- 質問
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定年退職後、夫婦で地方への移住をしようと思っています。最近、「日本版CCRC」という存在があると知人に聞きました。国が推進しているようですが、どういったものか良く分かりません。
地方創生を目的にしているとのことですが、そこではどんな生活が送れるのでしょうか?介護施設とのちがいなども詳しく教えていただけると助かります。
- 回答
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CCRCとは「Continuing Care Retirement Community」の略称で、高齢者が健康な段階で入居し、終身で暮らすことができる生活共同体のことをいいます。この概念は1970年代のアメリカではじまりました。
日本版CCRC構想とは、健康な段階で移り住み要介護状態になっても住み続けることができますが、主体的に地域コミュニティーに参加し多世代と交流するなどアクティブに暮らすことで、できる限り健康長寿を目指すものです。
このページでは日本版CCRCについて解説します。将来の住まいを考えるうえで参考にしてみてください。
日本版CCRCの特徴とは
CCRCとは「Continuing Care Retirement Community」の略称で、高齢者が健康な段階で入居し、終身で暮らすことができる生活共同体のことをいいます。
生涯安全な住まいと医療・介護面での手厚いサポートが約束されており、1970年代頃からアメリカで急増しました。
日本版CCRC構想は「東京圏をはじめとする都市部で生活する高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」を目指すものとして始まりました。
この構想の意義としては
「地方移住を望む高齢者の希望の実現」
「地方への人の流れの推進」
「東京圏の高齢化問題への対応」
の3つがあげられています。
東京圏への人口集中が進む中、高齢者の地方移住によってその流れを食い止め、地方創生に貢献することが期待されます。
また、東京圏の高齢者増加による医療介護人材不足が深刻化し、地方から職を求めての人口流出に拍車がかかることが予想されており、その問題解決としても有意義であると考えられています。
アメリカと日本では何が違う?
アメリカとの違いは、アメリカが対象を富裕層としているのに対し、日本版は主に高齢者夫婦の厚生年金の標準的な年金月額(約21万8千円)で生活できるような水準を想定しているところです。
また、アメリカのCCRCは高齢者のみが居住していますが、日本版は多世代が共生し互いに支えあう地域づくりを目指しています。
CCRCでのライフスタイル
CCRCでの住む建物は、一戸建てやマンション、団地など、さまざまなタイプのものがあります。
そこでは居住者の健康維持・増進を図るための多様なプログラムが提供されています。
フィットネスクラブ・アスレチックジム・テニスコートなどの運動設備や、音楽スタジオ・カラオケルーム・ビリヤードなど趣味を楽しむ設備を利用したり、豊富な内容のサークル活動への参加、近隣の大学での講義受講、あるいは現役時代の職業や趣味を活かして運営に参加したり、共同で店舗を運営したり、地域の子ども達に勉強やものづくりを教えたりなど、担い手としてより主体的にコミュニティーに参加し、生きがいを持って充実した生活を送ることができます。
中には、地域コミュニティーのために働いた時間や内容がポイントとして換算され、そのポイントは将来の自分の介護に利用できるといったユニークな取り組みをしているところもあります。
CCRCは地域社会において健康でアクティブな生活を送ることを目的としており、地域交流は最低限必要となります。地域づくりに参加し地域住民の役に立っている実感は、何物にも代えがたいものになるでしょう。
CCRCでの生活「株式会社スマートコミュニティ」の取材レポート
CCRCに住むための費用
日本版CCRCは主に高齢者夫婦の厚生年金の標準的な年金月額で生活できる水準を想定していることから、有料老人ホーム等と比べ低価格で入居できるところもあります。下記は現在運営されているCCRCの費用例出となります。
<例>(1人入居の場合)
●(分譲型)千葉県千葉市
入居時:1,300万円~7,090万円(販売価格)
入会金・施設利用金:190万円
入居後・コミュニティサービス費:42,858円/月
朝・夕食費:41,905 円/月
マンション管理費・修繕積立金:12,970円~31,920円
●(賃貸型・サービス付き高齢者向け住宅)石川県金沢市
入居時:家賃の2ヶ月分(敷金)
入居後:家賃:85,000円/月
共益費:20,000円/月
状況把握・生活相談サービス費:15,000円
●(賃貸型・サービス付き高齢者向け住宅)岐阜県岐阜市
入居時:家賃の3ヶ月分(敷金)
入居後:家賃:95,000円~135,000円/月
共益費:14,000円
状況把握・生活相談サービス費:9,000円/月
老人ホームや介護施設との違い
CCRCは有料老人ホームや介護施設とは違い、介護職員が常駐している訳ではありません。
従って入居後に介護が必要になった場合は、個々に契約をして訪問介護やデイサービスといった在宅サービスを利用することになります。
CCRCは医療介護が必要な時には継続的なケアを受けられることを目指しているので、介護サービス事業所等の設置などの体制は作っており、重介護になった場合もそれで対応することを想定しています。
要介護者が増えてくれば、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることを実現する「地域包括ケアシステム」のモデルケースとなるでしょう。
CCRCの入居条件
CCRCの主な入居対象者は、お元気で自立した高齢者です。
できる限り健康で長生きし、積極的に地域社会に溶け込み、活き活きとアクティブに暮らしたいと考える方に適していると言えるでしょう。
契約時には連帯保証人と身元引受人が必要です。退去要件はないですが、認知症症状が進行した場合などCCRCでの共同生活が難しくなった場合は、退去せざるを得ないこともあるでしょう。
待機者はそれほど多くはなく、特養や人気の高い一部の有料老人ホームなどと比較すると、すぐに入居できるケースが多いようです。
日本版CCRC構想の課題とは
日本版CCRC構想の意義の1つに「地方移住を望む高齢者の希望の実現」とありますが、実際には地方移住を望む高齢者はそれほど多くないことがわかっています(※)。
特に女性は住み慣れた地域から離れることを望んでおらず、実際に入居者が集まるのかという懸念があります。実際にCCRCをいち早く開発したが入居者が集まらず、建てられるはずだったフィットネスクラブなどの施設が建設中止となったというケースがあります。
また、高齢者だけを増やしても、いずれは要介護者だらけとなることが想定されます。実際に開設して年数が経ち介護者が増えたが、介護スタッフが不足して十分なサービスが受けられないとう事例が出ているほどです。CCRC構想を成功させるには、高齢者だけでなく多世代が住みたいと思う魅力的な街づくりが必要でしょう。
※出典:平成26年度 人口,経済社会等の日本の将来像に関する世論調査より
まとめ
日本版CCRC構想は、少子高齢化が加速して向かう日本にとって一筋の光となり得ます。
自身の健康増進・維持を目指し、安心して活き活きと暮らし、多世代のために役立つ地域の担い手として生きることができれば、医療費・介護費の削減にも大きく貢献することでしょう。
しかしコミュニティーとしてうまく機能するには、事業として成り立つか、集客マーケティングはしっかりできているかなどが問われることになります。
実際にCCRCを探す際は、安心して暮らし続けるための仕組みがちゃんとあるか、高齢者だけでなく多世代との交流が持てるか、自分が活き活きと暮らせるイメージが沸くかをしっかり見極めましょう。