看取り介護とは?緩和ケアとの違いや場所ごとの対応を解説

介護施設の入居を検討し始め、見学などに行くと、必ず説明で出てくるのは終末期対応の話です。「こちらの施設ではお看取りの対応をさせていただいています」など、施設側から一通りの説明を聞いてその場では理解できたと思っていても、実際にそのときが来ないと具体的にイメージできないものです。

ここでは、間違われやすい「看取り」と「緩和ケア」「ターミナルケア」の違いのほか、病院や在宅、介護施設でのケア対応の違いについてご紹介します。

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看取りとは

最期を迎えるまで行うケアのことです。

看取りは、具体的に死が避けられない状況の人に対し、最期を迎えるそのときまで、食事や排せつの介護といった日常生活のケアをすることです。鼻から管を通し、点滴を打つような医療行為や治療による延命は看取りには含まれません。

2020年に病院で亡くなった方は全体の68.3%※で、約7割にあたります。

一方、在宅で亡くなられた方は15.7%、老人ホームで終末のときを迎えた方は全体の9.2%と、在宅や老人ホームで看取りをする機会は全体の3割弱。終末期の現場では「最期は自宅で看取りたい」とご本人や家族が願っても、なかなかそうもいかない現実があります。

厚生労働省「厚生統計要覧」(2021年度)

看取りと緩和ケア、ターミナルケアの違い

緩和ケア 痛みをやわらげる医療的アプローチ
ターミナルケア 終末期の医療を中心としたケア

看取りと似たようなものと考えられがちなケアに「緩和ケア」や「ターミナルケア」があります。看取りとどう違うのか、詳しく見ていきましょう。

緩和ケア

緩和ケアとは、患者さんの身体的・精神的な苦痛をやわらげるための医療的なアプローチのこと。死ぬことを自然の過程と認め、死を早めたり引き伸ばしたりしません。

がんをはじめとした病気の治療と並行して行われます。医師や看護師のみならず、薬剤師や栄養士、医療ソーシャルワーカー、福祉関係者といったチームで取り組むものです。

緩和ケアが特徴的なのは、病気の進行とは関係なく、診断されたその日から開始すること。最期を意識して行うケアである看取りとは違い、終末期に限らず行われます。

ターミナルケア

ターミナルケアは、「終末期医療」や「終末期看護」と呼ばれるもの。死期が近くなった人に対して、主に病院などで点滴や酸素吸入といった医療を中心としたケアを行うことです。病気の症状による苦痛や不快感をやわらげることを目的とし、残された生活の充実を優先させます。

看取りは食事や排せつの介助をはじめ、褥瘡(床ずれ)の防止など、生活に対して手助けをする「介護的なケア」であるのに対し、ターミナルケアは医療の観点から患者さんの生活の質を向上させる「医療対応のケア」という違いがあります。

>ターミナルケアについてもっと詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。

関連記事終末期医療(ターミナルケア)とは?-特徴や費用、準備について解説―

看取り介護で必要になる対応

看取り介護で必要となる対応は、大きく分けて「日常的なケア」と「精神面のケア」の2つがあります。それぞれどのような内容なのか、詳しく見ていきましょう。

日常的なケア

生きていくために必要な日常的なケアには、食事や排せつ、入浴などがあります。介護施設で常日頃行われているケアと考えるといいでしょう。いつも体がきれいで、身体的苦痛がなく、体調を維持しながら穏やかに暮らせる。そのような生活の質が保てる環境を整えていきます。

具体的な対応

  • 栄養や水分補給の手伝い
  • 排せつ
  • 口腔ケア
  • 入浴
  • 褥瘡の防止やケア
  • 体位変換をはじめとした身体的苦痛の緩和
  • バイタルサインのチェック
  • 照明をはじめとした室内環境の整備

精神面のケア

ご本人が不安や孤独感、死に対する恐怖を感じないよう、気持ちに寄り添い、コミュニケーションを図っていきます。精神的な苦痛を緩和するように接することで、穏やかな日常が遅れることを目的とします。

ご本人のほかに、家族への精神的なケアも必要です。看取りを行うには、家族の協力が欠かせません。患者さんの死を自然なものとして見つめていく行為は、残される家族にとってもかなりの胆力が必要です。

精神的に不安定になる家族も多いものです。ケアをする施設側と家族が同じ方向に向かって患者さんの死を迎えることができるよう、家族の不安にも寄り添うことが大切になります。

具体的な対応

  • 継続的にコミュニケーションを図る
  • スキンシップを図る
  • 生活の質を保つ
  • 今いる場所が安心だと思えるように室内環境を整備する

看取りにおける病院・在宅・介護施設のメリット・デメリット

看取り介護が行われる主な場所は、病院、自宅、介護施設の3つです。場所によってメリットとデメリットがありますので、それぞれ解説していきます。

病院のメリット・デメリット

メリット

  • 専門的な医療ケアができる
  • 容態が急変したときに安心

デメリット

  • 医療行為がないと入院ができないため、対応可能な病院が少ない
  • 緊急度の高い患者さんを優先することが多い

看取りが行われる病院は、主に急性期治療が終わり、病状が落ち着いた方が入院できる療養型の病院です。ただし、受け入れてくれる病院は、少ないのが現実。なぜなら、医療行為がないと、入院そのものが叶わないことが多いからです。

在宅のメリット・デメリット

メリット

  • 住み慣れた場所でご本人が最期を迎えられる
  • 自宅なので人に気を使うことがない

デメリット

  • 家族は日常的介護の対応を迫られる
  • 専門的な医療ケアが難しい
  • 家族とケアマネジャーが一体となって在宅看取りチーム編成をするなどのマネジメントが必要
  • それまで介護施設や病院にいた場合、自宅の受け入れ体制を家族みずから整えなくてはいけない
  • 在宅と医療が24時間体制でできる環境を整える

住み慣れた場所で最期を迎えたい方は多くいます。2019年に内閣府がまとめた「令和元年版高齢社会白書」によると、75歳以上の約55%※の方が「完治が見込めない病気の場合に迎えたい最期の場所」を自宅と答えました。

しかし、在宅での看取りの難しさは、家族みずからが在宅医療や看取りに関しての専門家たちとのやりとりを行う必要があること。

助言が可能なケアマネジャーや在宅医を見つけ、在宅医、訪問看護師、理学療法士、在宅診療の可能な歯科医、栄養士らと家族がタッグを組み、看取りチームを編成することが不可欠となります。加えて、日常的なケアも必要となるため、家族にも負担が多くなります。

内閣府「令和元年版高齢社会白書」(2019年)

>在宅での看取りについてもっと詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。

【専門家が回答】自宅でも看取りはできる?どんな準備が必要ですか

介護施設のメリット・デメリット

メリット

  • 看護師常駐の施設では医療行為が可能で、緩和ケアが期待できる
  • 家族の介護の負担が減る

デメリット

  • 看取りケアができる施設が限られる
  • 病院に比べて専門的医療行為は限られる

在宅での看取りに比べ、24時間体制での介護の必要に迫られないのが介護施設。施設数も団塊世代が軒並み平均寿命に達する2040年台に向けて増加傾向にあるため、今後も介護施設での看取りは増えていくでしょう。

ただし、家族やご本人が施設での看取りを希望していても、その体制ができていない施設の場合やご本人の容態が施設のできる対応を超えた場合、対応可能なほかの施設や病院へ移ることになるため、入居の前に看取りに関しての対応の確認が必要です。

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>介護施設での看取りについてもっと詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。

【専門家が回答】老人ホームの終末期|看取りとターミナルケアの違いは?

看取り介護加算とは?

看取り介護加算とは、医師が回復の見込がないと判断した方に対して、ご本人や家族が看取り介護を希望した場合、介護施設が医師や看護師と連携をとって看取りをする場合に算定される介護報酬のことで、2006年に創設されました。

看取り介護加算が認められている事業者

特別養護老人ホーム

グループホーム

・特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム介護付きケアハウス、養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅

厚生労働省の社会保障審議会が2020年にまとめた「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について」※の資料によると、高齢者の人口増加で病院のベッド数不足が見込まれているため、医療機関の負担軽減を目的に、特別養護老人ホームにおいて中重度者や看取りへの対応を充実させるために上記施設が認められました。

厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について」(2020年)

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看取り介護加算の条件

看取り介護加算には(I)と(II)の2種類があり、それぞれ下記の条件を満たしている必要があります。

看取り介護加算(I)の条件

  • 看護職員、病院または診療所、指定訪問看護ステーションのいずれかの看護職員と連携し、24時間連絡できる体制が整っている
  • 看取りに関する指針を定め、施設への入所にあたっては入所者とご家族にそれを説明して同意を得ている
  • 看取りの指針について、医師や看護職員、ケアマネジャー、介護職員、生活相談員などが適時見直す
  • 看取りに関しての職員研修を行う
  • 個室あるいは静養室で看取りケアが行われ、ご利用者およびそのご家族、周囲の入所者に対して配慮している

看取り介護加算(II)の条件

  • (I)の条件をすべて満たし、なおかつ複数の医師が配置されていること、あるいは協力関係にある医師が24時間対応できること

上記の条件に含まれているように、看取り期に看護職員や医師を配置した場合、看取り介護加算が適用されることになったため、介護施設での看取りがより行いやすくなりました。

また、2021年度から新たな区分が追加されることになり、それまで死亡日30日からだった算定期間が「死亡日31~45日前」と延長され、介護事業所の看取り介護加算が得られやすくなっています。

国が定める看取りのガイドライン

厚生労働省は、人生の最期を自分らしく送ることを目的として「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を取り決めました。

その内容は、看取りに関する基本的な考え方や判断のプロセス、最終的な意思決定の手続きについての指針が示されています。2018年の改訂版では、病院における延命治療への対応だけではなく、在宅医療や介護の現場で大いに活用できるように、さまざまな見直しがなされました。

看取りをする上で重要な心構えが記されていますので、看取りをするご家族は心にとどめておいてください。

看取りのガイドラインの概要

  • 心身の状態の変化に応じて、本人の意思は変化しうるので、医療・ケアの方針やご本人や家族が求める生き方や死生観を共有し、日頃からチーム内で話し合うこと。
  • ご本人が意思を伝えられなくなる前に、家族をはじめご本人意思を確認できる信頼できる人は誰なのかをまえもって定めておくこと。
  • 繰り返し話し合った内容をその都度文書にまとめておくこと。また、その文書を本人、家族等と医療・ケアチームで共有すること。

看取りのときに家族が受けたいグリーフケア

グリーフとは深い悲しみ、悲嘆、苦悩を示す言葉で、グリーフケアとは亡くなった後の家族の支援のこと。

さまざまな「喪失」を体験し、悲しみを抱えた方々に寄り添い、その死をありのままに受け入れて、残された家族が希望を持てるように支援します。お葬式までどのように進めるのか、遺体の扱いなどについても、事前に家族と介護施設で相談しておくことも重要です。

また、大事な家族の喪失は、大きな痛みを伴います。死別という現実に対して、看取りの際には家族の不安や苦痛を取り除くケアも必要です。臨終のときに向かって、身体的にも精神的にも大きくダメージを受ける家族も多いため、相談できる介護職員を見つけておきましょう。

LIFULL 介護の姉妹サイト・tayorini(たよりに)では、看取りに関する個人の体験についても載せていますので、ぜひ参考にしてみてください。

>看取りの体験談は、こちらからお読みください。

医療・介護福祉業界のいろんな方にお世話になります

関連サイトいずれ訪れる「親の死」に、どう向き合うか。 母を亡くしてから思う、介護や看取りのこと

「LIFULL介護」がお届けするウェブメディア | tayorini

介護施設での看取り受け入れは増えている

現状、医療機関で亡くなる人が約7割の日本は、介護施設での看取りがより多くなるよう、徐々に国のシステムなどが変わってきています。介護施設によってはまだまだ看取り対応ができないところもあるため、入居にあたって看取り対応も可能な施設を、ぜひ検討してみてください。

LIFULL 介護では、看取り実績のある施設を一覧にしています。下記のページから探してみてください。

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この記事の制作者

横山由希路

著者:横山由希路(ライター)

町田育ちのインタビューライター。漫画編集、ぴあでのエンタメ雑誌編集を経て、2017年に独立。週刊誌編集者時代に母の認知症介護に携わり、介護をはじめて13年が経った。2020年にひとりっ子でひとり親を介護している経験から、書籍「目で見てわかる認知症ケア」(2刷)を企画・構成した。

HP横山由希路

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