ナーシングホームとは?老人ホームとの違いや費用、施設基準など
ナーシングホームとは本来欧米における呼称で、日本での明確な定義はありませんが、有料老人ホームに類する施設とされています。施設によって看護師が24時間常駐するなど医療面での手厚いサポートが特徴で、今後ますます需要が増えると考えられています。
ナーシングホームとは?
ナーシングホームとは、介護サービスだけでなく医療的な処置やリハビリ、看取りなどを行う老人ホームのことです。脳血管疾患の後遺症や重度の障害により自宅で暮らすことが困難な方など、医療的なサポートの必要な方が主な入居対象となります。
元々ナーシングホームという名前は欧米での呼称で、日本における明確な定義はありませんが、医療体制の整った民間運営の「有料老人ホーム」に相当します。
ナーシングホームの主な入居対象者
- 退院後に自宅で生活するのが難しい方
- 重度の障害がある方(脳血管疾患などの後遺症、神経性疾患)
- 介護保険の対象外の方
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ナーシングホームが必要になった背景
引用:総務省統計局「1.高齢者の人口」
ナーシングホームが必要になった大きな要因として、高齢化が挙げられます。日本は超高齢社会と呼ばれ、総人口に対する65歳以上の割合は29.1%(2022年9月15日現在推計)と約3割。高齢者の割合が増加する一方、医療現場の病床数や人手不足は今後も深刻化が進む見込みです。
また、少子化や核家族化により、在宅での介護や看取りは負担が大きいことが現状です。病院や自宅以外での看取り需要が急増したことで、ナーシングホームが必要になったと考えられています。
ナーシングホームと老人ホームの違い
特徴 | |
---|---|
ナーシングホーム |
・医療依存度の高い方が対象 |
老人ホーム |
・ナーシングホームほど入居者の医療依存度が高くない |
ナーシングホームと一般的な老人ホームの大きな違いには、医療体制が挙げられます。
多くのナーシングホームは看護師が24時間常駐したり、近隣の訪問看護サービスを利用できたりと医療体制が充実しています。提携医療機関の医師による訪問診療や往診なども受けられます。一方老人ホームでは、ナーシングホームほどの医療サポートを受けられるところは多くありません。
ナーシングホームの施設基準
厳密に言えば、ナーシングホーム自体日本における定義がないため、施設基準もありません。明確な施設基準はないものの、医療ケアの体制が整っていることはナーシングホームの共通点と言えるでしょう。
また日本では多くの場合、ナーシングホーム=有料老人ホームと考えられています。有料老人ホームには明確な施設基準があり、詳細は下記の記事で解説しております。ぜひ参考にしてください。
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ナーシングホームのケア体制
医療体制と介護体制を両立しているナーシングホーム。具体的にはどのようなサービスを受けられるのでしょうか。
医療体制
ナーシングホームは看護師が24時間常駐して常に医療的ケアが受けられるなど、医療サポートが充実。もちろん施設ごとに細かな医療体制は異なりますが、難病の要介護者や、看取り対応、精神疾患や認知症など幅広い病状に対応できます。
医療行為 |
・気管切開 |
---|---|
疾患 |
・難病(ALS、パーキンソン病など) |
介護体制
ナーシングホームは介護体制も手厚く、食事や排せつ、入浴などの生活全般を介助してもらうことができます。機能訓練も受けられるので、身体機能の維持・向上も期待できます。療養型の医療施設のように、いわゆる「寝かせきり」にすることもありません。
中には、希望するサービスだけを選択して受けられるナーシングホームもあります。
ナーシングホームの費用
ナーシングホームの費用は施設ごとに異なりますが、内訳に関しては概ね同様です。
下記に加えて別途、消耗品代、日用品代、医療費などが掛かります。
ナーシングホームの費用内訳
- 入居一時金(または敷金)
- 月額料金(家賃、管理費、光熱費、食費、介護サービス費 (1割〜3割の自己負担)など)
- その他費用(クリーニング・洗濯代、理美容代、おむつ代 など)
下記では、日本でナーシングホームと同義とされている有料老人ホームの費用シミュレーションが可能。費用相場も解説しているので、併せて参考にしてください。
関連記事有料老人ホームに必要な費用のシミュレーション|料金相場や年間費用を紹介
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ナーシングホームのメリット
ナーシングホームを利用する最大のメリットとして、充実した医療体制が挙げられます。体調急変など、不測の事態が起きても医療連携により対応が可能です。他の介護施設や在宅介護にはない強みといえるでしょう。
介護度や医療依存度が高くても入居できる
ナーシングホームは要介護4、5など寝たきりの方など、重度の要介護者も入居の相談は可能です。また、他の施設では対応できない難しい病状でも、医療体制を基にサポートできる場合があります。介護度や医療依存度の高さを理由に他の施設への入居を断られた場合は、一度ナーシングホームに相談してみましょう。
病気が悪化した際に転居しなくてよい
ナーシングホームは医療体制が手厚く、看取り対応までできる施設もあるため、病状が悪化しても最期まで過ごせる可能性があります。
医療体制が整っていない施設に入居して病状が悪化した場合、対処ができずに住み替えとなることもあります。本人や家族にとっても大きな負担となるので、転居の可能性が低い点は大きなメリットと言えるでしょう。
仮に緊急対応が必要で、医療機関に入院をすることがあった場合でも、可能な限りのフォローがナーシングホームで対応できます。
ナーシングホームのこれから
超高齢社会の日本では、ナーシングホームの需要はますます増加する見込みです。今後も高齢者の割合は上がり、医療や介護需要の増加と同時に、病院や介護施設のひっ迫が予想されます。
健康寿命と平均寿命には約10年の開きがあるため、最期はほとんどの方に医療や介護サービスが必要となります。医療体制と介護体制を兼ね備えたナーシングホームは強力な助け舟になるでしょう。
参照:厚生労働省「平均寿命と健康寿命」
ナーシングホームは医療・介護の未来を担う施設
医療体制と介護体制を両立したナーシングホームは、今後需要の増加が予想されます。日本では多くの場合、有料老人ホームと同義とされており、医療サポートの手厚さが特徴です。
実情としては病院に近いイメージですが、あくまでも病院とは異なり生活の場になります。また介護だけでなく医療的なサポートもあるため、両者の強みが活きるのも特徴といえます。要介護度や医療依存度の高さを理由に施設入居を断られた場合は、ナーシングホームに相談するのがおすすめです。
「LIFULL 介護」では、全国のナーシングホーム情報を掲載中。希望条件で絞り込めるので込めるので、ニーズに沿った施設を探しやすいです。ナーシングホームをお探しの方は、ぜひチェックしてください。
イラスト:安里 南美
この記事の制作者
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。