質問

介護付き有料老人ホームに入居中の母が入院しました。残念ながら、ホームには戻れそうにありません。
母の契約した老人ホームの居室に、あとから父が入居することは可能でしょうか?それとも、別契約が必要なのでしょうか?

回答
岡本 典子

老人ホームの形態により異なりますが、原則は入居契約をされたご本人のみしか入居できません。あとから同じ居室に入れるかは「追加入居」が可能かどうかによって異なります。各施設の「入居契約書」に記載されていますので、確認されるのがよろしいでしょう。

要介護の方が入居される介護付き有料老人ホーム(以下、介護付きホーム)は、契約であるご本人のみが入居可能で、あとから同室に入ることはできません。例え生計を一緒にしている配偶者が、あとから同じホームに入るとしても別契約になります。

しかし、自立者(介護認定非該当)の方だけが入居できる介護付き有料老人ホーム・入居時自立型(以降、自立型ホーム)の場合は、契約書にあり提示されている条件に適っていれば、配偶者などが追加入居できるケースもあります。

ここでは老人ホームの契約と追加入居について解説します。追加入居を考えた際に参考にしてください。 岡本 典子(終のすみか探しコンサルタント マイアドバイザー®登録FP)

【目次】
  1. 1.有料老人ホームにおける入居契約の流れ
  2. 2.入院して戻れそうにない場合、契約解除して退去するケースも
  3. 3.有料老人ホームから病院へ入院した場合、どんなサービスが受けられるか
  4. 4.自立型ホームでは、条件付きで追加入居可能のところもある
  5. まとめ

1.有料老人ホームにおける入居契約の流れ

入居したい老人ホームが決まったら書面で申し込みを行います(「入居申込金」が必要なホームもあります)。それに基づき、入居にあたり正式な面談が行われます。

その際に、ご自身の身体状況や経済状況、気になることなどを伝えます。もし、あとから配偶者が追加入居する可能性がありそうなら、なるべく早い段階で確認しておきましょう。入居が合意に達すると、契約です。

入居契約時に交わされるのが「入居契約書」で、施設の利用に関する権利・義務を定める目的で、入居者と施設事業者間で交わされます。

契約者個人の氏名、契約する居室の号室名、利用上の注意点、身元引受人の役割、契約解除の要件、入居一時金の返還時の算定方式などが記載されています。

この入居者個人との「入居契約書」と同時に、「重要事項説明書」の説明もありますので、十分に理解した上で署名・捺印しましょう。

また、「サービス契約書」や「管理規定」の説明も受けます。ここでは、病院への付き添い料金やどの病院(協力医療機関)と提携しているかなどの説明もありますので、確認しておきましょう。

>意外と時間がかかる!老人ホーム入居までの流れ


2.入院して戻れそうにない場合、契約解除して退去するケースも

社会福祉法人などが運営する特養(特別養護老人ホーム)では「数ヶ月間(多くは3ヶ月間)入院した場合退去」と契約書に明記されています。

しかし、有料老人ホームでは、管理費などを支払っていれば、入院してもすぐに契約解除して退去する必要はありません。

多くの方の場合、管理費を払い続けて入居契約を継続されています。ただし病院の入院費と老人ホームの利用料が二重にかかることもあり、長期間の入院の場合は退去するケースも見られます。

高齢期になると、骨折したり、持病が悪化したりで入院する方も多くなりますが、治療が終わればホームに戻り、一時介護室で静養し、日常生活ができるようになれば自分の居室に戻ることができるので安心です。

※一時介護室の利用料金はかからないところがほとんどです。




3.有料老人ホームから病院へ入院した場合、どんなサービスが受けられるか

体調を崩し入院した場合、老人ホームから受けられるサービスがあります。内容については入居時に渡される管理規定の中の「サービス一覧表」に記載されていています。

例えば、入院中のホームスタッフによる病院訪問は「週2回以上」(洗濯物の交換など)、その他は「必要に応じて」となっており、入退院の送迎、手続き、身元引受人(成年後見人)への連絡は、可能な限りの対応がなされます。

場合によっては、遠方の身元引受人の依頼に基づき、入院費の建て替え払いも行われます。

ただし手術やリスクのある治療への「家族の同意」が必要な場合、施設長の同意でも対応してもらえる医療機関と、あくまでも家族・親族の同意がなければ入院も含めて受け入れてもらえない医療機関もある点は押さえておきましょう。




4.自立型ホームでは、条件付きで追加入居可能のところもある

自立者(介護認定非該当)が入居し、介護が必要になっても看取りを受けて最期まで暮らし続けることができる自立型ホーム。

こちらでは、施設ごとに管理規定で追加入居の「細則」が定められており、その要件を満たす方の場合は、追加入居金、その他入居時に必要な費用を支払ってあとから入ることが可能なところもあります。


例えば、あるホームでは、「主たる契約者の入居日から償却期間の半分以内の期間内で、満65歳以上の配偶者、または三親等以内の血族、もしくは一親等の姻族が1回に限り追加入居可能」。

また、あるホームでは「入居契約10年以内に、60歳以上の自立者で、同居可能な間柄の方なら1回に限り追加入居可能」と規定されています。




まとめ

有料老人ホームへの入居は、契約の当事者のみが入ることができるのが原則です。
各施設で追加入居の可否や、可能な場合の要件が規定されていますので、事前に確認しておきましょう。

夫婦ともにお世話になる可能性がある場合は、2人部屋を選択すると割安になることから、入居時に将来的な見通しを立てて検討することが大切です。

このQ&Aに回答した人

岡本 典子
岡本 典子(終のすみか探しコンサルタント マイアドバイザー®登録FP)

ファイナンシャル・プランナー(CFP,1級FP技能士)、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー。東京・神奈川を中心に高齢者施設・住宅を210施設以上見学しており、安心して自分らしい住まい方をご検討される方の住みかえ相談を行っています。