- 質問
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年金生活で一人暮らしの母親に毎月6万円の仕送りをしています。その母が脳卒中で入院することになりました。退院後は介護サービスを使う可能性が高く、仕送りの金額を増やそうか悩んでいます。
仕送りも一定金額を超えたら贈与税の対象になりますか?
節税方法などあれば教えてください。
- 回答
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仕送りしているお金が贈与にあたるかは、どのような使途なのかで決まります。
これが生活に必要なお金であれば贈与にあたりません。今後、介護サービスを利用することになった場合でも、介護サービスを受けるために必要なお金ならば、増額しても贈与にはあたりません。
今回は、仕送りと贈与の違い、仕送りによる節税方法などついて解説します。正しく理解し、仕送りに関する不安解消に繋がればと思います。
仕送りと贈与の違い
仕送りとは一般的に、別居する家族に生活や教育に必要なお金を送金することです。
そして贈与とは、民法上では「財産をあげる人ともらう人が当事者となり、ある一方の当事者が財産を無償で与える意思を示し、もらう側も受け取りを承諾すること」をいいます。
このように財産の移転が行われる際に税金が発生し、贈与税が課されるのです。
質問者さんのように、親への仕送りも子の財産が親に移転されることとなります。
しかし、相続税法では「財産の移転がされても贈与税がかからない場合」として、以下のように定義しています。
「夫婦や親子、兄弟姉妹など、扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で通常必要と認められるもの」(国税庁HPより引用)
ここでいう生活費とは、質問者さまのお母さまに必要な日常生活の費用を指します。
これは一つの例ですが、仮にお母さまが要介護状態となり介護施設で暮らすことになった場合、施設の入居金などのまとまった資金も生活に必要な費用であるため、贈与にはあたりません。
贈与となるものは、預金目的であったり、株式や不動産などを購入したりする資金に充てられているものです。たとえ名目上は「生活費」として送金しても、使用用途が違えば贈与税の対象となります。
年間110万円以内の贈与なら非課税で申告も不要
贈与税には基礎控除があります。基礎控除額は110万円となっており、年間の贈与額に対して控除され、残った金額に対して贈与税が課されます。
つまり、年間110万円以内の贈与に関しては、その使い道に関係なく非課税となり、申告も不要です。
生活費としての仕送りは贈与税の対象外
前述のように、生活費として必要な仕送りに贈与税はかからないため、基礎控除の110万円は関係ありません。
また、生活費として認められている金額に上限はありません。国税庁では、生活費として認められるのは、仕送りを受ける親にかかる生活費と仕送りをする子供の収入や資産、その他のすべての事情を併せ持って、常識的に認められる範囲の金額と定義しています。
これらが認められているのは、扶養義務者からの仕送りとなっており、相続税法では、「三親等内の親族で生計を一にする者」とされています。
そのため、離れて暮らしている親でも定期的に仕送りをしていれば「生計を一にしている」とみなされます。
生活費としての仕送りであれば非課税なので、贈与税の確定申告も不要となります。
別居の親を扶養すれば仕送りする人も節税に
親を扶養家族にすることで所得控除が増え、課税対象となる所得が減るため節税に繋がります。
質問者さんのお母さんは、病院に入院したとのことですが、親の医療費を子供が支払ったとき、仕送りをしているなど生計を一にしている場合は、子供の医療費控除にできます。
また、仮に親が介護を受けている場合、病院にかからなくても医療費控除の対象になるものがあります。例えば、特別養護老人ホーム(※1)に入居した場合は、施設の利用料(※2)として支払った額の2分の1に相当する金額が医療費控除の対象となります。
このように、施設利用料を子供が負担している場合は、子供の医療費控除の対象となるので覚えておきましょう。
※1.特養:介護保険で要介護3~5に認定された方を対象とした介護保険施設
※2.介護サービス費、食費及び居住費のこと
扶養親族となる4つの要件
税法上、扶養親族になる要件は、以下の4つをすべて満たしている必要があります。
また、その年の12月31日時点で年齢が16歳以上の人が扶養控除対象者となります。
1.配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます)
配偶者は税法上、扶養親族ではなく配偶者として扱われ、配偶者控除や配偶者特別控除の対象者となる。
2.納税者と生計を一にしていること
「生計を一にする」とは同居していなくても、同じお財布から生活費を出していれば該当する。
3.年間の合計所得金額が38万円以下であること
4.青色申告者の事業専従者として、その年に一度も給与の支払を受けていない
または白色申告者の事業専従者でないこと。
扶養により受けられる控除額
老人扶養親族(※)の場合に控除が受けられ、控除額は以下の通りとなります。
・同居老親等以外のもの…48万円
・同居老親等…58万円
※老人扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
子供が行う手続き
親を扶養にするために必要な子供の手続きは、まず勤務先へ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。
その他にも下記のような資料の提出が必要な場合があります。会社によって揃えなければならない書類が異なり、取得するのに時間がかかる場合があるので早めに確認しておきましょう。
・(非)課税証明書:親の収入確認のため ・住民票あるいは戸籍抄(謄)本:親子の続柄を証明するため ・必要に応じて預金通帳のコピー等:仕送り(振込)の事実を客観的に証明るためなどの添付書類が必要となります。 |
税金は、1月1日~12月31日が基準となるため、年末調整に間に合えば、その1年間扶養家族として認められます。期日に注意して早めに手続きをしましょう。
メリットだけじゃない?親が扶養に入る3つのデメリット
1.介護保険料負担が増えることがある
65歳以上の親が扶養に入ること、世帯収入によっては介護保険料が増えることがあります。
2.親の支払う介護サービス利用料が増えることがある
ご家族のなかに高所得の方や住民税が課税されている方がいると、扶養に入った親が支払う介護サービスの利用料負担額が増える可能性があります。
3.老人ホーム等での自己負担額が増える
扶養に入ることで、介護施設に入所した時の食費や居住費の負担額が増えます。
まとめ
1.仕送りが生活費として使われているのであれば贈与にはあたらず、贈与税もかかりません。しかし、使用用途が違う場合は贈与税の対象となります。
2.離れて暮らす親を扶養家族にすることで税金のかかる所得が減り、所得税の節税につながります。年末調整に間に合うように手続きすると、その1年間(1月1日~12月31日)は扶養家族として認定されます。
3.親が扶養に入るとデメリットもあります。
税金の負担は軽くなりますが、仕送り金額が増えることになります。
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質問者さんはすでに毎月6万円も援助されています。その金銭負担がさらに重くなると質問者さんの生活にも影響が出てくるかもしれません。ほかに頼れる兄弟や親族がいたら分担できないか相談してみましょう。
また、離れて暮らしているのですから、地域の介護サービスを最大限活用し、ケアマネジャーとともに、親を支える体制を作りましょう。
イラスト:安里 南美