- 質問
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要介護1の母は現在一人暮らしです。足腰がわるく介護保険の訪問介護を利用していますが、1回30分程度で週2回しか利用することができず不足している様子。
調べたら介護保険を使わない高齢者向けの「保険外サービス」というものがあることを知りました。こういったサービスを併用することはできますか?
よくある家事代行サービスとの違いや価格について教えてください。
- 回答
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「介護保険外サービス」とは、介護保険を使わずに誰でも利用することが出来る介護サービスの総称です。高齢者に特化した家事代行や安否確認サービス、要介護者の旅行に同行するトラベルヘルパーなどサービス内容は多岐に渡ります。
介護保険は介護度によって利用できるサービス内容が決められており、個人によってその範囲内ではサービス内容が不足する場合があります。そのため、介護保険を使わない自費の介護サービスとして介護保険外サービスが注目されています。
今回は特にニーズの高い「保険外の家事代行」について、その料金と特徴、利用時の注意点や事業者の選び方について解説します。ぜひ参考にしてみてください。
- 【目次】
公的介護保険サービスの不足感
介護保険サービスは、平たく言えば「自立した生活をするうえで必要な最低限のサービス」といえます。例えば、訪問介護の生活援助に「調理、洗濯、掃除」といったサービスがありますが、これはご本人にのみ提供できるサービスであり、同居する家族の分まで提供することはできません。
また、質問者さまのように一回30分程度のサービスを週に1~2回という頻度では、どうしても不足感が否めないでしょう。
そこでうまく活用したいのが介護保険外サービス(以下、保険外サービス)です。利用時間・頻度・サービス内容など、保険制度で縛られない柔軟な使い方ができる点が特徴です。
おぼえておきたい!保険外サービス3つの特徴
保険外サービスが、介護保険サービスと異なる点が大きく3つあります。
①サービスの提供時間
介護保険の訪問介護サービスは一回当たりの利用時間等が定められ、時間内にサービスだけを提供して帰ることも少なくありません。これに対し、保険外サービスを提供する多くの事業者では一回1~2時間というゆとりをもった時間設定となっています。
そのため、時間に追われることなく、じっくりとコミュニケーションを交わしながら作業に当たることができます。
②サービスの内容
例えば通院の付き添いであれば、往復の移動時間、院内の待ち時間、診察、会計などを考慮すると、一回で2~3時間かかることも珍しくありません。
通院は長時間となり、また待ち時間等により時間が前後する事があるため、介護保険では利用限度を超えてしまう事が容易に予測されるため、おおよその場合はケアプラン(介護サービス計画)に含んでもらうことが出来ません。
通院などの他にお墓参り、冠婚葬祭への参列など私的な外出の付き添いは訪問介護のサービス対象外となりますが、保険外サービスであればそうした制限はなく自由にご利用いただけます。
③サービスの対象者
介護保険サービスの対象者はあくまで認定された本人のみ。同居する家族が高齢であったとしてもサービスを提供することはできません。例えば、「家族の食事もつくってほしい」「家族の部屋の掃除もしてほしい」といった希望にも柔軟に対応できる点が保険外サービスの特徴の一つといえるでしょう。
保険外サービス利用者の半数は要介護者
以前、保険外サービスを提供する大手事業者を取材したときの内容に基づきお伝えします。
顧客の半数は、すでに要介護認定を受けている80代以上の高齢者で、なかでも要介護1~2の割合が多いようでした。「介護保険サービスだけでは不足している」と感じる要介護者が、週に1~2回の頻度で保険外サービスを利用していました。
また、自立生活を望む高齢者の保険外サービス利用のきっかけとしては、お盆や正月などに帰省した子どもが親の生活に不安を感じ、利用を開始することが多いようです。保険外サービスの利用は高齢者本人からの依頼よりも、子供がネット検索してサービス利用に繋がる機会が多くあるようです。
近年、保険外サービスはケアプランを作成するケアマネジャーへの理解も進み、利用者の介護保険サービスの内容で不足している部分を保険外サービスで補おう、と試みるケースも増えているようです。
費用相場とよく利用されているサービス内容
保険外サービスは、文字通り介護保険を使わない自費利用となり、その価格は地域性によっても変動します。一時間あたりの価格をまとめてみました。
1時間あたりの料金相場 大都市圏(東京・大阪) 3,000円~6,000円 政令指定都市 2,700円~5,000円 それ以外のエリア 2,200円~4,500円 ※当社調べ |
最も多い利用用途は家事全般
こちらも前述の事業者にヒヤリングした内容です。最も多く利用されているのは「家事(掃除、洗濯、片付け)」。次いで「通院の付き添い」「買い物の同行・代行」、さらに「料理」という順序でした。
介護保険の訪問介護では、要介護者が家族と同居している場合、生活援助サービスが使えないこともあるため、保険外サービスとしてニーズが顕在化しているのかもしれません。
また利用者のなかには、日中は訪問介護を使い、夜間や土日祝日に保険外サービスを使う方もいらっしゃいます。地域によっては「夜間対応している訪問介護サービスが少ない」、「土日祝はヘルパーが少なく思うように使えない」という実情もあるので、そこを補うかたちで保険外サービスのニーズがあるようです。
夜間の見守りの多くは、トイレの付き添いや介助をおこないます。認知症で歩き回り(徘徊)のある方については、外出の抑止といった観点で見守りをする場合もあるようです。もちろんただ見守るのではなく、安心してお休みいただけるようなコミュニケーションを心がけています。
一般的な家事代行サービスとの違い
近年、共働き世帯の増加に伴い、一般家庭における家事代行サービスの需要が高まっています。サービススタッフが派遣され、料理や掃除などの家事全般に対応する点は共通していますが、シニア向けの保険外サービスとの違いは何でしょうか。
スタッフは高齢者に特化した専門知識を有する
一般的な家事代行サービスは、時間内にキレイにする、片付ける、料理するといった「コト」に特化したサービスといえるでしょう。一方、保険外サービス業者はコトの提供はもちろんですが、利用者とのコミュニケーションを重要視しています。
利用者の多くは80代以上の高齢者。言葉遣いやマナーを身に付けることはもちろん、高齢者介護の知識も有するスタッフがサービスを提供します。利用者の体調や気分などを考慮してサービス提供に入るので、もしも気分が落ち込んでいるようであればコミュニケーションの時間を長くとったり、ときには利用者と一緒に楽しみながら家事を行ったりすることもあります。
「コト」だけでなく「ヒト」に重きを置いている点が、一般的な家事代行との違いといえるでしょう。そのため、高齢者の心理や身体について正しく理解しサービス提供している事業者を選ぶことが大切です。
事業者選びの注意点
保険外サービスを提供する事業者はまだ多くはありません。比較対象が少ないなか、どのように事業者を選定すればいいのでしょうか。
①事業者の選定方法
まず探し方ですが、ブラウザから「●●市 介護保険外 家事代行」などの文言で検索すると複数の事業者がヒットすると思います。それぞれ、サービス内容や価格が記載されているので、依頼したい内容や価格を確認して2~3社ほどに絞りましょう。
次に各社へ問い合わせると、担当者がご自宅へ訪問する「無料打合せ」を行います。当日は利用者本人や家族とお話をして、希望するお手伝いについて伺います。それを踏まえて担当者がプランを作成し、提案内容に問題がなければ契約・利用開始という流れになります。
②利用者に興味を持ちヒヤリングしているか
事業者選びのポイントとなるのが「訪問による打合せ」です。お客様満足度の高い事業者では、これまでどのようなお仕事をされていて、どんな趣味をおもちか、これからしてみたいこと、興味関心のあることなど、利用者に興味を持ちその背景をしっかりヒヤリングしています。
例えば、自宅にこもりがちな女性でも、素敵な洋服を着たり、メイクをすることで、「外出したい」「誰かに合いたい」という気持ちが高まることもあります。いくら掃除や洗濯のお手伝いをしたところで、利用者本人の気持ちがついてこないと本当の意味でQOL(生活の質)向上は望めません。
そのため、利用者に興味を持ったヒヤリングと、それに基づいたプランを提案してくれるかどうかはチェックポイントといえます。もちろん、「一緒に洋服選びを手伝ってほしい」といった要望も相談できますよ。
③アフターフォロー
事業者選びのポイントの一つに「アフターフォローの手厚さ」があります。通常のサービスとは別に月に一度担当者が訪問して利用者の様子や身体の変化等を確認し、家族にフィードバックをしてくれる事業者もあります。
その際に、「週に一回くらい散歩の時間も入れましょうか」など、プロの視点で提案してくれることも。アフターフォローも含めてしっかり対応してくれる安心できる事業者を選ぶとよいでしょう。