質問

80歳で一人暮らしの父ですが、過去に脱水症状で入院したことがあります。幸い大事には至りませんでしたが、その後も水分補給を促してもなかなか聞いてくれません。夏だけでなく冬場も脱水があると聞き、季節問わずに心配です。改善する方法はありますか?
介護認定の申請はしたのですが「自立」と判断され、介護サービスは何も使っていません。

回答
德田 泰子

高齢になると喉の渇きに対する感覚が弱くなる傾向があります。特に冬場は、汗をかくことがほとんどなく、喉の渇きを感じにくいため、自分から進んで飲み物を口にする機会も減ってしまいます。
また、お父様が水分補給に積極的でないことについては、「トイレが近くなるのが嫌だ」などの別の理由が隠れているかもしれません。一度、理由を尋ね、その上で水分を口にしやすいような工夫を考えてみましょう。
このページでは水分補給の役割や高齢者の脱水予防について解説します。 德田 泰子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ所属)

【目次】
  1. 水分補給の役割
  2. 水分不足になることのリスク 
  3. 水分不足の原因と対策
  4. 脱水を防ぐため注意したい3つのポイント
  5. まとめ

水分補給の役割

水分は喉を潤す、脱水を防ぐというだけでなく、からだを守るために必要な様々な働き休むことなく続けるために不可欠です。主な役割をご紹介します。


■血液を循環させる

からだの中を巡る血液は、食べ物からとり入れた栄養素酸素をからだの隅々まで運ぶ役割があります。血液成分のうち90~95%は水分でできています。

■体温の調節機能

汗は皮膚の表面から水分を蒸発させ、同時に熱を放つことで体温が上がり過ぎないよう汗をかいて体温の調節を行っています。もちろん冬場は、暑さによる流れる汗などはありませんが、夏と同様に皮膚の表面で水分が蒸発しています。

■老廃物をからだの外へ出す

からだの中で作られた老廃物を集めて血液で運び尿として排泄します。しかし、水分摂取が不足するとからだの水分量を保つため尿を減らしてしまうため老廃物がたまりやすくなります。



水分不足になることのリスク 

私たちのからだは水分を取り入れ、汗や尿によりからだの外へ出すことで補給と排泄を繰り返しながらからだの中の水分調整を行っています。水分補給をしないでいると体温排泄調整機能がうまく働かなくなり脱水状態の危険性が高まります。「脱水」とは、からだの中の水分とミネラル等の成分を含む体液が不足している状態をいいます。脱水になると次のような健康上のリスクが考えられます。


■筋力低下

水分を蓄える筋肉量が減ることで、転倒による骨折寝たきりへの危険性が高まります。

■熱中症

高温・多湿の環境で脱水となり体温が上昇します。これにより汗とともに体内の水分が失われます。

■脳梗塞・心筋梗塞

脱水により血液濃度が増し血管が詰まりやすくなります。その他、糖尿病や高血圧などの悪化につながることも考えられます。


このように高齢者の場合、体内の水分量が減りやすい、腎臓など内臓の働きが低下している、また利尿剤などの薬を服用していることも考えられるため、水分補給への注意を怠ってはいけないのです。


水分不足の原因と対策


■一日に必要な水分量が分からないとき

高齢の親に対し「水分補給に気を付けてね」と言っても、一日にどれぐらい必要か分からない方も多いと思います。高齢者一日の水分摂取量は、薬を飲むときの水、お茶などの飲み物なども含めて1500ml目安ということを伝えましょう。

■水分量を計るのが面倒なとき

毎回の水分補給ごとに水を量るのは面倒です。一日に必要な目安を把握するため、水を入れた500mlペットボトルを数本用意し、順次飲み干していくとわかりやすいでしょう。また、ポットに水を入れて目安にするのもよいでしょう。

■水分補給のタイミングがわからないとき

加齢とともに、喉が渇く感覚が弱くなるため、いつ水分補給をすればよいかを伝えましょう。
高齢者の水分補給のタイミングは、①朝起きた時、②朝食、③昼食、④夕食、⑤入浴後、⑥寝る前がおすすめです。
コップ1杯を150mlとした場合、上記の①~⑥で900mlの水分補給が可能です。紙に書いて目に付くところへ貼っておくなどし、水分補給が習慣化できるよう促しましょう。

■食事でも水分補給を意識してもらう

食事中にみそ汁スープを飲むことも水分補給の一つです。ただし、高齢者にとって食事の準備はひと苦労です。そのときは、お湯を注ぐだけで簡単に作れるみそ汁やスープを常備しておくとよいでしょう。冬場は水分補給だけでなく、素早くからだを温める効果もあります。ただし、塩分のとり過ぎにはご注意ください。

脱水を防ぐため注意したい3つのポイント

水分補給が苦手な方の中には、「水ばかりをたくさん飲めない」という方もおられます。特に、お茶やコーヒー、アルコールやジュースなどの嗜好飲料を飲む場合は、以下のことにご注意ください。

1.カフェインの多いお茶やコーヒーは要注意

コーヒーや紅茶、濃い緑茶などには覚醒作用・利尿作用のあるカフェインを多く含みます。中にはそれぞれによい成分も含まれますが、水分補給のためにこればかりを積極的に飲むことはおすすめできません。適量を楽しみましょう。お茶を選ぶときはカフェインの少ない「ほうじ茶」「煎茶」「玄米茶」などがおすすめです。


2.アルコールは水分補給にならない

ビールや日本酒などのアルコール類は、利尿作用が強く水分がからだに残りにくいため、水分補給としての役割には適しません。嗜好品として適量を楽しみましょう。


3.甘いジュースの飲みすぎは病気を招くことも

果物のジュースや糖分を多く含んだ炭酸飲料などは、確かに水分ではあるものの、糖度が高く血糖値の上昇に影響します。飲み過ぎると、俗にいう「ドロドロ血」状になる恐れがあります。これは、脳梗塞や動脈硬化といった病気を引き起こす可能性も考えられるため、甘いジュースは水分補給としての役割には適しません。


まとめ

高齢者の水分補給は、つい「喉の渇きが起きてから」、「渇きがなければ飲まなくても大丈夫」と思いがちです。しかし「喉が渇いてから」では、からだのSOSに間に合わないかもしれません。命を守るうえで水分補給が食事と同じくらいに大切であることを高齢者に促しつつ、言葉だけでなく手軽にとれる工夫をともに考え、習慣的に水分を飲めるような生活のリズムを整えてあげましょう。

このQ&Aに回答した人

德田 泰子
德田 泰子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ所属)

株式会社ヘルシーオフィスフー/代表取締役
(公社)全日本司厨士協会大阪府本部女性部/副部長
栄養コンサルティング
管理栄養士・調理師
「食事を介護施設の付加価値に」口から食べるための介護食を支援。