アメリカでは1960年以降、CCRC(コンティニュイング・ケア・リタイアメント・コミュ二ティ)と呼ばれる大規模なシニアタウンがあちこちに建設されました。
CCRCとは、高齢者が元気なうちは余暇を楽しみ、生活支援や介護が必要になった場合にも安心して生活できる機能が整備された町です。広大な敷地に、カラオケや囲碁などが楽しめる娯楽施設やフィットネス、病院や介護施設などシニアライフに必要なインフラがコンパクトにまとまっています。
シニア向け分譲マンション『スマートコミュニティ稲毛』は2010年に”日本初のCCRC”として千葉県千葉市稲毛区に誕生しました。社長兼施設長の染野正道さんにCCRCのライフスタイルについて詳しくお話を聞きました。
楽しみながら介護予防ができる暮らしを提案
【社長兼施設長の染野さん】
染野さん「日本の高齢者といえば、これまで老人ホームなどの介護施設しかなかったですよね。でも実は退職してからの人生はすごく長いんです。介護が必要になる手前の人生をいかに充実させるかの選択肢がもっとあってもいいと思います」
『スマートコミュニティ稲毛』は有料老人ホームではありません。"コミュニティ機能"がついたシニア向けの分譲マンションです。
入居者は月々の会費を支払うことで、朝晩の食事や各種サービスを受けられる仕組みになっています。クラブハウスと呼ばれる共有施設には娯楽設備が用意され、さまざまなアクティビティやサークル活動が盛んに行なわれています。
染野さん「日本初のCCRCといっても、アメリカ型とは少しコンセプトが違うんです。アメリカではライフスタイルに合わせた介助や介護、医療サービスを継続して受けられる仕組みになっています。でもここでは元気な時代をできるだけ有意義に過ごすことによって、介護を極力必要としない状態を維持するのを目指しているんです」
染野さんによると、日本国内における70歳以上で介護認定を受けているシニアは全体の17%で、そのうち要介護4、5に当たるのは5%ほど。想像以上に元気なシニアがたくさんいることに驚きました。
早いうちから人生を積極的に楽しむ習慣があれば、介護が必要な時期もそれだけゆっくりと訪れるとは、なるほどそうかもしれません。
というのも、老人ホームで介護にあたる現場の方々から「身体機能の維持と生活の質の向上のために、楽しみを通じた自律的なリハビリが大事」という話をよく聞くからです。「アクティブに活動することそのものが介護予防になる」という視点は、とても大事だと思いました。
誰もがゆるやかにつながり合えるコミュニティづくり
【マンション棟の入り口にあるサイン】
実際にどんな方が『スマートコミュニティ稲毛』に入居されているのでしょうか?
染野さん「ご入居者の年齢は54歳から93歳までと幅広く、平均年齢は73歳です。現在、入居者の4分の3が単身の方で、ご夫婦はそれほど多くありません」
50代をシニアと呼ぶにはまだまだ早いのですが、早期退職をしてセカンドライフを楽しんでいる方や、現役で働きながら暮らしている方もいるのだとか。
入居者に単身者が多いのは、一人で決断できるぶん気軽に移住しやすいのかなと思いました。夫婦での入居は、妻の家事負担が減るメリットが大きい気がします。ひとくちにシニアと言っても、世代が広いので価値観も実にさまざまではと思うのですが、コミュニティの雰囲気はどうでしょうか?
染野さん「個人の考え方はぜんぜん違うので、すごく活動的な人もいればのんびり過ごしたい人もいます。コミュニティへの関わり方はさまざまです。全体としてゆるやかにつながれるコミュニティであるように配慮しています」そのためにはまず、生活の安心安全が満たされる環境であること。さらにやりたいことがあれば、自分のペースでチャレンジできる機会があることが大事だと染野さんは語ります。
染野さん「趣味がなくても、朝晩クラブハウスへ食事に出かけてスタッフや顔見知りの人と会話するだけで十分だし、意欲があればアクティビティへの参加やサークルの運営も可能です。場をつくる人がいれば、それを見て楽しむ人もいます。多様性があるから全体が活性化するんですよね」
コミュニティといっても強制的に参加するものではなく、思い思いのスタイルで関われるのはいいなと思いました。実際、クラブハウスを取材してみて、大学のキャンパスライフにイメージが近い印象を受けました。
シニア世代が元気に暮らせる選択肢を増やしたい
【クラブハウスの敷地。とにかく広くて驚きました】
さて、染野さんがどうして日本版CCRCを作ろうと考えたのかも聞いてみたいと思います。
染野さん「創業者の宮本雅史と僕は、昔ゲーム業界で一緒に仕事をしていたんです。宮本がアメリカに住んでいた時にCCRCと出会いました。高齢者の問題は誰しも避けて通れないけど、年齢を重ねてからの暮らしをどうデザインするかってこれまであまり考えられてこなかった。
日本にはシニアが何百人も集まって暮らし、いろんなことができる場所ってないですよね。日本にセカンドライフを楽しむ文化が広まれば、元気なシニアが増えるし若者の介護負担だって減ります。これは素直にいい仕事だなって思いました」
前職ではゲーム業界で約20年、組織マネジメントに携わっていた染野さん。まったく新しい業界への転身ですが、以前の経験をどのように生かしているのでしょう。
染野さん「以前はどうしたらこのゲームを楽しむ人が増えるか?を考える仕事をずっとしてきましたが、今はどうしたらセカンドライフを楽しむ人が増えるか?をずっと考えています(笑)」
ひとりでも多くの人に『スマートコミュニティ稲毛』での暮らしを楽しんでもらいたい。そんな思いがあり、団塊世代の年金受給者が負担に感じない価格設定で、いかにいいサービスを提供できるかを常に模索しているのだとか。
染野さんは現在52歳。ご自身もまもなくアクティブシニア世代にさしかかる年齢です。セカンドライフは第二、第三の「スマートコミュニティ」を全国に立ち上げて、シニア世代が元気に暮らせる文化を日本にもっと広めたいとのことでした。
スマートコミュニティ稲毛:ホーム長インタビューを終えて
高齢になってもできるだけ自分の力で生活したい、と願うのは自然の気持ちではないでしょうか。楽しい生活を送ることが現在の自分を満たすと同時に、未来の自分をつくることでもあるなら、今を楽しまない手はありません。
沢山のコミュニティがあなたを待っています。ぜひ一度『スマートコミュニティ稲毛』を見学に行ってみませんか?
(記事中の内容や施設に関する情報は2017年2月時点の情報です)