- 質問
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認知症の母を自宅で介護しています。母も一緒に出かけられる場所を探していて、認知症カフェという存在を知りました。認知症カフェとはどんな場所なのでしょうか?どんな方が参加するのでしょうか
- 回答
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認知症カフェは、認知症の人とその家族が気軽に立ち寄れるカフェのことで、地域の人たちとのつながりを作るきっかけができる場所です。そこでは地域の住民、介護や医療の専門職など誰もが参加できる場所として、お茶を飲みながら話をし相談をながら交流を深めることができます。
ここでは認知症カフェの目的、運営は誰がしているのか、利用のしかたなど、認知症カフェがどんなところかを解説します。ご家族が認知症をおもちであったり認知症に関心を持ったとき、ぜひ認知症カフェに足を運んでみてください。
認知症カフェとは?
認知症カフェは、ヨーロッパで始まったスタイルを取り入れて、認知症の人とその家族を支援することを目的に、2012年から国の認知症施策の一つとして普及が始まりました。
2015年に国が「認知症施策推進総合戦略(通称:新オレンジプラン)」の中心施策の一つとして位置づけたこともあり、全国で急激にその数が増えています。
認知症の人とその家族が集うカフェは、それまでにもありましたが、現在の認知症カフェは、利用者を限定せず、認知症の当事者、家族、地域住民、介護や医療の専門職などさまざまな方が集うこと大きな特徴です。
地域の人たちが気軽に集い、認知症の人や家族の悩みを共有し合いながら、専門職に相談もできる場所となっています。認知症カフェは、カフェという自由な雰囲気のなかで、支える人と支えられる人という隔てをなくして、地域の人たちが自然に集まれる新しい場所です。
カフェの運営者はさまざま
認知症カフェを運営しているのは、個人またはNPO法人や介護事業所などの団体です。認知症の当事者とその家族が開設しているところもあります。
開催場所は多様で、介護施設の一角や地域のコミュニティセンター、商店街の空き店舗などが多いようです。個人が自宅を開放しているケースもあります。
認知症カフェを運営するための基準は特にありません。しかし、全国の約半数以上の市区町村が、認知症カフェ開設のための金銭的援助やカフェの周知広報などの支援を行っている関係から、設置基準を設け始めた市区町村もあります。
運営スタッフは、介護職や看護師などの専門職を中心に、地域のボランティアがサポートしています。
認知症カフェではどんなことが行われている?
認知症カフェには、いくつかのタイプがあります。
一つは、自由に時間を過ごしてもらうことを一番の目的にしたカフェで、その雰囲気の中で必要に応じてスタッフや専門職に気軽に相談ができるタイプです。こういうカフェでは静かに休める空間づくりに心を配っています。
もう一つは、歌や工作などさまざまなプログラムを用意して、認知症の人の潜在能力を高めたり、暇をもてあそばないように工夫したりしているカフェです。
その他、医療や介護の専門職が役立つ情報提供をしながら、みんなで学ぶ場としてカフェを活用しているタイプもあります。
また、認知症の人が、お客さんとして訪れるだけでなく、食器を洗ったり、コーヒーを淹れたり、紙ナフキンを折ったりして、スタッフと一緒に働くカフェも増えてきました。なお、地域の住民参加を制限し、認知症の当事者同士、家族同士で話し合えるカフェもあります。
カフェに参加したいと思ったら
自分が住む地域の認知症カフェの情報を得たいときは、市区町村のホームページをチェックしてみましょう。カフェの一覧を載せているところも増えてきています。また、地域包括支援センターに問い合わせれば、地域の認知症カフェの情報を教えてくれます。
認知症カフェは、月に1~2回開かれているところが多く、開催時間は平均2時間くらいですが、なかには長時間オープンしているところもあります。
参加費用は、一般的に利用料や飲み物代として数百円程度ですが、無料のところもあります。1,000円以上の参加費がかかるところは、プログラムで行う調理などの材料費が含まれています。また、ランチを準備しているカフェもあるようです。
参加するための事前申し込みはしていないカフェがほとんどですが、なかには事前連絡を必要とするカフェもありますので、気になる認知症カフェを見つけたら、参加条件や内容などを電話で確認してみてください。
もしも認知症の家族をカフェに誘い出すのが難しい場合は、本人が親しみをもっているヘルパーさんや友人、近所の人に一緒に参加してもらうとよいかもしれません。居心地がよくて評判の認知症カフェは、参加した人が次に参加するときに、他の認知症の人や家族を誘うケースが多いようです。
認知症カフェが当事者とその家族に与える影響
認知症カフェは、認知症の人が自分のしたいことができる場所であることを大切にしています。自発的に楽しい時間を過ごせるよう、スタッフだけでなく利用者も協力し合ってます。
例えば、認知症の人が軽食を作ったり、飲み物を運んだりして生き生きと過ごしているという例はよく聞きます。
また、たとえ話せなかったり、意思表示が難しかったりする人であっても、認知症カフェで人と交流することにより、笑顔が見られるなどの変化が起こりやすくなります。
家族にとっても認知症カフェは息抜きできる場所として貴重です。そして認知症の当事者がカフェに通うようになってから笑顔が増えて症状が落ち着けば、支える家族の精神的負担は大きく和らぐでしょう。
家族というのは、認知症の家族を守る意識が強くなる傾向があるので、普段ついつい何でもしてあげたり、逆に何でも否定したりしがちです。認知症カフェに一緒に通い始めると、本人が家にいるときと違う表情をするのに気づき、それが家での介護によいヒントをもたらすこともあるようです。
認知症カフェの今後
国が設置を促しているため、認知症カフェは今後も増えていくと思われます。
「地域包括ケア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、住民の医療、介護、生活支援、認知症ケアなどを地域の力をつなげて支え合おうというしくみのことです。各市区町村では、そのしくみづくりが進められています。
このしくみに不可欠なのが、住民同士が支え合える拠点です。認知症カフェは、その拠点の一つとして、とても重要視されているのです。
このように期待されている認知症カフェですが、課題もあります。それは、認知症の人がなかなか集まらない、経費がかさむなど、カフェを継続させていくために運営者にかかる負担が大きいことです。
認知症カフェは、地域のみんなで支え合う場所ですから、地域の力そのもので継続させていくことが、大切な視点となります。
認知症カフェは、認知症の人が地域住民と出会い、家族介護者の孤立を防ぎ、地域住民は認知症の理解を深める場所として、地域に欠かせないスペースになりつつあります。
認知症に関心をもつそれぞれの立場の人たちが、認知症カフェで出会って顔見知りになり、普段からの地域の見守りにつながることが期待されています。
(監修:森 裕司 株式会社HOPE代表、介護支援専門員、社会福祉士)