優しい笑顔から、見るからに入居者たちから愛されそうな介護科科長の岸 大翼さん。入居者からは “理想の息子”キャラクターとして慕われています。そんな岸さんは、オーシャンビュー湘南荒崎の良さについて、「自由度の高さ」だと語ります。介護職への思いと、ちょっと気になるお給料面についても聞いてみました。

介護の仕事を意識したのは、小学校の時の体験

――介護の仕事に就かれたきっかけを教えてください。

小学校高学年の頃、母が胃がんの祖母を自宅で見ていたことがきっかけです。今では介護が当たり前に考えられる時代になりましたが、当時は介護というものが一般的に知られていませんでした。

小学生の私は「お母さん、大変だなあ」ぐらいに思っていましたが、高校生になって介護が世間に認知され始めてから、「あの時、母はこういうことをしていたんだ」と、当時の状況をようやく理解できるようになりました。私は祖母とも母とも非常に仲が良かったので、当時の体験から介護を仕事にしたいと思うようになりました。

――最初はどのような施設で働き始めたのでしょうか?

介護の専門学校を出てから、特別養護老人ホームで4年半働いていました。入った当初はまだ学生気分も抜けず、先輩たちに随分ご迷惑をかけたと思います。でも特養を通じて、こういう先輩になりたい、こういう上司になりたいと思いながら仕事ができたので、人に恵まれたと思います。

その後、こちらのオーシャンビュー湘南荒崎が新しくできるということで、一から施設を立ち上げる現場に加わりたくて、オープニングスタッフとして入りました。

――オーシャンビュー湘南荒崎は今年10年を迎えました。そうなると、岸さんはベテランですね。

それがですね……。こちらに来て5年目で一度仕事を辞めて、2年間別の職種に就いているんです。結婚を機に、やはり稼がなくてはと思い、設備会社の現場監督をしていました。ところが、その会社が畳むことになりまして……。

もともとオーシャンビュー湘南荒崎の人間関係はすごく好きでしたし、嫌いで辞めたわけではないので、またこちらにお世話になることにしました。戻ってからは3年経ちましたね。


――介護職のお給料面はやはり大変なのですか?

今、34歳ですけれど、私と同じくらいの年代の男性で介護職に就いている人は、お給料面で将来的にどうしようって悩まれている方も多いと思うんです。処遇改善加算が付くようになり、少しお給料が上がったのですが、それでもほかの職種に比べるとまだまだというところはありますね。

やりがいがある仕事だけに難しい問題です。ただオーシャンビュー湘南荒崎では、資格取得の支援をしていますので、資格に対しての手当やリーダー手当などもありますから、やる気のある職員は、給料面でのアップも期待できますよ。

海を前に、自然と入居者の表情も明るくなる

――こちらの施設は海に面していて、ロケーションが最高です。海の見える暮らしをされている入居者さんたちは、どんなご様子ですか。

海は会話を生むんですよね。表情も毎日違っていて、穏やかな日もあれば、荒れている日もあります。そんな時は、入居者さまと職員の間で「今日は荒れているねえ」なんて話をします。

以前、私の勤めていた特養は、こことは真逆で山に囲まれていました。少し閉鎖的な山あいの空間で暮らすのと、こちらのように開けた海を目の前にして暮らすのとでは、やはり入居者さまの顔つきが違います。自然と明るい表情に皆さまがなられていると思います。

――近くに防波堤がありますね。入居者さんたちと散歩をすることもありますか?

実は先ほど、入居者さまたちと散歩に行ってきたばかりです。防波堤まで行かれる方もいらっしゃいますし、釣りが好きな方は防波堤で釣りをされることも。「今日は●●さんに魚をあげるんだ!」と言って、釣った魚を職員にくださいますよ。職員の付き添いなく、ご自分で行かれる方もいらっしゃいます。

元気な方は、職員が付き添わずに皆さんご自分で外に買い物に行かれます。糖尿病などで食事制限がかかっている方は、「できるだけ外食は控えてくださいね」とお声がけをします。お酒やたばこに対しても、許容範囲内でしたら自由にしていただいています。

――入居者さんの中には船に乗られる方もいらっしゃるとか……。

はい、私は科長になって日が浅いのですが、前任の科長は、釣り船をチャーターされた入居者さまと海釣りをご一緒していました。さすがに船を出す時は、事故があるといけませんので職員が付きます。オーシャンビュー湘南荒崎では、こんな風に入居者さまへの個別対応が多いと思います。

入居者の方が発案した旅行から地域のお祭りまでイベント多数

――個別対応のお話が出ましたが、こちらは入居者さんの生活の自由度が高いですよね。

自由度は高いですね。たとえば、先月は仲の良い男女の入居者さまのリクエストで、1泊2日の箱根旅行に私も朝から車を運転して、一緒に行ってまいりました。

車椅子の方でしたので、バリアフリーのホテルを探してお二人に提案しましたね。旅行代理店さんみたいですよね。イベントはとにかく安全第一なので、職員と必ず下見に行きます。今後もお付き合いのできるホテルをどんどん増やしていきたいので、下見でホテル側といろいろ話をして、安心できるところを紹介させていただいています。

――スタッフの方が発案されるイベントはありますか?

外食行事は月に何回もあります。これも車椅子の方が入れるお店のリストを増やしているところです。最近の屋外行事ですと河津桜のお花見、これからは菖蒲の鑑賞ですね。そのほか出前行事もありまして、ロビーでお寿司を握ったり、蕎麦打ちも行ったりしています。

――地域ならではのイベントもあるのでしょうか?

近所にある長井中学校のブラスバンド部の皆さんが、秋祭りになると施設の庭に来てくださって生演奏してくださいます。あとは町内会で行う年末の餅つきや、巡回保育園で園児の皆さんが来られる踊りの発表会もあります。

でも一番大きいのは、8月の最終週にある自衛隊の武山駐屯地から上がる花火大会ですね。6階の大きなバルコニーに入居者さまをお連れして楽しんでいただきます。目の前に上がる花火はすごい迫力です。

地元の新鮮な食材を、入居者の方の好みに合わせてカスタマイズした食事

――施設のすぐ側にある長井漁港からも食材を仕入れているそうですね。

隣の長井水産からもお魚が入ってきますし、畑がとても多い地域なので、新鮮な野菜もたくさん入ってきます。入居者さまはメニューを選択できるので、お魚が苦手な方はお肉を召し上がっています。

――入居者の方からのお食事の評判はいかがですか?

入居者さまにはフロアのアンケート用紙に、食事に関する忌憚のないご意見を随時書いていただいています。それに加え、実際に食事をともにした職員の意見や検食結果も併せて、月一回、食事を作られる業者さんとの食事委員会を開いています。このお肉は硬かった、調理方法はどうだろうか、これはおいしいと評判だったので増やしてほしいなど、かなり細かく詰めています。

ただ、食事は本当に難しくて、この方には良かったと思われても、ほかの方にとってはイマイチと思われることもあります。全員の希望は叶えられていないかもしれませんが、できる限りお話を聞くようにいつも心がけていますね。

自分が人に恵まれたように、自主性を持って後輩を育てていきたい

――最後に、岸さん自身の今後の展望をお聞かせください。

介護施設は、働く人の年齢層が非常に幅広い職場です。こちらの施設ですと、下は20代から、上は60代後半まで。私が中堅の34歳ですので、職員との間に入って、とにかく話し合うように心がけています。

私がこの施設に戻らせていただいたあと、2階の認知症のフロアリーダーをやらせていただきました。その時に、現場の意見がものすごく大事だということをひしひしと感じたんです。ですので、今、介護科の長として心がけているのは、現場で上げてきた案に関しては、よっぽど筋の通らないもの以外、基本的にGOサインを出すようにすること。

リーダーの発信でなく、フロア職員の発案であっても、とにかくまずは行動に移して、経験してもらいたいです。ダメと言うのはすごく簡単なんですよね。

リーダー以外にも全ての職員さんに、たくさん“失敗”を経験してもらいたいです。失敗してなぜダメだったのかを一生懸命考えれば、人間は成長できると思いますので。「いいよ、経験してみなよ?」の一言で、多くの意見が生まれるようにしたいですね。

(横山由希路+ノオト)

(記事中の内容や施設に関する情報は2017年5月時点の情報です)