静岡県の西部、遠州地方にある浜松市は、県内最多80万の人口を有する都市です。この街に2023年11月にオープンした「リヤンド‐絆‐浜松東」は、がん末期の方、神経難病をお持ちの方など、医療依存度の高い方でも安心してお住まいいただける、医療対応型住宅型有料老人ホーム、いわゆる「住宅型ホスピス」です。
医療的ケアと介護支援を両立する「リヤンド‐絆‐浜松東」の特徴や取り組み、今後について、施設長の岸謙治さんにお話しを伺いました。
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「住居型ホスピス」で医療依存度の高い方々も安心の生活を
――はじめに、岸さんが介護業界に入られたきっかけやこれまでのキャリアについて教えてください。
岸さん:大学卒業後、全国に支社がある東京の商社で営業の仕事をしていました。結婚し子供ができたタイミングで、このまま転勤・単身赴任のある生活を続けるのか、一か所に落ち着いて仕事をするか悩んでいた頃、妻の実家のある藤枝で特養の仕事を紹介され、思い切ってキャリアチェンジして事務職員として働き始めたのが介護業界に入ったきっかけでした。
今にいたるまで一旦、営業の仕事に戻ったのですが、静岡県内にいくつもの福祉関連事業を運営している会社から管理者としてお声がけいただき、再び介護業界に戻ることにしました。管理者として約11年間は、施設長やエリアマネージャーなどを任せていただきました。
そんな中、HMS株式会社が浜松に新しくオープンする「住居型ホスピス」の施設長をやらないかとお誘いをいただきました。ここでは、今まで私が務めた施設ではお受けできなかった方々を対象としていましたし、弊社にとっても浜松は初進出の地域でした。イチから新たに立ち上げる施設の責任者という、チャレンジングなお話をいただき、ぜひやってみたいと昨年7月にHMSに入社。開業準備を経て11月より施設長を務めています。
――これまでお受けできなかった方というのは、どんな方々なのでしょうか
岸さん:岸さん:悪性腫瘍の末期の方や難病疾患とされるパーキンソン病や多発性硬化症、ALSといった神経難病をお持ちの方など、日常的に医療的ケアが必要な方々などです。リヤンド‐絆‐浜松東は、「住宅型ホスピス」なので、そのような医療依存度の高い方にもご入居いただけます。
介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームでは24時間体制の医療対応が難しいため、入居を断られてしまうケースが多いと伺います。また、療養型医療施設に入居されても、医療体制は整ってはいますが、色々と制限が多く、自分らしい生活を送るには少しハードルが高いように思えます。
そのため、ご自宅で在宅医療を受けながらご家族が介護されるというケースも多くなっています。ご自宅での介護は、体力気力ともに消耗します。介護する側もされる側も思い通りにいかず、辛い思いをされているのが実状です。リヤンド-絆-はそういった行き場のない方々にぜひご相談いただけたら幸いです。
――「リヤンド‐絆‐浜松東」では、なぜ医療依存度の高い方を受け入れることができるのでしょうか?
岸さん:「リヤンド‐絆‐浜松東」では、看護師・介護士といったスタッフが手厚いサポートを行える体制が整っているというのが大きな理由です。日中は、看護師・介護士が8~10名、夜間は看護師3名、介護士1名が24時間365日常駐しています。全36室となっていますので、いかに手厚い体勢であるかがお分かりいただけるかと思います。
常に複数名の看護師がいるため、痰の吸引やインスリンの投与といった医療的ケアがいつでも行えます。さらには、訪問診療や地域の医療機関とも密に連携しているため、状況の変化にも素早い対応が可能です。
制限をかけず、その人らしい暮らしを送っていただく
――「リヤンド‐絆‐浜松東」の特徴について教えてください。
岸さん:私たちが大切にしているのは、終の棲家であるここでの生活を、「入居者さまそれぞれが、その人らしく生きていただく」ということです。そのため、できるだけ制限をかけるようなことはせず、やりたいことはなるべく叶えられるようにしています。
例えば、病院であれば面会時間が決まっていたり、ご家族が泊まることもできません。しかしここでは、24時間365日面会可能ですし、「どうぞご自由にお泊りください」といった形で、無料で寝具もお貸ししています。食事はうな重やお寿司、手料理をお持ちいただき、召し上がることもできます。お酒やたばこだって、病状に影響しない範囲で楽しんでいただくことも認めています。
これは、以前ご入居されていた末期がんの入居者さまのお話です。これまで奥様が自宅で介護をされていたそうですが、介護生活に疲れ、やせ細った姿を見かねた息子さんが、ご入居をお決めになられました。ご入居されてから毎日、奥様も一緒にお部屋にお泊りになり、朝には出かけてご自身のことや家のことを済ませ、夕方にこちらへ帰ってくるという生活をなさっていました。約1か月その生活を続け、ご主人はお亡くなりになられましたが、奥様からは「自分を取り戻せた。ここに来て良かった。主人も人生の最期を有意義に過ごせたと思う」と感謝の言葉をいただきました。
入居者さまが安心して暮らせただけでなく、ご家族をも救うことができたからこそいただけた言葉だと思っています。
――施設長として、スタッフへの教育や指導について大切にしていることはありますか?
岸さん:スタッフの採用時に、私たちが大切にしていることを伝え、そのために「できない」ではなく「どうしたらできるか」が大事だということを丁寧に説明して、意識の共有を図っています。
また、看護師、介護士、事務スタッフと職種は違うものの、それぞれの仕事をリスペクトしつつ、1つのチームであることも大切にしていますね。
そうすることでお亡くなりになった方が去られる際も、自然と全スタッフが集まり、皆でお見送りをするなど、皆の意識が1つになっていると思います。
私自身は、上から目線で指示するのではなく、挨拶を欠かさず、何かをしてもらったら「ありがとうございます」と感謝を伝えるといったところでしょうか。
「ここで最期を迎えられて良かった」といわれるホームに
――今後取り組んでいきたいことについて教えてください
岸さん:オープンしてまだ4カ月で、まだまだやれていないことも多くありますが、まずは入居者さまの日々の生活に彩をもたらす取り組みをしていきたいと思っています。たとえば、現在は季節の行事食は月に1回なのですが、その頻度を増やしていきたいですね。食事を楽しみに思ってもらえたり季節感を味わってもらいたいと思っています。
また、レクリエーションも簡単な運動から始まったので、そのバリエーションも増やしていきたいと思っています。
もう1つの大きな取り組みは、言語聴覚士および歯科衛生士の2名による嚥下機能のトレーニングです。神経難病を抱える方は、嚥下機能が低下しがちです。嚥下機能が衰えると、食事が満足に食べられなくなり肺炎のリスクも高まります。食事が自分の力でできるということは、生きる上での大きな楽しみの1つだと思うんです。現在、月に2回、東京から来てもらっておりますが、この回数が増やせるよう、セラピストの確保にも努めて参ります。
――最後に、岸さんにとって「理想のホーム」について教えてください。
岸さん:入居者さまのほとんどは、人生の最期を過ごす場所となることでしょう。人生最後の1ページが何不自由なく、安心・快適・楽しく過ごせる場でありたい。
そして入居者さまからは「ここで最期を迎えられてよかった」「あなたに会えてよかった」「ありがとう」という言葉をいただける。ご家族からも「リヤンド-絆-を選んでよかった」と思ってもらえる施設でありたいですね。
その感謝を糧に、スタッフ一同、日々努力をしていきたいと考えています。
(記事中のサービス内容や住宅に関する情報は2024年3月時点の情報です)