- 質問
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親が末期がんを患っていて、看取りに対応できる施設の入居を検討しています。最近、ホスピス住宅という施設が増えていると聞きました。一般的な有料老人ホームとはどう違うのでしょうか?
- 回答
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ホスピス住宅とは、自宅にいるようなアットホームな雰囲気の中で専門的な緩和ケアを受けることができる、病院と自宅の中間に位置するような施設です。
ご本人やご家族にとって、お看取りまでの期間はとても貴重な時間となります。病院のような安心感を得ながらご家族との大切な時間を過ごせる場所として、ホスピス住宅の活用もぜひ検討してみてください。
ホスピス住宅は終末期を安心して過ごせる療養の場
ホスピス住宅では専門的な緩和ケアを提供するため、看護師が24時間常駐しています。鎮痛剤・医療用麻薬の使用や、インスリン注射や在宅人工呼吸器の管理などを行うことができ、病院にいるような安心感を得ることができます。
また、病院と比べて自由度が高いという特徴があります。家族が宿泊できる施設があり、積極的にケアに参加することができます。受け入れ可能な病気も幅広く、がんやエイズだけでなく、難病、心不全、腎不全などにも対応しています。
ホスピス住宅は安心感を得ながら家族との時間を大切にできる、病院と自宅の中間のような施設です。
ホスピス住宅と有料老人ホーム、受けられるケアの違い
ご質問にあったホスピス住宅と有料老人ホームの違いについて、最も異なるのは医療的サポートの手厚さです。
有料老人ホームに入居する人は主に、すでに介護が必要な方や、これから介護が必要になるであろうという人です。そのため提供されるケアは主に、食事介助や入浴介助などの身体介護や、掃除や洗濯などの日常生活援助です。近年は医療ケアに対応した有料老人ホームも増えてきました。しかし、看護師が24時間常駐していないなどの理由から、緩和ケアを必要とする方の入居先は限定されます。
一方、ホスピス住宅で提供されるケアは主に緩和ケアです。そのため、看護師が24時間常駐しており、インスリン注射や在宅人工呼吸器、中心静脈栄養などの医療ケアを受け入れることができます。有料老人ホームに比べて、手厚い医療的なサポートを受けることが可能です。
日々の過ごし方も異なる
ホスピス住宅と有料老人ホームでは、入居者の日々の過ごし方も異なります。有料老人ホームでは、集団生活を送る中で充実した日々を過ごせるような工夫が施されています。そのため、イベントやレクリエーションが充実しているのが特徴です。
ホスピス住宅でもイベントやレクリエーションを行うことはありますが、それらへの参加よりも一人ひとりのペースに合わせた時間の使い方を大切にしています。
なぜなら、ホスピス住宅は緩和ケアを提供する施設であり、必要な緩和ケアはその人の病気の状態や行う医療ケアによって異なってくるからです。必要なケアが多いほど時間もかかるため、その人にあった生活のペースを重視しています。
入居条件の違い
有料老人ホームの入居条件は種類によって異なります。要介護認定を受けていなくても入居できるところや、65歳以上であれば親子で入居できる施設もあります。ただし、医療ケアが必要な場合には、受け入れできないこともあります。
>老人ホーム、介護施設の入居条件は?おさえたい5つのポイント
ホスピス住宅では入居の条件として要介護認定は不要です。ただし介護保険サービスを利用する場合には必要となります。また、ホスピス住宅は看護師が24時間常駐しているので、病気や医療ケアを理由に入居できないことは基本的にはありません。
しかし、そのホスピス住宅が「サービス付き高齢者向け住宅」として登録されている場合は、原則として60歳以上でなければ利用できないので注意しましょう。
ホスピス住宅の探し方
ホスピス住宅への入居を検討されている場合、病院のがん相談支援センターや地域包括支援センター、医師会の在宅医療介護連携支援室で情報を得ることができます。介護認定を受けている場合はケアマネジャーに相談するのもよいでしょう。
お看取りまでの時間はご本人や家族にとって貴重な時間です。安心して家族と過ごせる場所として、ぜひホスピス住宅も検討してみましょう。
【この記事の監修者】
ファミリー・ホスピス株式会社
ホスピス・ソーシャルワーカー
小川 清久
イラスト:坂田 優子