- 質問
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認知症の母の介護認定通知が届きましたが、認定結果に不服です。
調査で母は、いつもよりしっかりとした言動をし、想定よりも介護度が軽く認定されてしまいました。
やり直しは可能ですか?実態に合った判定をしてもらうにはどうしたらよいのでしょうか?
- 回答
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介護認定のやり直しは可能です。実態に合った判定をしてもらうには、普段のありのままを伝えることが最も大切です。実情をよく知る人が必ず同席するようにしましょう。
ここでは、介護度が想定より低くなってしまう原因と、介護認定の判定に不服があるときにどうすればよいかを解説します。
このページをよく読み、なるべく納得のいく介護認定を受けるために役立ててください。
- 【目次】
要介護認定はどのように判定される?
要介護認定とは、どの程度介護が必要な状態にあるかを決めるものです。
認定は全国一律の基準を用いて行われており、認定調査員による訪問調査と主治医の意見書を基に介護認定審査会での審査を経て決められます。
重要なのは、最初に行われる認定調査員による訪問調査です。この調査は介護を必要とする本人と家族などへの聞き取り形式で行われます。
身体機能、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応、特別な医療といった幅広い分野から全部で74項目の質問がなされ、本人の動作や理解度が確認されます。ときには調査員から「歩いてみてください」とか「足を上げてみてください」などと実際に行動が促されることもあります。
質問の答えは選択肢の中から選ばれますが、調査員はその答えの根拠や聞き取りをしている際に重要と判断した事柄を「特記事項」に記入します。
そして訪問調査の結果をコンピュータに入力して算出されたデータと、「特記事項」、主治医の意見書の3つを基に、保健・医療・福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」が総合的に判断して申請者の介護度を判定しています。
介護認定の判定に不服があるときは?
上記のような調査を経て決められた認定結果であっても、質問者のように納得できない場合が出てきます。そのときは、市区町村の介護保険課認定審査係に行って認定結果の理由の確認と相談をしてみましょう。
説明を受けても納得できない場合、都道府県に設置されている「介護保険審査会」への「審査請求」をすすめられるでしょう。
これは下された要介護認定を取り消してもらうための申し立てですが、取り消しの判定が出るまでに数カ月かかりますし、取り消されたとしても、結局、また最初から介護申請をすることになります。
早く介護サービスを使いたい人にはあまり現実的な方法とは言えないでしょう。
そこで、要介護認定の「区分変更の申請」ができることを相談の場で教えてくれる市区町村もあるようです。もし窓口で教えられなくても、不服がある場合はこちらを活用するのが現実的でしょう。
再調査を依頼してみる
「区分変更の申請」は、認定調査を再度行い、再度介護認定審査会で判定をしてもらうもので、本来は認定の有効期間中に本人の状態などに変化があった際に行うものですが、認定結果を不服とする利用者にも用いられています。
「区分変更の申請」を行いたいときは、ケアマネジャーもしくは地域包括支援センターに相談してください。
なぜ起きる?家族の認識と判定結果の食い違い
そもそも家族の予想よりも低い介護度の判定が出てしまうのはなぜでしょう?
その原因の多くは、本人の症状と必要な介護の手間、家族の介護力や生活環境などの情報が正確に調査員に伝わらなかったためです。
認定調査の所要時間は通常30分~1時間程度です。その短い間にたくさんある質問項目のうち、本人に深くかかわる項目について実態が伝わらないと、正確な結果につながりません。
特に認知症の人の場合は、認知症の種類や症状によっては調査員が短時間で実態を見極められないことがあります。また、「主治医の意見書」に必要な認知症の情報が正しく記載されていなかった場合も、正確な判定結果につながらないことがあります。
要介護認定の判定が厳しくなっている背景も
ただし、認定調査がきちんと行われていても、最近では家族の予想よりも低い介護度になるケースが多くあると言われています。
その要因として、増え続ける高齢者に対して介護保険の費用を抑制するため、市区町村における判定基準自体が厳しくなっていることが挙げられます。
国は要介護の重度化防止につながる取り組みを一層推進しようと「身体機能の回復実績など、効果のある『自立支援を促す取り組み』を高く評価する」という策を打ち出しています。
例えば、要介護者がリハビリなどの自立支援で成果を上げて介護度が下がったら、国はその市区町村を評価し、介護サービス事業者に報酬を支払うという改正案が進められているのです。
要介護の重度化を防いだり、改善を目指したりする自立支援は好ましいことですが、そのために市区町村における介護認定の判定がより厳しくなるのではないかと懸念もされています。
認定調査員に正確に普段の様子を伝えるためには?
実態に合った介護認定を出してもらうには、認定調査できちんと実情が伝わることと、主治医の意見書にきちんと実情が書かれていることが大切です。そこで、家族ができることを解説します。
認定調査の際に、高齢者は緊張してよく見せようとするため、普段できないことでも「できる」と答えたり、普段できない動作をがんばり、結果としてできてしまったりすることが往々にしてあります。
認定調査は、調査時の状況よりも普段の状況を確認して評価するものです。普段のありのままを伝えることが最も大事ですので、家族や普段の本人の実情をよく知る人が必ず同席するようにしましょう。
普段の様子を的確に伝えるための準備
限られた時間内で実情を的確に伝えるには、全国一律の基本調査項目をあらかじめチェックして答えを検討しておくとよいでしょう。
例えば、本人がひとりでできることも以前より時間がかかっているとか、ひとりでトイレには行けるが手すりがないと立ち上がれないなどのように、具体的に答えることが大事です。そのためには、答えの根拠となる原因や介助方法をあらかじめメモにしておくとよいでしょう。
メモには以下の項目も整理しておきましょう。
・現在の病状と通院の有無、
・既往歴、
・必要な介助の状態、
・認知症の症状による行動、日によって変動があればその