質問

糖尿病の持病を持っている父は有料老人ホームの入居を考えています。探す前から、糖尿病の治療食の対応がしてもらえるのか不安です。
また、食べれられない食事がある場合、個別対応はできるのでしょうか?

回答
德田 泰子

老人ホームにもよりますがおおよその場合、治療食に準じた食事への対応を行っています。長く暮らす上で食事面においての健康への配慮は欠かせなくなっており、治療食に限らず当日の体調変化によっても食事変更に応じてくれる老人ホームもありますので、入居をご検討する場合は臨機応変な食事サービスについても確認されることをおすすめいたします。

現在の健康状態をふまえ、老人ホームで健やかに暮らすため必要性の高い食事サービスについてご紹介します。老人ホームで過ごすにあたり、治療食をはじめとする食事の不安を解消するためにお役立てください。 德田 泰子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ所属)

【目次】
  1. 老人ホームでの食事サービスを把握する 
  2. 治療食や代替食への対応は?
  3. 突発的な体調不良にも個別対応できるか確認
  4. 老人ホームでの食事に対する不安を解消しよう
  5. まとめ

老人ホームでの食事サービスを把握する 

 献立を通して食事サービスの充実度を感じ取ろう

老人ホーム入居者の最大の楽しみといえば、多くの方が「食事」と答えられるほど食事への期待感は高いものです。

このような背景からも最近では、食事を工夫される老人ホームが少しずつ増えつつあります。老人ホームの中には、多数の入居者に食事提供がなされるため「給食」という概念が根強く残っている場合があります。給食は安定的に栄養バランスが整った食事提供で優れた面を持ち合わせています。

しかしながら長く暮らす上では、日々体調の変化が伴うため給食という考え方に加え、食事としての細やかさと臨機応変さが食事サービスとして活かされているかが老人ホームにはとても重要だと考えます。

高齢者食といえば、クタクタになったやわらかい野菜のあえ物、煮物などの和食を想像される方も多いと思われます。

このように高齢者食としてのイメージや、固定観念が根強く残る介護施設の食事も存在しますが、実際には近年の食習慣の変化も考慮して揚げ物や洋風メニューも豊富に組まれています。

老人ホームの月間の献立を見せてもらおう

今後老人ホームでは、戦後の食糧難を経験された80~100歳代の入居者と食の欧米化とグルメ志向時代を過ごされてきた団塊世代の入居者が同じ環境で暮らす機会が増えてきます。

世代幅があるため当然のことながら食習慣にも違いが生じます。和洋食を含め、様々な献立が偏ることなく考えられ楽しみを持たせてくれるか、工夫がなされているかを知るため、老人ホーム訪問時には「月間献立表(ひと月ごとの献立)」を見せて頂きましょう。

「月間献立表」とは、ひと月の献立名が記され、献立の流れが読み取れます。さらに日本には、四季折々、旬の食材とそれを活かした行事食の考え方があります。

歳を重ね季節ごとに巡り合える食材の機会は大切にしたいものです。献立に込められる背景に季節感があるか、変化があるかも老人ホームでの食事サービスを知る上では大切な要素となります。

月間献立表を見るときのチェックすべき3つのポイント

1.いろんなメニューが取り入れられているか?ワンパターンではないか?
  例:季節の食材、季節のメニューが入っているか。
    揚げ物など、調理方法が偏っていないか。

2. 行事食は取り入れられているか?
  例:節分、ひな祭り、七夕など

3.わかりやすい献立名で表示されているか?
  例:「エスカベッシュ(西洋風南蛮漬け)」など、難しい献立名もわかりやすく表示している。

>食事が美味しい老人ホーム特集

治療食や代替食への対応は?

老人ホームでの治療食とは

高齢者の食事には、生活習慣病対策が必要な場合が多々あります。
老人ホームの食事では、栄養バランス、減塩などに配慮された食事が提供される傾向にありますが、専任の管理栄養士が施設内に在籍していることが少ないのが現状です。

病気を持つ方への対応食として「治療食」という言葉を引用する場合があるものの実際には治療が目的ではないため、病院で提供されるような厳格な食事制限食ではなく、それに準じた食事対応になることが多いと思われます。

代替食ってどんな食事?

入居者に苦手な食事やアレルギーなどがある場合は、献立を差し替えて提供してくれる場合があります。これを代替食といい(施設によって呼び方が異なる場合あり)、苦手な食材や食事がある場合は事前にお伝えしておきましょう。

個別対応食のメリット

・食事制限に準じた食事提供をする際は「病気予防食」として活用することができる。
・苦手な食事やアレルギーなどがある場合は、献立を差し替えて提供してくれる。

個別対応食のデメリットとは

・治療食が必要な場合は、それに準じた食事になることがある。そのため、厳しい食事制限が必要な場合、老人ホーム側も対応できないことがある。
・嗜好品を食べすぎないなど、ある程度の自己管理も必要。

>高齢期の食事について詳しくみる

突発的な体調不良にも個別対応できるか確認


心身ともに気弱なときこそ心のこもった食事ケアが必要です。
日々の生活では、突然の体調不良も起こり得ます。さぞ、心細く不安も生じることと思います。
予定していた食事を食べることができない場合、急な食事変更については、随時対応頂きたいものですよね。

「おなかの調子をこわしたので、今日はお粥にしてほしい」
「風邪気味なので、消化の良い煮込みうどんに変更しましょう」

など、単なる気まぐれではない食事の変更については、体調に合わせた食事提供が可能かを確認しておくと安心です。


老人ホームでの食事に対する不安を解消しよう

体調不良が生じた際に、どのような対応をしてくれるのかが大きな不安材料のひとつと考えます。老人ホームへ入居する際、健康上の諸問題と食事の関係は切り離せないものです。

食事の個別対応・5つのかんたんチェックリスト

老人ホームを選ぶ際、下記の5つのかんたんチェックを活用し、食事に対する不安を少しでも取り除いて老人ホームでの食生活を楽しみたいものです。

 □ 治療食(それに準じた食事)は対応可能か?
 □ 苦手な食材・食事がある場合の対応は?
 □ 食物アレルギーがある場合の対応は?
 □ 急な体調不良の場合の食事内容は?
 □ 月間献立表を見せてもらう


まとめ

誰しも歳を重ねるにつれ様々な健康不安が生じてきます。
持病の進行に不安をお持ちの場合や、自宅ではうまく食事内容や栄養コントロールができずにいた方も、老人ホームでどこまで対応できるか事前に確認し、健康生活に活かしてみてはいかがでしょう。


このQ&Aに回答した人

德田 泰子
德田 泰子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ所属)

株式会社ヘルシーオフィスフー/代表取締役
(公社)全日本司厨士協会大阪府本部女性部/副部長
管理栄養士・調理師、栄養コンサルティング
「食事を介護施設の付加価値に」口から食べるための介護食を支援している。