- 質問
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義理の母がサービス付き高齢者向け住宅への入居を考えています。しかし以前「サービス付き高齢者住宅は事故が多い」という報道があったので不安を感じています。
実態はどうなっているのでしょうか?教えてください。
- 回答
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サービス付き高齢者向け住宅とは安否確認と相談体制のある「見守り機能がついた住宅」という位置づけです。義理のお母さまがどのような身体状態なのか、安全体制をどこまで求めるのかでも、施設の選び方が違ってくるでしょう。
ここでは、サービス付き高齢者向け住宅での事故の実態と問題点、安全体制を見極めるポイントなどを解説します。正しく理解し、安心・安全で、ご本人に合うホーム選びにお役立てください。
サービス付き高齢者向け住宅における事故の実態
2017年の朝日新聞の調査で、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)で、2015年1月から約1年半の間に、死亡や骨折など3000件以上の事故が報告されていることがわかりました。
全国のサ高住を監督する都道府県と政令指定都市、中核市の計114自治体のうち97自治体の事故報告書によると、15年1月~16年8月末の事故は計3362件で、骨折(1337件)が1番多かったという結果です。
事故の半数以上の1730件が個室で、そのうち991件は午後5時~翌午前9時と職員体制が手薄と思われる時間帯に起きていることがわかっています。
入居者の介護度と、サ高住の運営体制のミスマッチが問題か
もともとサ高住とは、自立しているけれど生活に不安のある独居や2人暮らしの高齢者が安心して暮らせるように、「1日1回の安否確認」と「生活相談サービス」が義務付けられている住宅です。
介護が必要な時は外部で提供されている訪問介護サービスを利用するしくみなので、介護スタッフは常駐していません。また、建物の人員体制も、相談員として有資格者が1人以上いればよく、夜間は緊急通報システムがあれば職員は常駐しなくてもよいことになっています。一般的な賃貸住宅と比べ、「見守り機能がついた住宅」という位置づけです。
しかし、最近は、要介護者や認知症高齢者を受け入れるサ高住が増えているのが実態です。サ高住は初期費用が少なくて済むところが多く、入居者のニーズが高いことと、サ高住側も少しでも空室を埋めたいというニーズの合致が起こしている状況と言えます。また、開設時にはほとんどの入居者がお元気な状態であったとしても、数年経てば介護を必要とする方が増え、事故のリスクが高くなることは想像に難くありません。
実際に、上記の調査による運営報告書では、入居者の88%が要介護認定(要支援を含む)を受け、要介護3以上の方は30%という結果が出ており、民間機関の調査では、入居者の4割が認知症というデータもあると報道されています。(2017年5月 朝日新聞)
そうした状況で、1日1回の安否確認と生活相談サービス、しかも相談員が1人という体制で、入居者の安全が守れる訳がありません。それにも関わらず、安否確認と相談体制さえ整えれば開設・運営ができるという条件のハードルの低さに問題があると言えるでしょう。
上記の調査結果を踏まえ、国土交通省は改善に乗り出すことを決めています。現在はまだ具体的な報告はありませんが、早急な対策が求められます。
サ高住の安全体制を見極めるポイント
サ高住に入居を検討する際には、そもそも介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム(特養)などの終身にわたり面倒を看てもらえる施設とは違うということを認識し、安全体制を見極めることが大切です。
入居を考えているサ高住が、要介護状態になった場合や認知症を発症した場合にどこまでの対応が可能なのかを確認しましょう。
それにより、どのタイミングで住み替えが必要なのかを判断しておくことが、事故を未然に防ぐ第一歩です。また、見守り体制が充実しているところは、費用も高くなることも認識しておきましょう。
●安全体制を見極めるポイント
―資料や見学の際に確認しておきたい点―
<ハード面(設備)>
・緊急通報システムの具体的な内容
緊急ボタンの設置箇所は、事故が起こりやすい場所を想定しているか
相談員不在時の通報先、誰が駆けつけるか
・センサーの設置箇所
生活動線に配慮しているか、など
<ソフト面(人員体制)>
・相談員の資格・経験の内容
スタッフの緊急対応経験の有無
日中の人員体制:世帯に対する相談員の割合は、概ね15~20世帯につき1人以上、要介護者・認知症高齢者が10人ごとにプラス1人以上が望ましい。
・夜間の人員体制
夜間配置の有無
夜間配置がない場合の緊急時体制はどうなっているか
・緊急時対応のスタッフ教育
研修などの有無、など
要介護や認知症の方の場合は?
すでに要介護状態である方や認知症の症状が出ている方は、介護型のサ高住(介護付き有料老人ホームと同じ設備・人員体制を取っているサ高住)以外は選択肢から外し、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの要介護者を対象にした施設を検討することも必要でしょう。
どうしてもサ高住を選びたい場合は、ケアマネジャーと相談し、安否確認や見守りを強化する介護保険外のサービスを充実させるなどの対策を講じましょう。
まとめ
自立した方を対象にしたサ高住であろうと、入居者が高齢者である限り、年数が経てば身体状況の悪化という変化が出てくるのは自然の摂理です。
その場合に、サ高住の運営者側はどのように対応するのか。一定の介護度になったら退去を勧めるのか、あるいはサ高住側の体制を充実させるのかという選択に迫られることになります。そこまでの予測ができずに、行き当たりばったりで運営しているところが多いのも問題と言えます。
サ高住を検討する際は、身体状況の変化に対する考え方や、事故を防ぐための取り組みなども聞いてみましょう。しっかり将来を見据えて運営しているかが確認できます。