【親の介護はどこで】遠距離・近居・同居のメリット・デメリット

離れて暮らす親に介護が必要となったとき、どのような住まい方で介護をするべきでしょうか。選択肢としては主に「遠距離」「近居」「同居」の3種類があります。

それぞれの違いについて解説しますので、生活の様子をイメージしながら、介護する上での参考にしてください。

親の介護│3つの住まい方

1.遠距離介護

遠く離れたところに住んでいる親を介護することを言います。例えば、親が秋田県で子供が東京都に住んでおり、毎週末に東京から秋田へ親の介護や生活支援をしにいくような形です。

遠距離介護を続けていても、一定期間で限界を感じて、後述する「近居」や「同居」を検討する方もいらっしゃいます。

2.近居介護

一緒に住むのではなく、親の近くに住んで介護をすることを言います。例えば、遠距離で住んでいた親の近所に子供が引っ越したり、子供の住んでいる近くへ親を呼び寄せるということです。

同居が必要なほど重い介護状態ではなく、ある程度自立している親であれば可能な介護の在り方といえます。

3.同居介護

同居介護とは、文字通り同じ住居に、親と子供が住んで介護をすることを言います。例えば、遠方に住む一人暮らしの親に常時介護が必要となり、子供が一緒に住んで介護をするといった状況が考えられます。

親を子供の自宅に呼び寄せて暮らす。子供が親の自宅へ住み替えるというケースもあります。

近距離・近居・同居│それぞれのメリット・デメリット

前述の通り3つの住まい方には大きな違いがあります。どれを選ぶのかは、メリットとデメリットを理解した上で決めていきましょう。

1.遠距離介護

メリット

  • お互いの生活環境を変えなくてよい。親も住み慣れた地域で生活できるという安心感がある
  • 介護保険サービスで親の介護を行ってもらうため、子供の介護疲弊が少ない
  • 介護疲弊が少ないため、精神的に余裕がある状態で、親の介護に参加できる
  • 親が1人暮らしでないと受けられない行政のサービスや介護サービスが利用できる
  • 親が1人暮らしの場合、特別養護老人ホームの入居の優先度が高くなる

デメリット

  • 何かあったときに、すぐに駆け付けられない
  • 遠距離のため日々の様子を把握しづらい
  • 親が入院した場合や体調が悪い時は、泊まり込みでの介護が必要な場合も。仕事や家事に影響が出る
  • 往復の交通費や電話代といった費用負担が生じる
  • 親が住む地域の介護サービス事業所の評判といった情報が入りづらい
  • 日ごろ支援してくれているケアマネジャーと会う機会が限られる

2.近居介護

メリット

  • 嫁姑の関係性によるストレスなどが、同居介護に比べて少なくなる
  • お互いの生活スタイルが保たれた状況で、介護が行える
  • 遠距離介護に比べて、親の状況を把握しやすい
  • 親が近くに住んでいるため、安心感がある
  • 親が1人暮らしでないと受けられない行政サービスや介護サービスが利用できる
  • 親が1人暮らしの場合、特別養護老人ホームの入居の優先度が高くなる
  • 地域の介護サービスの評判が耳に入りやすい。ケアマネジャーに会って相談しやすい

デメリット

  • 親を子供の自宅近くへ呼び寄せる場合、親に環境の変化というストレスがかかる
  • 引っ越した地域での生活に慣れるまで、時間がかかる
  • 引っ越す前の友人・知人と会う機会が減る。人間関係が変化するためストレスがかかる

同居介護

メリット

  • 親の急変時などの体調変化に気づきやすい
  • 孫と祖父母が交流できるなど、家族交流の機会が増える
  • 別居に比べて家賃を抑えられる
  • 親の介護状況にもよるが、孫の相手や家事の一部を任せられる
  • 地域の介護サービスの評判が耳に入りやすい。ケアマネジャーに会って相談しやすい

デメリット

  • 親を子供の自宅へ呼び寄せる場合、親に環境の変化というストレスがかかる
  • 引っ越した地域での生活になれるまで、時間がかかる
  • 引っ越す前の友人・知人と会う機会が減り、人間関係が変化するためストレスがかかる
  • 場合によっては、嫁姑問題などのストレスが生じることがある
  • 生活スタイルが違った場合、互いにストレスがかかる
  • 介護できる人が同居していると、利用できない行政サービスや介護サービスがある。
  • 特別養護老人ホームの入居の優先度が、1人暮らしに比べると低くなる

タイプ別に診断。上手くいく介護の形は?

介護を前提とした3つの住まい方には、それぞれメリット・デメリットがありました。それでは、具体的にどういう状況で、どのような住まい方を選択すればよいのでしょうか。

オススメの介護の在り方を一覧にしてみました。

※個別の家庭事情・身体状態により異なります。あくまでも目安としてご覧ください

要介護度別にみる住まい方

◎=適当 ○=やや適当 △=デメリットを理解していれば適当 ×=継続困難の場合も

親の身体状況 

子の就業状況

介護対応の可否 

遠距離  近居   同居  
(要支援1・2)
身の回りのことは自分でできる
 

仕事:あり

介護:休日のみ可

仕事:あり

介護:平日・休日ともに不可

×

仕事:なし

介護:可能

(要介護1)
杖を用いて歩けるが転倒の可能性も。

身の回りのことは自分で7割程度できる。

仕事:あり

介護:休日のみ可

仕事:あり

介護:平日・休日ともに不可

×

仕事:なし

介護:可能

(要介護2)
トイレや入浴時に介助が必要。

着替えなどはできるが、家事は困難。

仕事:あり

介護:休日のみ可

仕事:あり

介護:平日・休日ともに不可

×

仕事:なし

介護:可能

×

(要介護3)
トイレや入浴、着替えなど全介助。

主に車いすで移動。

仕事:あり

介護:休日のみ可

仕事:あり

介護:平日・休日ともに不可

×
※施設入所も検討しましょう

仕事:なし

介護:可能

×

(要介護4・5)
ほぼベッド上での生活。

身の回りのことは全介助。

仕事:あり

介護:休日のみ可

×

※施設入所も検討しましょう

仕事:あり

介護:平日・休日ともに不可

× × ×
※施設入所も検討しましょう

仕事:なし

介護:可能

ご本人の自立度が高く、、身の回りのこともある程度できるようであれば、遠距離介護も可能と言えます。

しかし、要介護3以上になると常時見守りが必要な方も多くなり、同居による家族介護や老人ホームへの入居を検討することも現実的です。

他方で、要介護度が軽くても認知症の症状により見守りを必要とする方もいるため、介護度だけで一概に区分けできないのが現状です。

どの住まい方が最も負担軽減できるのか、ケアマネジャーなどに相談してみましょう。

「すぐに同居」ではなく段階を踏んで住まい方を変える

ここまで親の介護方法、3つの住まい方について解説しました。どれがベストな選択なのかは家庭環境によるので一概には言えません。

一番大事なのは、3つの住まい方のメリット・デメリットをきちんと理解した上で、決断することです。

近居で過度なストレスを回避

また、離れて暮らしていて、もしも同居を考えるのであれば、段階を踏みまずは近居から始めてみることも良いでしょう。

別々に暮らすことで家賃や水道光熱費などの費用負担がかかりますが、生活リズムや家族との人間関係に問題がないようであれば、同居介護に切り替えることもできます。

最初から同居介護の場合、生活リズムの違いからお互いに過度なストレスがかってしまうことも。それにより、「同居しなければよかった」と後悔が生じたり、早期に老人ホームなどのへ住み替えを検討するということもあり得ます。

寝たきりなど重い介護状態になってから同居をするということは、介護に慣れていない家族も負担が大きいものです。要支援や要介護1といった、ある程度お元気なうちから、同居について考えてみるのもひとつではないでしょうか。

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この記事の制作者

森 裕司

著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。

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