- 質問
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老人ホームのスタッフの入れ替わりによって、提供される介護サービスの質が低下するのではないかと心配です。人材難と聞いているので大丈夫なのでしょうか?
老人ホームのスタッフの実情について教えてください。
- 回答
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スタッフが「結婚・出産」、「収入面で不満」、「体調を崩した」など、様々な理由で退職し、頻繁に入れ替わることもあります。入居者はケアマネジャーなども含めて周りの方に変化があるとそれをストレスに感じることもあるのでスタッフとの相性がとても大切です。だからこそ、できるだけ馴染みのスタッフに長くみてもらいたいと思いますよね。
ここではケアが滞らない体制づくりや、離職率が低い老人ホームの特長などを解説します。今後の老人ホーム選びの参考としてください。
- 【目次】
1.退職理由の多くは人間関係などの雇用管理が原因
老人ホームに限らず、介護業界はどこも人手不足ゆえに業務がハードになりがちで、他の業界に比べて離職率が高くなっています。しかし、実際に介護の仕事を辞めた理由としては、職場の人間関係や雇用者側の体制への不満など、雇用管理を原因とする退職理由が最も多いという結果がみられます。
【介護福祉士の主な退職理由】
・法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった
・職場の人間関係に問題があった
・収入が少なかった
・心身の不調、高齢
・労働時間・休日・勤務体制が合わなかった
・結婚・出産・育児
(出典:厚生労働省 「平成27年 介護人材の確保について」)
介護の仕事にやりがいがあり、職場でも意欲的に取り組める制度が充実していれば、スタッフの定着率も高まり、サービスの質も向上するでしょう。それぞれの老人ホームが持つ理念に従って、統一された介護が提供できていれば、サービスの質は一定以上に保つことが可能であると思います。
それでは、以上のことをふまえてスタッフの実情を知るために、老人ホームの管理体制をみていきましょう。
2.有料老人ホームでの介護体制「3:1」とは
医療や介護という視点にたったとき、実際の介護現場ではどういう管理体制ができているのでしょうか?
例えば、介護付き有料老人ホームの場合、介護職員の人員体制は「入居者3名に対して介護職員を1名配置する」という介護保険法で定められた人員基準があります。これを「3:1」といい、パンフレットや重要事項説明書に記載されています。
また、手厚い介護をうたっている施設は、「2:1」や「1.5:1」という人員配置をしています。この場合、人員体制が手厚い分、追加費用として「上乗せ介護費」を支払わなければならないホームもあります。事前に確認しておきましょう。
ケアが滞らない体制づくり
医療・介護の現場は常に複数人で構成され、スタッフが入れ替わってもケアが滞らない体制を取っています。
介護スタッフの一日の勤務体制は「早番、日勤、遅番、夜勤」にわかれ、一日の中でも入浴や食事の時間など、人手を多く必要とする時間帯は多くのスタッフを配置し、夜間は少人数で対応することがほとんどです。また、日常的な健康管理や服薬管理などは看護師が行います。
どの時間帯もスタッフが複数おり、交替しても入居者のケアプラン(介護サービス計画書)に沿ってサービスが行われる体制をとっています。
>Q&A老人ホームなどで見る人員配置基準「3:1」の意味は?
3.人員体制の手厚さは、企業規模に比例しない
一般的に大手企業が運営する老人ホームの方が人員は整っていると思われがちです。しかし、介護付き有料老人ホームの場合、介護保険法の人員基準(3:1以上)を守る必要があり、大手や中小といった企業規模のみで人員が手厚いという判断材料にはなりません。
実際にどういったサービスが受けられ、介護の質がきちんと担保されているのかが最も重要です。ホーム側にはその点を事前に確認する必要があります。
スタッフの人数が多ければ手厚い介護が期待できるでしょう。逆に、スタッフにやる気がありより質の高いサービスを目指したいのだけれど、「人手不足で思うようにできない」という声も業界ではよく聞かれます。
離職率が低い老人ホームの特長とは
下記のように、スタッフが働きやすい取り組みをしている老人ホームでは、人員体制も安定し、離職率の低い老人ホームと言えるでしょう。
・定期研修やメンター制度など、スタッフ教育に力を入れている。
・スキルに応じた正当な評価制度がある。
・スタッフ間でスムーズな意見交換がされ、管理者にも意見が届く風通しの良い職場環境である。
・本部の指示だけでなく、現場が主体となり入居者に喜んでいただける取り組みを実施している。
・現場に必要な人数を満たしており、スタッフも時間に追われずゆとりを持ってサービスを提供できる。
4.「入居者担当ヘルパー制度」のある老人ホーム
入居者に対し、いつも決まったスタッフがケアを担当する「担当ヘルパー制度」を導入している老人ホームもあります。入居者の身体状態や性格などを把握した専任のスタッフがいることで、入居者とのコミュニケーションも円滑となり、入居者の些細な要求にも迅速に対応できるでしょう。
また、介護専任のスタッフが確保されているかどうかもポイントです。居室の掃除や病院への送迎などは別のスタッフが担当し、介護スタッフは介護に専念することで質の高いサービスを提供できます。こういった点は老人ホームごとに異なりますので、検討する際は確認しておきましょう。
まとめ.スタッフが入れ替わっても、ケアの質が低下しない体制であることが重要
スタッフが頻繁に替わるかどうかは老人ホームによって異なります。ホームの理念がしっかりしていて、それをスタッフ全員が共有し、それぞれの入居者に合ったケアがスタッフ間で統一されているか。スタッフ間で意見が言いやすい環境か、スムーズな情報交換がされているか、などがポイントです。
しかし、これらはインターネットやパンフレットの情報だけでは分かりません。
「スタッフ同士でどのような情報交換がされていますか?」
「新人スタッフにはどういった教育をされていますか?」
「スタッフが替わった時、入居者にはどのように対応していますか?」
といった具体的な質問を、老人ホームの管理者に尋ねてみましょう。スタッフのホスピタリティ(接遇)を知る為にも、実際にホームを見学し雰囲気を肌で感じることが大切です。気になる老人ホームがあれば実際に2~3ヶ所見学し、条件に合うホームを探していきましょう。