東京都世田谷区祖師ヶ谷にある「ソナーレ祖師ヶ谷大蔵」は、「ご入居者の視点に立った暮らし」をテーマに、生活の質を追求した住環境を提案しています。

2016年4月にオープンしたばかりのピカピカな建物は、ホームを運営するライフケアデザイン(株)が、既成概念にとらわれずにすべてゼロからデザインしたといいます。ソニーライフケアグループが手掛ける初の有料老人ホームを取材しました。

 

入居者のライフスタイルに居室空間をフィットさせる「可変性」という発想


身体状況の変化に応じて柔軟に対応できる居室デザインが「ソナーレ祖師ヶ谷大蔵」の特徴のひとつです。大切にしているのは、できる限り入居者にフィットした生活を整えること。代表的なものを3つご紹介します。

25デジベルの遮音性をもつ防音効果の高い居室のドア 【25デシベルの遮音性をもつ防音効果の高い居室のドア】

見守り用のガラススリットが入ったドア

【見守り用のガラススリットが入ったドア】

居室のドアは2種類から選べます。ひとつは静かな環境を守る遮音性の高いドア。交差点の音量が公園の静けさになるくらいの音量を低減できるそう。たとえ少々居室の周りで大きな物音がしても、このドアひとつで自室の静かな環境が保たれます。

もうひとつは、この遮音効果のあるドアに見守り用のガラススリットが入っているもの。介護状況に合わせて、プライバシーと見守りの優先度を選択できる仕組みです。

 車椅子でも自分でトイレに行けるようにと設計されたトイレ

【車椅子でも自分でトイレに行けるようにと設計されたトイレ】

 間口はゆったり3.4メートルも開く、2面スライドのドア

【間口はゆったり3.4メートルも開く、2面スライドのドア】

トイレ設備は、車椅子の入居者がひとりでも利用しやすい設計になっていました。トイレに車椅子を楽に横付けできるよう、ドアは2面スライドし間口を広げられ、便座も斜めに設置しています。

このトイレ設備は、個人のプライバシーを守りたいとの思いから、できるだけご自身の力で排泄できるよう設計しています。

 「快適だと感じる家具であること」を大切に選定された介護ベッド

【「快適だと感じる家具であること」を大切に選定された介護ベッド】

身体の姿勢に合わせてベッドの傾斜や角度を自由自在に変えられます

【身体の姿勢に合わせてベッドの傾斜や角度を自由自在に変えられます】

寝具は、ドイツ・フェルカー社製の介護ベッドを採用しています。体に負担のかからない自然な態勢を保てる、ベッドサイドの柵が収納できるなど、快適さを重視したベッドに、自社開発したマットレスを使用しています。

このマットレスは身体の負担を軽減するために、反発力の異なる4種類のスポンジを部位ごとにカスタマイズできるのだそうです。

快適さは細部に宿る。妥協のない設備選びで実現した暮らしの「質感」

「ソナーレ祖師ヶ谷大蔵」が取り組む暮らしの「質」への追求は、とてもきめ細やか。施設内に導入された設備のひとつひとつは、じっくりと時間をかけ、とことん議論した末に選ばれたもの。徹底したこだわりを感じました。

 ハイサッシは日当たりだけではなく、開放感も感じました

【ハイサッシは日当たりだけではなく、開放感も感じました】

朝目が覚めたとき、朝日をたっぷり浴びられるようにとの思いで、採光性に優れたハイサッシを窓に使用しています。梁がなく床面から天井の高さまであるこのサッシは、部屋の奥まで光が届きやすく日当たりがいいのが特徴です。

ハイサッシの導入は「ソナーレ祖師ヶ谷大蔵」で取り組んでいるスリープマネジメントの一環でもあります。スリープマネジメントとは、生活習慣や睡眠環境を整える取り組みです。睡眠計の活用や入浴時間の調整など、快適な睡眠を促す配慮をしています。

 冷たい外気を温めてから換気するため、部屋の温度変化が少ない換気扇を採用

【冷たい外気を温めてから換気するため、部屋の温度変化が少ない換気扇を採用】

 自動給水型の加湿器。水を継ぎ足す必要もなく衛生的。

【自動給水型の加湿器。水を継ぎ足す必要もなく衛生的。】

衛生的な環境を保つため、換気扇と加湿器を室内に標準設置しています。

換気扇は熱交換をしながら換気でき、冷たい外気がそのまま入ってくるのを防ぎます。加湿器は全自動で給水できる優れもの。給水の手間が省けるので、スタッフもそのぶん入居者の介護に集中できます。

体勢に合わせて角度を自由に調整できる鏡

【体勢に合わせて角度を自由に調整できる鏡】

居室のトイレに手洗い用の小さな手洗いスペースがあり、トイレの外にも顔を洗ったりお化粧をしたりする場所として大きな洗面台が設置されていました。鏡の前で身支度を整える習慣を大切にできるようにと、目的に応じてあえて場所を分けたのだそうです。

 大浴場に堂々と設置された迫力の85インチ4K大画面液晶テレビ

【大浴場に堂々と設置された迫力の85インチ4K大画面液晶テレビ】

 “火のあるところに人は集まる”という考えから導入したラウンジの暖炉

【 “火のあるところに人は集まる”という考えから導入したラウンジの暖炉】

共有スペースにも、独創的な工夫が随所に散りばめられています。たとえば、お風呂は大小合わせて5箇所4種類ありますが、あえて機械浴は導入していません。できるだけ人の手で関わりたと考えているからです。

また、ラウンジにはやわらかに揺れる炎の暖かさを味わえるガス式の暖炉がありました。「リラックスして過ごしてほしい」との思いから導入されたものだそうです。

見守りは気づきの共有から。“プライバシーと安心の両立“を目指した予防介護

「ソナーレ祖師ヶ谷大蔵」の住環境を語るなら、入居者の生活に合わせたスタッフの見守り体制を整えたことは外せません。その取り組みについて、営業部の豊島さんに詳しく話を伺いました。

ーー『生活者の視点に立った暮らし』を追求する上で、“プライバシーと安心の両立“はチャレンジしたいテーマだったそうですね。

豊島さん:「そうなんです。これまでの老人ホームは、スタッフの見守りやすさから入居者の暮らしを設計する傾向がありました。たとえば、日中各居室のドアを開放することで、状況の変化を見逃さないように配慮する反面、個人のプライバシーが守られにくいといった課題もあったのです。私たちはそこを変えていきたいと考えました」

 食堂でくつろぐ入居者の様子

【食堂でくつろぐ入居者の様子】

ーー具体的にどう変えていったのでしょうか。

豊島さん:「まず取り組んだのは、情報共有の見直しでした。介護施設には「申し送り」という制度があります。ご入居者を見守るうえで必要な情報の引き継ぎです。以前、私は介護職員をしていましたが、申し送りは紙でやりとりしていました。

ケアステーションに立ち寄るたびに確認するものの、リアルタイムに状況把握できなかったり、職種別での共有に限られていたりということから「予防」の観点でケアに取り組むのが難しかったんですね。そこでタブレット端末を導入し、『MICSミックス』という介護システムを利用することで、全職種のスタッフから寄せられる情報をリアルタイムで共有することにしました。」

ーーどんな見守りができるようになったのでしょうか?

豊島さん:「予防介護の可能性が高まりました。たとえば、ご入居者が転倒するとき、多くの場合前兆となる変化があるんですね。その気づきを共有できるようになったのです。

その結果、席を立ったり、お手洗いに行ったりといったタイミングに合わせてスタッフが居室に訪問し、事故が起きないよう事前のケアに活用しています」


ーーたとえば遮音性の高いドアを採用している入居者の場合、室内で起きている様子は把握できないのではないでしょうか?

豊島さん:「その場合はセンサーを活用することで対応しています。ただ、センサー任せにするのではなく、あくまで私たちが気づきの精度を高めながら、ご入居者の生活に合わせて安全に配慮していきたいと考えています」

 

ソナーレ祖師ヶ谷大蔵:住環境の取材を終えて

取材中は施設のデザインはもちろん、入居者への配慮の深さに感嘆しっぱなしでした。老人ホームではなかったら、私もぜひ暮らしてみたいと思ったくらいです。

個人の生活を大切にしたい、快適な住環境で暮らしたい、という方にはとても魅力的な施設だと思います。

(記事中の内容や施設に関する情報は2017年5月時点の情報です)