入浴介助の手順とは?実施時の観察項目や服装、留意点や目的まで

入浴介助は自力で入浴ができない方に対して、介護者やプロの介護スタッフがサポートを行うことです。体調面や転倒などに注意を払いながら、要介護者の心身の健康を保ちます。

ここでは、実施前の観察項目や実際の手順、留意点などにも触れているので、ぜひ参考にしてください。

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入浴介助とは?

入浴介助とは、要介護者など自力での入浴が困難な人に対して入浴を手伝うことです。要介護者の清潔や健康を保つなど重要な役割を担います。入浴介助には湯船につかる方法やシャワー浴、蒸しタオル等で全身を拭きとる清拭などがあるので、最適なものを選択しましょう。

ただし、十分な知識やスキルがない状態で行うと事故につながる危険もあります。転倒のリスクや、老老介護のため不安が残るような場合は、プロに入浴介助を依頼しましょう。介護サービスの「訪問介護」や「訪問入浴」を利用することでスムーズな入浴が可能です。

入浴に対応したサービスの概要や選び方は下記の記事で解説しています。

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入浴介助の目的

身体の清潔を保つ
リラックス
異常の早期発見

入浴介助は清潔を保つだけでなく、心身の健康維持にも一役買っています。本来の目的を理解して、効果的な介助を行いましょう。

身体の清潔を保つ

入浴介助の最大の目的は、身体を綺麗に保つことです。入浴をしないと体臭が気になったり、身体の衛生状態が悪化したりする要因に。また、傷口や尿道から細菌が入ることを防ぐ役割もあるため健康維持につながります。

リラックス

身体を温めると副交感神経が活性化されてリラックスすることができます。血行が促進されるので、睡眠の質向上や筋肉の疲労回復の効果も得られます。

異常の早期発見

入浴介助をすると、身体の傷や内出血など早い段階でチェックできます。早期発見することで、大事に至る前に原因究明や対策につながります。

入浴介助前の観察項目

体調面の観察項目
身体面の観察項目

本人の状態によっては入浴で容態が悪化する危険性もあるため、入浴前の観察は必須です。もしも異常が見られる場合は入浴を控えましょう。

体調面の観察項目

  • 発熱していないか
  • 血圧が高すぎないか
  • 脈拍数に異常はないか
  • 呼吸が苦しそうではないか
  • 体調不良を自覚していないか
  • 食欲の低下がないか
  • その他気になるところがないか

入浴は血圧が変化したり、心臓に負担がかかったりするため体調面の確認は重要です。体調に違和感があるときは無理せず入浴をやめることが賢明。蒸したタオルで身体を拭く(清拭)など、お湯に浸かる以外の方法で清潔を保ちましょう。

身体面の観察項目

  • 乾燥していないか
  • 傷がないか
  • 湿疹がないか
  • 内出血はしていないか
  • 皮膚の色がおかしいところはないか

皮膚や身体の状態によっては入浴を控えたほうが良い場合もあるため、入浴前に必ず観察しましょう。高齢者は腕や脚をぶつけたり、骨が出っ張っている箇所に床ずれができたりとケガをしやすいもの。異常がある場合は入浴を避け、医療機関に相談しましょう。

入浴介助時の服装

エプロン
サンダル
ズボン
手袋

適切な服装で入浴介助を行うことで、介護者の安全や衛生面も守ることができます。どのようなアイテムがおすすめかも解説します。

エプロン

入浴介助時に濡れたり汚れたりしないように、介護者はエプロンの着用がおすすめ。撥水性が高いものを選ぶと良いでしょう。

サンダル

滑り止め加工がされたサンダルを履くことで、介護者の転倒リスクも減らすことができます。足を濡らさないように長靴を履くのもおすすめです。

ズボン

入浴介助はしゃがんだり身体を支えたりするため、動きやすいズボンを履きましょう。半ズボンであれば裾を捲る手間も省けます。

手袋

陰部や足先の洗浄などに備えて手袋をしましょう。長さのある手袋なら水の侵入を防ぐことができます。ショッピングセンターの介護用品コーナーには、入浴介助用の専用手袋も販売されています。

入浴介助に必要な物

バスタオル
着替え
ボディーソープやシャンプー
スポンジやボディタオル
シャワー用の椅子
転落防止マット
保湿剤や軟膏

上記の介助用品があると入浴介助がスムーズになり、双方の負担軽減につながります。可能な限り揃えて入浴介助を行うとよいでしょう。

バスタオル

身体を素早く拭くためにも、大きめで吸水性が高いバスタオルが望ましいもの。短時間で拭きとることで湯冷めも防止します。

着替え

入浴後の着替えを事前に用意しておくと、脱衣所でも慌てません。下着や部屋着、必要に応じておむつなども用意しましょう。

ボディーソープやシャンプー

泡タイプのボディーソープやシャンプーであれば、泡立てる時間を短縮できます。敏感肌や乾燥肌の場合は、刺激の少ないものを選びましょう。

スポンジやボディタオル

高齢者の皮膚は敏感なため、柔らかい素材のものを用意します。スポンジなどを使用せず手で洗う方法もありますが、手で洗う際は手袋を着用しましょう。

シャワー用の椅子

転倒防止にも役立つ、背もたれ付きの椅子がおすすめです。立ち上がりやすいように、座面が高いものを選ぶと良いでしょう。

転倒防止マット

浴室の床は滑りやすいため、転倒防止マットを敷くと安心です。浴槽内や浴室の床上に敷くとよいでしょう。

保湿剤や軟膏

保湿剤や軟膏は清潔な肌に塗る必要があるため入浴後が最適です。高齢者の肌は乾燥も早いので、すぐに塗布できるように用意しましょう。

入浴介助の流れ

入浴前
入浴中
入浴後

流れをあらかじめ把握しておけばスムーズな入浴介助が可能。シーンごとに分けて手順を解説します。

入浴前

1.体調のチェック
2.浴室と脱衣所を温めておく
3.浴槽にお湯をはる
4.必要な物を用意する
5.トイレを済ませてもらう

入浴介助時は、自分が入浴するよりも準備や確認項目が多くなります。

入浴は血圧の変動を起こしやすいため体調面の確認は必須。また、急激な寒暖差はヒートショックを引き起こします。浴室や脱衣所を温めることで対策しましょう。本人も意図せず急に尿意がくる場合もあるため、事前にトイレを済ませてもらうと安心です。

入浴中

1.椅子や床などにお湯をかけて温める
4.足元からゆっくりとお湯をかけていく
5.全身を洗い、泡が残らないようにしっかり流す
6.手すりを使うか介助者が支えながら浴槽に浸かる
7.温まったら足元に気をつけながら浴槽を出る

お湯の温度確認は、皮膚が薄く感覚が敏感な腕の内側などで行うのがおすすめ。高齢者の肌は敏感なので、介護者が大丈夫だと感じても熱い場合があります。急激な温度変化を防ぐためにも、足元からかけ湯を行います。

また、皮膚に泡が残ると皮膚トラブルの原因になるため、十分にすすぎましょう。

入浴後

1.タオルで髪や身体を拭く
2.椅子に座り保湿剤や軟膏を塗る
3.座ったまま着替える
4.水分の摂取
5.体調をチェックする

立った状態で着替えると転倒のリスクがあるため、座ったまま着替えるのがベターです。おむつや下着、ズボンを履くときはすべてに脚を通してから立ち上がりましょう。何度も立ち上がらずに済むので負担が軽減します。

脱水症状を避けるためにも、入浴後の水分摂取も欠かせません。

洗う順番

1.足元
2.
3.上半身
4.下半身

上記の順番で洗うと身体への負担が少なく、入浴もスムーズになります。本人の希望がある場合などは、必要に応じて一部順番が前後しても問題ありません。

足元

心臓への負担を減らすために、足元からお湯をかけます。熱いお湯をいきなり身体にかけると、血圧が急激に変動してヒートショックなどのリスクが高まります。

髪の毛は、お湯で予洗いした後に泡立てたシャンプーで洗います。お湯で流すときは耳を塞ぎましょう。その際はシャンプーハットを使うのもおすすめです。シャンプーのすすぎ残しは肌荒れの原因になるため、しっかり洗い流します。

上半身

顔や首など、頭に近い部分から順番に洗いましょう。脇や肘の内側、乳房の下などは汚れが溜まりやすいので、念入りに洗います。上半身は比較的洗いやすいため、身体機能や認知機能を維持する目的でも、できるだけ本人に洗ってもらうのがおすすめです。

下半身

足先、ふくらはぎ、ふともも、お尻の順番で洗います。陰部や肛門はできるだけ本人が洗うようにしましょう。太ももの裏など1人で洗いにくい部分は、必要に応じて手伝います。股や膝裏など、汚れが溜まりやすい部分は丁寧に洗ってください。

入浴介助時の留意点

声かけを徹底する
危険予知を徹底する
プライバシーに配慮する
急激な温度変化を避ける
長時間の入浴は避ける
体調が良くないときは無理をしない

上記の留意点を押さえることで、ケガなど事故のリスクを軽減できます。健康面はもちろん、プライバシーや気持ちにも配慮して入浴介助を行いましょう。

関連記事【理学療法士が解説】入浴介助のポイント

声かけを徹底する

入浴介助の際は「お湯は熱くない?」「今から身体を流すよ」などの声かけを徹底しましょう。声かけをせずに急にお湯をかけたり身体に触ったりすると、本人も驚いてしまいます。できるだけ気持ちに寄り添って丁寧に接しましょう。

危険予知を徹底する

つまづきそうな物が床にないか、足が滑らないかなど危険がないように配慮しましょう。床には極力ものを置かないようにして、転倒防止マットを敷きます。浴室から出た後は、足裏までしっかりと水分を拭き取ります。

プライバシーに配慮する

家族であっても、裸を見られることに抵抗を感じる方もいます。プライバシーには最大限配慮しましょう。入浴拒否をされた場合の対応方法については、以下で解説しているので参考にしてください。

関連記事入浴拒否

急激な温度変化を避ける

急激な温度変化があるとヒートショックの危険があります。ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が変動し心臓や血管に異常が起こること。とくに冬場はリスクが高いため、浴室や脱衣所を温めるなどの対策をしましょう。

関連記事未然に防げる。ヒートショックの仕組みと予防法

長時間の入浴は避ける

長時間の入浴はのぼせたり、脱水症状を引き起こしたりする原因になります。のぼせてめまいが起こることで、足元がふらついて転倒することも。長時間の入浴は避け、入浴前後には水分補給を行いましょう。

体調が良くないときは無理をしない

入浴は想像以上に体力を消耗するため、体調が優れないときは控えましょう。入浴できない場合は蒸しタオルで身体を拭くなどのケアをします。

全身浴が難しい場合はシャワー浴という方法も

全身浴が難しい場合はシャワー浴という方法もあります。特に下記のような方はシャワー浴がおすすめ。シャワー浴の注意点も入浴介助時と同様です。温まってもらうためにも、入浴時よりも少し長めにシャワーを浴びてもらうことを意識しましょう。

シャワー浴が適している方の特徴

  • 循環器疾患で心臓に負担をかけられない
  • 呼吸器疾患で息切れしやすい
  • 麻痺で浴槽をまたげない
  • 皮膚疾患がある

まとめ:入浴介助の負担が大きい場合はサービスや施設利用もおすすめ

高齢者や要介護者など、自力での入浴が困難な人をサポートする入浴介助。心身の健康を保つためにも入浴は大きな役割を担っています。しかし、正しい手順や留意点を押さえないと転倒など思わぬトラブルにつながることも。不安が残る場合は、訪問介護や訪問入浴サービス、施設入居なども検討しましょう。

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イラスト:安里 南美

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