- 質問
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要介護3、認知症の80代の父が老人ホームに入居します。在宅で介護していたのですが、徘徊や粗相など大変でした。施設に入居しても、周りに迷惑をかけてしまうのではと不安です。
老人ホームでは、認知症の症状のある方にどんな対応をしているのでしょうか。認知症ケアについて教えてください。
- 回答
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現在、介護が必要な方の多くは認知症をお持ちです。そのため、老人ホームへ入居される方に認知症があることは珍しいことではなく、施設側も職員も、認知症の入所者様が安全安楽に過ごせるように、様々な対策を行っています。
例えば、認知症により歩き回ってしまう「徘徊」の症状がある場合は、職員間で「施設外へ出てしまう恐れがある」という情報を共有し、玄関は24時間の施錠、および外出時は職員が付き添うことを徹底しています。
介護は、ご家族と施設の信頼関係が何より重要です。不安に思うことがあれば、どうぞ遠慮なさらずに施設側へその旨をお話しください。きっと笑顔で、対応してくれるはずです。
ここでは老人ホームでの認知症対応やケア方法を解説します。認知症になったご家族がいらっしゃる方はぜひ参考にしてください。
1.老人ホームにおける認知症の方の受け入れについて
老人ホームは、介護を受ける方とそのご家族が抱える、不安や負担を軽減するための施設です。
職員は、研修やカンファレンスを通して「どうすれば利用者様とそのご家族が、施設で快適に過ごしていただけるか」について日々考えています。そのため、介護を受ける方のご家族が「迷惑をかけるのではないか」と心配される必要は全くありません。「認知症の方も受け入れています」と明記されている老人ホームならば、暴力行為など、重度の認知症状ではない限り、受け入れを断られてしまうことはまずありません。
一方で、主に高齢者向け住宅やサービス付き高齢者住宅では「認知症の方の入所は要支援まで」など、受け入れについて制限を設けている施設も中にはあります。
受け入れ先を探す際には、「認知症の方の受け入れを行っているか」の他に、「要介護認定のどの段階まで受け入れているか」について確認する必要があります。
「認知症専門フロア」では、より専門的なケアが受けられる
認知症の方を受け入れている施設の中でも、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保険施設(老健)、一部の有料老人ホームなど、比較的介護度の重い方も受け入れている施設では、「認知症専門フロア」を設けているところもあります。
認知症ではない方とは別にフロアを整備することで、「徘徊などがある方も見守りがしやすい構造」や、「お部屋の中にいても、プライベートを守りつつ、随時職員が見守れる」など、通常のフロアに比べて、より認知症に対して専門的なケアを提供することができます。施設を検討するにあたっては、専門フロアがあるかどうかについてもぜひ確認してみてください。
2.老人ホームでの認知症の方への対応
認知症を発症すると、集団生活を送る上での様々なルールを守ることが、難しくなります。そんな中、老人ホームでは認知症の方に対し、どのような対応をとっているのでしょうか?
特にトラブルが起きやすい事案への対策について、いくつかご紹介しましょう。
帰宅願望には、傾聴と繰り返しのご説明で対応する
認知症をお持ちの方の多くは、入居後しばらくは新しい環境に慣れることができず、自宅へ帰ろうとする「帰宅願望」が強くなります。そういった方に対し、職員はまず「帰りたい」という入居者様の思いを受け止め、お話を傾聴します。
また、玄関に鍵がかかっていること、今この施設を出てしまうとご家族が心配してしまうことを繰り返しご説明し、「今日は帰れない」ということをご納得いただけるように対応します。
食堂やロビーでは職員が常駐し、トラブルや事故を回避
老人ホームでは集団生活となるため、食堂やロビーは社交場の役割も果たします。認知症をお持ちの方の場合、入居者同士で思わぬトラブルになってしまう可能性もあります。そのため、共有スペースでは職員が必ず一人以上常駐し、入居者同士のトラブルが起こらないように、随時見守りを行っています。
食事の際は、1テーブルにつき1人以上の職員が見守りを行う
認知症の進行状況によっては、食欲が旺盛になり、他の入居者の食事を盗ってしまうことがあります。また、認知症がさらに進行すると、食事を一人でとることが難しくなり、介助が必要となります。
そのため、食事の際は1テーブルにつき必ず1人以上の職員が見守りを行い、トラブルを防止するとともに、必要時、食事の介助を行います。
3.老人ホームでの認知症ケアとは
老人ホームは、入居者にとって生活の場です。より快適に過ごしていただくために、そして少しでも認知症の悪化を防ぐために、老人ホームでは様々な認知症ケアを行っています。中でも、特に多くの施設で行われている認知症ケアについて、ご紹介していきます。
季節ごとのイベントを行う
老人ホームの多くは、季節ごとに様々なイベントを行っています。春はお花見、夏はお祭り、秋は紅葉狩り、冬は餅つき…といった内容です。これらは、レクリエーションという意味合いの他に、「季節を肌で感じてもらうことで、日時などの感覚に刺激を与える」という意味もあります。楽しいイベントも、実は認知症ケアの一環、というわけです。
>認知症の方も楽しめるレクリエーションとその効果認知症の入所者同士の交流
認知症を発症すると、引きこもりがちとなってしまいます。老人ホームでは、入居者同士の交流を行うことで、お互いが良い話し相手となります。認知症の方の場合、多くが毎日ほぼ同じことをお話しし、同じところで驚かれるといった光景が多くみられます。
交流時は職員が見守りを行い、トラブルが起こらないように注意しながら、認知症の方同士の交流を通じて、ケアを行います。
まとめ.認知症の介護こそ、老人ホームをおススメします
認知症は、一度発症されると治ることは難しく、徐々に進行していきます。
発症されたご本人はもちろんのこと、ご家族にとってみても、徐々に進行されていく姿を見るのは辛く、また介護することは体力的にはもちろんのこと、精神的にも大変なものです。
老人ホームでは、介護に適した環境の元、認知症についての知識を持った職員が、ご家族に代わり、一人ひとりの症状に応じた介護を提供しています。そのため、迷惑だと思う必要は全くありません。
介護は、何より信頼関係が大切です。不安や心配なことがありましたら、ぜひ施設側へそのお気持ちを伝えてください。介護についてプロのスタッフが、ご家族のお気持ちに寄り添って対応してくれます。