- 質問
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2年前に母が他界し実家が空き家になりました。たまに掃除をしに訪問していますが、次に住む親族もいないので処分しようか検討しています。
ただ、解体には費用もかかり、更地にすると税金も上がるので何もできない状態です。このまま放置しておくとどんな問題が起こりますか?これから何をすればいいか教えて下さい。
- 回答
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空き家を放置すると家計の足を引っ張ります。草むしりや建物修繕などの管理コストだけでなく、「倒壊によって隣家を損壊した」「人身事故を起こした」となると、高額の損害賠償金の請求を受ける可能性もあります。また、不法侵入や放火のリスクも忘れてはなりません。ご近所にも迷惑をかけてしまう深刻な問題なのです。
空き家は時間が経つほど資産価値が減少しますので、一刻も早く空き家問題に詳しい専門家に相談してみましょう。ここでは空き家問題の全体像と解決に向けた相談先について解説します。
- 【目次】
空き家の件数は過去最高に
空き家問題が叫ばれるようになって久しいですが、総務省統計局によると平成30年における全国の空き家数は848万9千戸。空き家率は13.6%と過去最高となり、現在も増加しています。
しかし、すべての空き家が問題というわけではありません。例えば交通アクセスや住環境も良い人気のエリアで、管理が行き届いているような「資産価値のある物件」であれば賃貸・売却に出したとしても借り手・買い手に困ることはないでしょう。
問題なのは、管理せずに放置されて老朽化が進んだ物件のことです。次の項で具体的な問題点をあげていきます。
家主が抱える3つの問題
空き家を所有することで抱える問題は大きく3つに分けられます。まずはお金の問題、次に心の問題、さらに社会的問題です。
1.お金の問題
空き家を維持するには管理コストが発生します。
定期的に訪問して家屋の清掃、換気、通水、雨漏りなどの点検、草むしりや害虫駆除などが必要で、一日がかりの作業となります。近年、こうした空き家管理を代行する会社も増えていますが、毎月相応の費用がかかります。
もちろん固定資産税や都市計画税などの税金も払い続ける必要があります。空き家は負債と同じです。空き家があるだけで、どんどんお金がでていきます。空き家を放置している限り、根本的な解決にはなりません。
2.心の問題
「倒壊の危険性がある」、「ゴミ屋敷になっていて異臭がひどい」、「ボヤ騒ぎがあった」という苦情もよく耳にします。近隣住民に不安や不快感を与えてしまい家主に直接苦情が来ることや、住民からの訴えにより役所から連絡が来ることも。
空き家が原因で近隣トラブルに発展することは珍しくありません。こうしたリスクを抱えたまま所有し続けることは、家主にとっても精神的な負担になります。
3.社会問題
空き家が不法侵入や犯罪の温床となり、治安の悪化をもたらすこともあります。容易に侵入できるような建物は放火のリスクも高まり、その火が近隣に延焼する危険性もはらんでいます。
また、建物の倒壊や倒木による事故の危険性も考える必要があります。倒壊した建物が隣家を損壊したり、通行人を巻き込んだりするような事故が起きると、家主は高額の損害賠償金を請求される可能性があります。
このように、空き家は単に個人の所有物という範疇をこえて社会問題へ発展します。
ここまで空き家が抱える問題点についてお伝えしました。
一刻も早く処分すべきと思われる空き家ですが、家主が処分に至らない理由は何でしょうか。次の項へつづきます。
空き家を処分できない理由
家主が積極的に処分しない理由は家庭によって異なりますが、主な三つの理由がこちらです。
1.現時点で困っていない
近隣に迷惑をかけないよう管理を行い、税金さえ支払えば誰に何をいわれることもありません。「いつかは何とかしないと」と思いながら先送りにしてしまうパターンです。
2.親族間で意見がまとまらない
所有者が亡くなり遺言書がないような場合、家の売却・処分には相続人全員の同意が必要です。この協議で納得できない親族がいると成立せず、家庭裁判所の遺産分割調停に進むことも。
3.所有者に判断能力がない
所有者に認知機能の低下がみられると法律に基づく契約行為ができません。その場合は家庭裁判所に申し立てをし、成年後見制度を利用することになります。
「貸せない・売れない・壊せない」家主の三重苦
更地にすると固定資産税が数倍に
売却に向けて更地にしようとしても、家屋の解体には数百万単位のまとまった費用がかかります。更地にしても希望額で売れなければ解体費用の回収もできません。
また、更地にすることで固定資産税が数倍に上昇し経済的な負担が重くなってしまいます。
貸すため・売るための安易なリフォームは禁物
「リフォームした方が売りやすくなるよ」とリフォームを推奨する声もあります。しかし、設備投資だけで百万単位の費用になることもざらです。それに施工後も借り手・買い手が見つかる保証はどこにもありません。
このように、家主は「貸せない・売れない・壊せない」という、何をするにもお金がかかる三重苦を抱え、まさに八方ふさがりの状態になっています。
空き家相談の注意点
「空き家の利活用は不動産屋へ!」と誰もが思いがちですが、残念ながら不動産屋が積極的に取り扱いたい物件は短期的に借り手・買い手が付きそうな優良物件。
一方、人気のないエリアや老朽化によって資産価値が著しく低い物件の場合、相談すら乗ってもらえないことがあります。
また、いきなりリフォーム業者に相談することも得策ではありません。
リフォーム業者も商売ですから、家主をその気にさせる営業トークでリフォームを推奨するでしょう。「ここも直した方がいい。今はこういうタイプが人気です」と、あれこれ提案され、想定以上の見積もり額になることもあります。
行政相談だけでは解決しない?
各自治体に設置されている「住宅課」や「まちづくり課」といった窓口では、空き家に関する相談を受け付けています。家屋の解体費用の一部補助を行っている自治体もあります。
ここでは職員が具体的な解決法を提示するというよりも、空き家の管理・売却、相続等を相談できる専門業者の紹介や、情報提供に終始することもあるようです。
また、自治体が運営する物件仲介サービス「空き家バンク」の登録も可能です。申し込み後2年間は無料掲載できるので検討してみてもよいかもしれません。
ただし空き家バンクも「居住希望者のニーズにマッチした物件が少ない」「問い合わせの数が少ない」といった課題を抱えており、割安感のある価格でないと借り手・買い手がつくのは難しいかもしれません。
空き家活用の専門事業者に相談する
ここまで空き家が抱える諸問題についてお伝えしてきましたが、決して「すべての空き家=問題」とは限りません。なぜなら、世の中には「住宅弱者」といわれ、空き家を必要としている人もいるのです。
高齢者やシングルマザー、生活保護受給者、外国人などの住宅弱者は、孤独死や家賃滞納リスクがあると判断され、入居を拒否されることも珍しくありません。
そこで、放置された空き家を修繕して、賃貸物件として再生し、住宅弱者に安価で貸し出す専門事業者が登場し、社会貢献事業(SDGs)として注目を集めています。
住宅弱者は安い家賃の家を求めるため、空き家を安く購入し、安く修繕できる専門事業者の力が不可欠なのです。このような取り組みは、通常のリフォーム屋や不動産屋では対応できません。
なお、家主が空き家を売却せずに家賃を得る方法があります。専門事業者が修繕費用を負担し、得られる家賃を家主と分配することで、家主は一切の費用負担なしで空き家を利活用することができます。
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スクラップアンドビルドの時代が終わり、「古いものを活かす」ストック型社会へと移行しつつあります。家主の負担を最小限に抑え、空き家を再生する取り組みは今後広がりを見せると予想されます。
貸したくても貸せない、借りたくても借りられないとお悩みの方は、空き家活用の専門事業者へぜひ相談してみてください。
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