横浜市青葉区のサービス付き高齢者向け住宅「わかたけの杜」は、日本版CCRC(高齢者が終身まで暮らせる共同体)の先駆けとして建設されました。同じ敷地内に介護老人保健施設やクリニックが併設され、高齢者が健康なうちに入居し、最期まで暮らし続けることが可能な環境が整っています。

今回お話を伺ったのは、「わかたけの杜」の戸建てタイプの住居にお住まいの下平さんご夫婦。お二人とも落ち着いた雰囲気ながら、やはりご夫婦の掛け合いになると、丁々発止でユニーク。実は、お二人は横浜に地縁がないまま、名古屋から 「わかたけの杜」に引っ越してきました。なぜそんな思い切ったことができたのか。衝撃的な理由がここで明かされます。

ちょっと強引な移住も息子さんたちの愛の賜物

――こちらのサービス付き高齢者向け住宅で過ごすことになったきっかけを教えてください。

重人さん:もともとは長野の出身なのですが、仕事で名古屋へ転勤したのを機に、名古屋に40数年住んでおりました。息子が二人おりまして、二人とも町田とこの近くの長津田に住んでいましてね。ちょくちょく名古屋にも来てくれたのですが、距離が遠いのもあって心苦しい気持ちがあって……

とはいえ、引っ越しまでは踏み切れないと思っていたら、妻が名古屋で入院することになり、その退院後に思いがけず引っ越すことになったんです。

―― 一体、なぜ引っ越すことになったのでしょう?

重人さん・千代子さん:子どもたちからのサプライズです。

重人さん:息子たちは年寄りに事前に大事なことを知らせると悩んでしまうからって、移住のことについては何も言わなかったんですね。妻が退院する日も、家に一度寄ると里心がつくからと、そのまま直接横浜へ来てくれと言うのですが、そうは言ってもね。40年以上、名古屋に住んできたわけですから。それで無理やり一晩だけ泊まって、こちらに来たんですよ。

もちろん私だけは事前に知っていました。でも、妻には何も言っていなかったものですから、もうビックリしてね。

千代子さん:いやーもう。私、絶対に名古屋に帰ってくるよと友人らに宣言して、家を出てきたんですよ。

――息子さんたちもよっぽど心配だったのでしょうね。

重人さん:息子たちの熱意に負けました。私もそんな無理なことをして大丈夫かなと思ったのですけど、息子たちは転居の話を真剣に話し合うほうがよほど大変だから、考えるよりも先に行動に移したほうが良いと考えていたようです。でもこちらの「わかたけの杜」は1年待ちだったので、それまではこの近くの桂台にあるマンション型の高齢者住宅で待機をして、2016年6月にこちらに来ました。

千代子さん:「わかたけの杜」さんを見つけるのに、インターネットで100件は探したって言っていたわね。

重人さん:そうね、長男の嫁がね。この子がまたよく気がつく子でしてね、積極性もあって、本当によくやってくれました。名古屋からわざわざ横浜に引っ越してもらうからには、それなりに安心して暮らせるところにということで、こちらを見つけてくれたようですよ。


 

ご近所づきあいで始まるレクリエーション

――こちらで新たに興味を持っていることはありますか?

千代子さん:お花を生けたりしていますね。フラワーアレンジメントの教室があるので、ご近所の方とそちらに通っています。

重人さん:家の庭の雑草を抜くだけじゃなくて、また名古屋みたいに、ぼつぼつ盆栽も始められればいいですね。

千代子さん:いやあ、今あなたは囲碁に夢中になっているから、盆栽は無理じゃない? 夫は名古屋で毎週土曜日、囲碁のクラブに入っていましてね。隣にあるリハリゾートわかたけでリハビリをしに行っても、囲碁ばっかりやっていますから。

重人さん:同じことをリハビリの先生にも言われていますよ。朝の体操が終わると毎朝、妻と1時間散歩に出て、一緒に買い物もするんです。でも私は足が弱いもので、妻について歩いていくのが大変で。妻は先の方で立ち止まって後ろを振り返ってくれるんですが、だいたいがとても待っていられないと、置いてきぼりにされるんです。

それをリハビリの先生が車で見ているようで、「いつもお父さん、置いてきぼりじゃない! 碁ばかり打っていちゃダメよ? リハビリ頑張りなさい」とよく叱られています(笑)。

息子たちに自炊で料理を振る舞う、落ち着いた暮らし

――千代子さんは新しいお家のキッチンには慣れましたか?

千代子さん:こちらに越してきた当時はまだキッチンに慣れなかったので、朝食と夕食を「わかたけの杜」さんに頼んでいました。今は自分でご飯を3食とも作っていますね

――どんなお料理を作られるんですか。

千代子さん:煮物など、昔のレパートリーを思い出したりして作っていますね。NHKの『きょうの料理』の本を見たり、テレビを観たりして作ることもあります。この間、「わかたけの杜」さんから裏山で掘ったたけのこをいただいて。あれはおいしかったわ。

重人さん:まあ、おいしいたけのこをいただきましたよね。長野出身だから、山のものが大好きなんです。

――こちらはコンロがIHなので、名古屋のお家とは勝手が違いますよね。

千代子さん:名古屋から持ってきたもので、唯一圧力鍋だけがここのIHで使えるので、使っていますね。ここでも茶碗蒸しなども作っていますよ。IHに合う鍋を少しずつ増やして、新しいレシピにも挑戦していこうと思います。

――千代子さんが3食作られるなら、息子さんたちも食べにいらっしゃるでしょう。

千代子さん:息子の家が、車で4、5分の近さなんです。なので、家族で夕方に食べに来て、夜遅くに帰ったりしていますね。

重人さん:最近、次男のところに孫ができましてね。近くに住んでいますから、孫にもすぐ会えるのはいいですね。


家の行き来ができるご近所づきあい

――こちらに入られて良かったこと、安心したことはありますか。

重人さん:管理人さんが本当によく目配りしてくださるのがありがたいですね。マンション型の高齢者住宅にいたときにお世話になったかかりつけ医に、今もそのままかかっていますが、いざとなったら敷地内にお医者さんがいるので心強いですね。サンメディカルクリニック青葉さんのほかにも、在宅療養支援ステーションや訪問介護もあります。

自分で料理ができないときは給食もお願いできますし。あと、いろんな方とお付き合いしているうちに、ご近所同士で家の行き来ができるようになりましたね。隣のお家も囲碁をやられるんですよ。

――千代子さんもお友達はいかがですか。

千代子さん:こちらのお友達とお花を生けたり、一緒にリハビリをしたりして楽しいです。でも最近、名古屋のお友達が二人ほど横浜に越してきたんですよ。そこの娘さんが、下平の夫婦がいるからいいじゃないって呼び寄せて。お二人とも、この近辺に転居なさって。思い切って移住してきましたけど、それが逆に名古屋のお友達の呼び水になっていますね。

(横山由希路+ノオト)

(記事中の内容や施設に関する情報は2017年7月時点の情報です)