- 質問
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母の老人ホームを探しています。今度体験入居を申し込む予定ですが、母は認知症なので、施設の良し悪しの判断ができるか心配です。娘の私も一緒に体験することは可能でしょうか?
体験入居中の母をどのように支えたらよいのか教えてください。
- 回答
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残念ながら体験入居は入居者ご本人しか利用できません。ご家族ができることとして、体験入居前に入居するご本人の情報(性格、食事の好み、趣味など)や要望を施設側へ伝えたり、不安な気持ちに寄り添うといった点で支えてあげてください。
このページでは、体験入居における確認事項、家族の役割について解説します。体験入居を有意義なものにするためぜひ参考にしていただきたいと思います。
体験入居は入居者本人しか利用できない
体験入居は原則として本人のみしか利用できません。施設側の理由として、居室の広さが十分でなく、家族が一緒に泊まることで介護サービスの提供に支障が出たり、他の入居者に「家族も一緒に入居できる」という誤解を与え、クレームに繋がる可能性が考えられるからです。
また、体験入居の意義は、文字通りホームでの生活を体験し、サービスの質を見極め、他の入居者との共同生活が可能かどうかの最終判断を行うことにあります。家族が一緒という状況は施設での入居生活を体験することにはならず、誤った判断に繋がりかねません。
夜間の状況が心配だという場合も、施設から連絡がない限り、様子を見に行くのは慎みましょう。体験入居中は、家とは違う状況に慣れてもらい、本人とスタッフとの信頼関係を築くための期間でもあります。
不安な気持ちを抑えて見守ることも大切です。本人の様子を見に行く場合は、決められた面会時間内にしましょう。本入居後の生活のペースを試すことが優先事項です。
また、ホームは入居者の方にとって「自宅」であり、体験入居は家に泊まらせてもらっていることと同じです。体験入居中の家族を訪ねる場合は、ほかの入居者に対するルールやマナーを守ることが大切です。
体験入居で確認したいポイント
体験入居では、本人が快適に暮らせていけるかを判断することが重要です。下記について、本人に確認しましょう。
体験入居中の本人への確認事項
<スタッフ>
・スタッフの対応や言葉遣いなどで、不快な思いをしていないか
・ナースコールを押したとき、すぐに対応してくれているか
<入居者>
・既に入居されている方とうまくやれそうか
・お友達になれそうな方はいるか
<食事内容>
・味付けは好みに合うか
・嫌いな食材などに対応してくれているか
・食事形態や医療食対応は適切か
<サービス>
・希望するケアを実施しているか
・リハビリに応じてくれているか
<環境・衛生面>
・生活音、温度調節、臭いなど、快適な環境か
・清掃は行き届いているか
<雰囲気・居心地>
・活気がなく寂しい思いをしてないか
・活気がありすぎて取り残された感じを受けていないか
体験入居をした本人から不満や心配ごとが出てきた場合は、遠慮せずにその内容をスタッフや相談員に伝えましょう。もしも、本人とスタッフの言うことが食い違う場合は、正確な状況を確認する必要があります。少し滞在時間を長くしてスタッフの様子を見たり、リハビリに対する不満があればその様子を見学させてもらえないかお願いしてみましょう。
本人が正しく伝えられない場合は、本人を観察したうえで家族が判断
入居者本人が重度の認知症であったり意思疎通が困難な状態で、本人が正しく伝えられない場合は、本人の様子を注意深く観察しましょう。不満や不快感などは、表情や不穏な行動などでサインを出しているものです。その場合は、本人に代わって家族が原因を見極める必要があります。訪問頻度を増やして、ホームの対応や環境を確認しましょう。
ホームへ要望したいことがあればきちんと伝えましょう。それに対してホームがどう対応するかは、本入居を決めるかの大きな判断材料になるでしょう。ただし、正確に判断するにはコミュニケーションのキャッチボールが必要です。「できないことを安易にできると言ってないか」などを見極めることも大切です。
>体験入居までの流れとチェックすべきポイント
体験入居中の家族の役割
体験入居の目的は、本人に適しているホームかどうかを見極めることにあります。体験入居中の家族の役割は、その判断材料を揃えるために環境を整えることだと言えます。
家族は次のことについて心がけておきましょう。
本人に関する情報や要望を施設側に伝える
身体状況や認知症の状況、あるいは生い立ちや趣味など、本人に関する情報を体験入居前に伝えます。それに対し、ホーム側は適切な対応をしているかを判断することが必要です。
慣れない環境にいる本人に対して、不安を取り除いてあげる
体験入居中は家族も何回か訪問をして、本人を安心させてあげましょう。それによってスタッフとの信頼関係がスムースに築けるようになります。
ただし、認知症の症状が進んでいる方などでは、家族が顔を見せることで「家に帰りたい」という帰宅願望が強く出てしまうことがあります。その場合はホーム側と話し合い、「スタッフとの信頼関係が築けるまでは顔を見せずに、ホーム側から報告を受けるだけにする」という方法も有効です。
サービス等に疑問があれば、スタッフに確認し解消しておく
ホーム側と積極的にコミュニケーションを取り、こちらの要望にすぐに対応してくれているかを確認します。本人がより快適に生活できるように動いてくれているか。または、対応できない場合に根拠のある理由を示してくれるかなど、受け答えの内容や姿勢を見て、信頼して任せられるかをしっかり判断しましょう。
まとめ
ホームへの入居は、「介護の部分はプロに任せる」という選択だと言えます。だからこそ家族の介護負担が軽減できるというメリットがあるのですが、そこに負い目を感じる方も少なくありません。本人が望まない入居であれば、なおさらでしょう。
そう考えると、体験入居は、本人と家族が「介護の部分はプロに任せる」ことに慣れていく過程であるとも言えます。家族は、まずはホームのスタッフを信頼して任せてみることから始めましょう。それを自覚することで、家族が果たすべき役割が自ずと見えてくると思います。