地域の役所に確認してみてください。
特殊な診療科目の受診が必要な場合
協力医療機関では対応できない特殊な病気の場合は、老人ホームの生活相談員から近隣の通院可能な病院の情報提供をしてもらい、ホームから通院することになります。
人工透析など定期的に通院するケースや、通院でがんの治療を行うケースなどもそれにあたります。また、眼科や整形外科等、協力医療機関にない診療科目の受診も同様です。通院頻度が高い場合は、病院の方で送迎バスなどの運行がないか確認してみましょう。
3.緊急時の場合はどうなる?老人ホームの対応
体調急変などの緊急時、老人ホームはどのような対応をしてくれるのでしょうか。
ここでは一般的な対応について解説しますが、厳密には施設ごとに異なります。入居契約時や重要事項説明書等で確認しておきましょう。
内科的な病気の場合
発熱や、施設内で感染症がうつったなど、内科的な病気の場合には、協力医療機関の医師が迅速に対応します。看護師が常駐しているホームでは、医師が駆けつける前に可能な範囲で応急処置をしてくれます。
緊急性が高い場合
「転倒して動けなくなった」、「心臓や脳血管の病気により倒れた」というような緊急時は救急車を呼びます。本人の医療情報はホームから救急隊員に伝えられ、受け入れ先の医療機関の選択にも考慮されます。
しかし、緊急時はベッドの空き状況といった事情から本人の意に添うことが難しく、それまでかかったことのない遠くの病院へ搬送されるケースも少なくありません。
急な体調変化など、緊急時はホームごとに対応が分かれます。例えば人手の少ない夜間帯などはどのように対応してくれるのか、入居前に必ず確認しましょう。
感染症の対応
インフルエンザやノロウィルスなど感染症の場合は、外出を伴う通院は困難になります。健康相談もできるかかりつけ医として、内科に関しては老人ホームの協力医療機関にかかることをお勧めします。
老人ホームでの看取り
老人ホームによっては、終末期の対応から看取りまで行ってくれるところがあります。
老人ホームでの看取りは、基本的に協力医療機関がサポートします。そうした希望があれば、入居時から本人、家族ともに協力医療機関との信頼関係を築いていくとよいでしょう。
まとめ
老人ホーム入居後でも、通い慣れた医療機関での受診は条件が整えば可能となります。
条件とは下記の5点をクリアすることです。
①通院可能な心身の状態であるのか ②付き添いは誰がするのか ③老人ホーム職員による付き添いは可能か ④有償ヘルパーの契約は実現的か、費用はいくらか ⑤月額負担に加え通院費用も年金で負担可能か |
このように、経済面・心身面での条件をクリアすることが難しい場合、なじみの病院からホームの協力医療機関に変更することをお勧めします。
協力医療機関の情報、診療可能な科目、訪問頻度、薬の処方などを入居前に確認をしましょう。