2016年6月にオープンした住宅型有料老人ホーム『クラーチ・メディーナ船橋』は、「リハビリ強化ホーム」をうたい入居者の身体機能の向上・維持に積極的に取り組んでいます。新たに9月、4種のトレーニングマシンを導入し、個人の運動記録や機能評価をデータ化できるようになりました。早速ホームにお邪魔して、リハビリの取り組みや入居者のリアルな声を聞いてみました。


介護予防に特化したトレーニングマシン


リハビリテーションに設置された4種のトレーニングマシン

【リハビリテーションルームに設置されたマシン】


今回、『クラーチ・メディーナ船橋』で取り揃えたリハビリ用のトレーニングマシンは介護予防を目的に設計されたシステムです。そのため、ある程度自分で動ける方がトレーニングの対象となります。重度の介護が必要な方には、個別プログラムで別途リハビリを実施しています。

このマシンは入居者の運動量や機能評価をデータベース化することができ、一人ひとりに最適化したトレーニングの提案ができるそう。初回はホームに常駐する理学療法士がマシンを使って機能評価を行ない、そのうえでリハビリプログラムを組んでいます。

理学療法士の不在時には介護スタッフでも対応できるように、マシンの使い方や経過観察の方法などをスタッフ全員で共有しているそうです。



トレーニングマシンは、肩の可動範囲を広げて猫背予防をする「ローイング」、立ち上がる、歩くなどの動作をする際に使う筋肉を強化する「レッグプレス」、階段昇降の安定や歩幅を広げる「レッグエクステンション」、そして歩行中のふらつきを防止する「ヒップアブダクション」の4種類。

名称を聞くと一般的なスポーツジムに設置されているトレーニングマシンと変わらないですが、高齢者向けに軽い負荷を与える設計になっており、楽に安全に使用できるのがリハビリ用マシンの特徴です。

介護予防のリハビリテーションは、主に要介護化に至る前に体力と動作の低下を予防しようといった目的で行なわれています。筋力の強化ではなく、ふだん使っていない筋肉を意識的に動かすことにより、身体を活性化させるのが目的なのです。

また、病気などで体力・筋力を落とした高齢者がリハビリによって身体機能の回復を実感し、失くしていた自信を取り戻すといった効果もあるのだとか。

『クラーチ・メディーナ船橋』にも、そんな体験をされた入居者がいらっしゃるそうです。実際に生の声を聞いてみました。


「トレーニングマシンが嫌いです」に込められた思い 


ご自身のとても素直な気持ちをお話してくださった鳥居さん
【ご自身の素直な気持ちをお話してくださった鳥居さん】


入居して3ヶ月になる鳥居さんは、リハビリに取り組む入居者のひとり。トレーニングへの意気込みを聞こうと思いきや、どうやら鳥居さんはトレーニングマシンがお好きではないようなのです……!

――鳥居さんは現在、トレーニングマシンを使ったリハビリを行なっていると聞いたのですが、今日は体験談をお聞きしたいなと思って来ました。

そのテーマで話をするのは難しいですね(笑)。私はこのマシンがあまり好きじゃないものですから。嫌いな人の意見を聞いても、否定するようなことしか言えないかもしれません。



――正直なご感想ありがとうございます(笑)。どんなところがお好きではないのでしょうか?

リハビリ結果のデータをとられるのが嫌いなんです。ただ、最新の設備だけあってリハビリ自体はいいと思いますよ。そこは好き嫌いがありますから、私ひとりの答えだけで判断しないことをオススメします(笑)。


――数値で自分の体の調子を図られるのがお嫌いなのですね。

正直に言うと、とにかく今すぐ病気を治したいという気持ちでいっぱいで、検査結果はどうでもいいように思えるんです。一喜一憂する時間があったら、少しでも治したい。私は78歳でパーキンソン病を患って、ここ2年で急に動けなくなってしまいましてね。



――今、お身体の調子はいかがでしょうか。

入居して3ヶ月経ちますが、おかげで歩く力が出てきました。それはこのホームでリハビリを行なったからなのでとても感謝しています。よろよろしてまだ完全にはひとりで歩けないのですが……。



――リハビリはどのようなことをされているのですか?

鳥居さん:基本は週2回以上の運動です。リハビリマシンを使った運動と、午前と午後にあるレクリエーションに参加しています。あとは日常生活での歩行ですね。最初は居室の3階から食堂のある5階に行くだけでも疲れていましたが、たくさん動いたおかげで少しずつ力を取り戻せています。


 

リハビリが諦めていた自分の未来に明かりを灯してくれた

 マシンを使ってのリハビリの様子。鳥居さんの真剣な様子が伺えます

【マシンを使ってのリハビリの様子。鳥居さんの真剣な様子が伺えます】



――鳥居さんが「クラーチ・メディーナ船橋」を選んだ理由はなんでしょうか?

実のところ、娘が強引に申し込んで来てしまったので、入居は僕の意思ではないんです。ピアノ講師をしている娘が、ここのホーム併設のカフェでイベントをやったのがきっかけで、リハビリの体験に連れて来られたのがはじまりです。



――新しい暮らしをスタートされてどうでしたか?

最初はとうとう老人ホームに入ったという事実を受け入れられずに、ショックを受けて落ち込んでしまいました。このときの気持ちは、体験してみないとわからないことかもしれません。だからリハビリもはじめのうちは「こんなのやっても仕方がない」と馬鹿にしていたのです。



――でもお話によると、リハビリは1日も休んだことがないそうですね。

リハビリのスタッフがカードをつくってくれて、プログラムをやった分だけハンコを押してくれるんですよ。そのカードを見れば娘にサボったことがバレるから、少し手を抜いている時でもおまけでハンコ押してもらっています(笑)。


――娘さんとはよくお会いするのですか?

外出するときはいつも娘が付き添ってくれます。自宅でカラオケ教室をやっているので、週2、3回は生徒さんのレッスンを見学しに戻っています。病気になる前は自分も現役でダンスとカラオケをやっていたんですよ。今は、うちの生徒さんの成長を応援するのが楽しみです。自分も早く治して歌ったり踊ったりできるようになりたいですね。

 数値を計測するのが苦手だと言いつつも、真剣な表情でリハビリに取り組んでいます

【数値を計測するのが苦手だと言いつつも、真剣な表情でリハビリに取り組んでいます】



――だからこそ鳥居さんは、病気を早く治したいという強いお気持ちがあるのですね。

そうですね。そういう気持ちが芽生えたことは、ここの生活のおかげですね。感謝しています。皆さんに申し上げたいのは、病気をしたら大変なことになるという認識をもっと事前に持って、病気になる前に予防なり手を打っといた方がいいということ。それが自分で身をもって得た教訓です。

 

 

クラーチ・メディナ船橋:リハビリの取材を終えて


お会いしたばかりのときは、取材に対する緊張も手伝ってかとつとつと言葉を選びながら話をしてくださった鳥居さん。「トレーニングマシンが嫌い」——その飾らない言葉の奥に込められた「1日も早く病気を治したい」という思いに触れて、聴く側としてとても神妙な心持ちになりました。

自分の意志とは裏腹に、家族の意向で老人ホームへの入居を選択する場合もあるだろうと思います。その現実をご本人がどう受け入れていくのか、それはとてもデリケートな問題です。鳥居さんのように不本意な場合は尚更でしょう。

けれど、病気で塞ぎ込んでいた鳥居さんの心に希望という明かりが灯ったのは、「老人ホームでリハビリに取り組んでほしい」というご家族の愛にあふれた計らいがあったからだと感じました。