質問

私は介護も不要で元気に一人暮らしをしています。近い将来、自然の豊かな地方での生活を望んでいますが、地方での老人ホーム探しの方法と、注意点があれば教えてください。(東京在住・74歳)

回答
西村 英記

移住は多かれ少なかれ理想と現実のギャップが生じます。郊外へ移ることで緑多く静かな生活環境を手にする一方で、都会の生活から一転して不便な生活を送らなければならない場合もあるでしょう。その点をよく理解した上で移住後の生活を具体的にイメージすることからスタートします。
希望エリアにあるパンフレット等を取り寄せ、数日でも良いので老人ホームの体験入居をしてみましょう。まだ具体的でなければ、施設近隣の宿に宿泊し、街を歩き周辺環境を自分の目で確かめることが大切です。

ここでは、都会と地方の老人ホームについておおまかな特徴の説明と比較をすることで、ホームの探し方や注意点についてアドバイスいたします。ご高齢になってから地方移住を考えるときの参考にしてみてください。 西村 英記(福祉サービス第三者評価・評価調査員)

【目次】
  1. 1. 移住に向けて、元気なうちから準備すること
  2. 2. 都会と郊外にある老人ホームの違い
  3. 3. 地方のホームで暮らすときの注意点
  4. まとめ

1. 移住に向けて、元気なうちから準備すること

 

どんな生活を送りたいか

歳を重ねるにつれて都会の喧騒が煩わしくなり、落ち着いた環境や、自然を身近に感じられる環境を希望する方が増えています。これからの人生において、どんな生活を送りたいのかを考えたとき、自分が希望していることは「移住しなければ叶わないこと」どうかを想像してみましょう。

移住しなくても叶えられる(可能性が高い)のであれば、住み慣れた便利な環境を手放してよいのかを慎重に考える必要があります。

その結果、都市ではなく地方の老人ホームなら自分の希望が実現できると判断したら、実際に移住することを想定して準備を進めましょう。


移住への準備

準備は大きく二つ。「持っていく物と処分する物の仕分け」と「具体的な移住先の選定」です。
これは元気なうちに取り掛かり、自分の夢の実現に少しでも早く近づけるように準備を行いましょう。

>老人ホームへ引っ越しするとき、注意することはありますか?


具体的な移住先の選定

特に具体的なエリアを決めていない場合は、おおまかなエリア(東北地方、九州地方といったレベル)の中で、費用や居室面積など優先順位の高いポイントを考えます。ホームページを確認したりパンフレットを取り寄せて気になるところをいくつかピックアップしましょう。

すでに具体的に希望エリアが決まっているようでしたら、LIFULL介護で検索することもできます。



2. 都会と郊外にある老人ホームの違い


各ホームによって違いはありますが、おおまかに都会の老人ホームと地方の老人ホームの違いを以下にまとめてみます。


都市部の老人ホーム 郊外の老人ホーム
ホームの形状 中高層(3階建て以上)のホームが多い 低層(1~2階建て)のホームが多い
環境 交通手段が発達し便利
買物や出来る場所が近くにあり、選択肢が多い
自然が身近に感じられる
車での移動が多い
外出 これまでの良く知った外出先に行くことが出来る 新しい外出先を発見できる楽しみがある
費用 地方に比べ高額 都会に比べ低額
アクティビティ 商業施設での買物や外食などが多い。自然に触れる活動は少なくなる 普段から自然に触れる活動が多い(老人ホーム所有の庭園や農園での作業など)
人間関係 友人・知人と交流など、これまでの人間関係を継続できる 新しい人間関係を構築できる


このように、現在都会に暮らしている方にとっては、都会のホームはこれまでの生活を継続させることを重視し、地方の老人ホームは自然に触れることや生活スタイルを変化させることを重視していると考えられます。

また、地方の老人ホームは都会の老人ホームに比べ月額費用などが低額であるため、特に移住希望が無くても、予算の都合で地方のホームへ入居する方もいらっしゃいます。



3. 地方のホームで暮らすときの注意点

歳を重ねるにつれ、環境が変わることが体力的にも精神的にも大きな負担となります。


体験入居で実際に生活してみる

老人ホームの「体験入居」制度を利用し、ホームでの生活を体感してみて下さい。

一日ホームの中で暮らすことで、気温の移り変わりや周辺の状況といった環境面や、他の入居者や職員の様子や生活のリズムまで分かると思います。パンフレットやホームページだけではわからなかった、考えていなかったような気づきが出てくるかもしれません。

>老人ホーム・介護施設の見学・体験入居のポイント


環境の変化

上記で確認したように、特に地方の老人ホームへ入居するとなると、そもそも住む場所が変わる事に加え、周りの環境やこれまでの人間関係等にも大きな変化が生じることになります。食事や慣習の面で戸惑うかもしれません。

ホームから一歩外に出ると、これまでの環境と全く違った景色が広がっています。

家族・友人との面会頻度

移住により家族との距離が遠くなってしまう場合、家族、親戚、友人などとの頻繁な面会が難しくなります

家族にとっても、目の届かない所に行ってしまうのは不安となりますから、前もって家族の理解と協力を得ておくことも必要です。

利便性

都会に住んでいる際は日常の買い物や娯楽が徒歩や公共交通機関等の移動で完結していたところ、地方では車での移動が主となるため、自分が単独で行動できる範囲が限定されることを想定しておかなければなりません。


まとめ

 地方へ移住するとなると、これまでの生活スタイルが変わってしまうことに対する心がまえが必要です。あえて生活スタイルが大きく変わるリスクを取る必要があるのか、決断するのはあくまで自分自身です。

実際に住んでみて「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、まずは老人ホームの体験入居を活用し、イメージに近い生活かどうか、よく確認しておきましょう。

もしも介護度が重くなった場合、外出頻度も減ると想定すれば、ホームの周辺環境の違いはさほど問題にならないのかもしれませんし、元気なうちに自分らしくやりたい事をより実現できる環境に身を置くのも、その方らしい生き方と言えるでしょう。

住む場所の問題だけにとどまる話ではありませんが、まずは早い段階で移住への希望や思い、優先順位などを決定し、家族にもその意思を伝えて協力してもらうことが大切です。

>老人ホームの探し方・選び方|入居までに必要な6つのステップ

このQ&Aに回答した人

西村 英記
西村 英記(福祉サービス第三者評価・評価調査員)

かず総合コンサルティング研究所/エリアマネージャー
行政書士法人御池事務所/行政書士
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