質問

老人ホームに入居している祖母は、食事でむせる傾向があり誤嚥(ごえん)しないかと心配です。
担当の医師から「将来的に胃ろうを考えた方がいいかも」と言われました。胃ろうになっても今の有料老人ホームに住み続けることができるのでしょうか?
胃ろうそのものについても教えてください。

回答
德田 泰子

胃ろうとは栄養摂取方法のひとつであり、胃ろうのケアは看護師が行う医療行為となります。有料老人ホームの種別には「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」などがあり、介護付きの場合、基本的には介護度が上がっても生活のサポートをしてくれますが医療施設ではないため医療的ケアは制限されています。

近隣の医療機関との連携、介護体制、スタッフの体制、看護師の配置などにより、それぞれの老人ホームの受け入れ態勢が違っています。体調に不安をお持ちの場合は、希望される老人ホームの医療・介護体制について確認されるといいでしょう。

ここでは、胃ろうについての説明と、施設選びで気を付けたいポイントなどを解説します。 德田 泰子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ所属)

【目次】
  1. 1.胃ろうとは栄養摂取方法のひとつ
  2. 2.胃ろうのメリット・デメリット
  3. 3.胃ろうの方が入居可能な老人ホームとは?
  4. まとめ

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1.胃ろうとは栄養摂取方法のひとつ


口から食事がとれない、あるいは食べても飲み込みがうまくできず、むせて肺炎などを起こす恐れがある場合、胃に穴をあけ器具を取り付けて胃に直結した小さな口を造ります。ここから栄養をとり入れる栄養摂取方法を「胃ろう」といいます。


【胃ろうが必要な状態とは?】

・脳血管疾患、神経筋疾患などの影響で、口からの食事がとれず、点滴では栄養が足りないとき

・病気や加齢によって食べる、飲み込む機能が低下しているとき

・寝たきり状態で起こる床ずれ(褥瘡:じょくそう)対策の栄養確保として

・意思疎通(意識障害、認知症後期など)ができず、口からの栄養確保ができないとき

・飲食物の飲み込み(摂食嚥下)がうまくできず、誤嚥の心配があるとき


食事が口からうまくとれないことは、低栄養、免疫力低下などさまざまな疾患も心配されます。

胃ろうは、マイナスイメージを持たれている方も多いと思いますが、さまざまな疾患と治療への改善策として必要とされる場合があります。ご家族の健康にとって何が必要か、優先順位を主治医とよくご相談なさってください。


2.胃ろうのメリット・デメリット


胃ろうを造ってもその病状、症状および栄養状態の改善状況によっては取り外すことが可能です。
さらにリハビリテーションを行うことにより口からの食事に戻る可能性もあります。しかし専門家のサポートが必要なので十分な医療・介護体制が整った機関での取り組みが中心となります。


2-1胃ろうのメリット

・著しく低下した栄養状態の改善が期待できること

・鼻からチューブを入れて栄養を確保するよりも長期にわたり栄養管理が可能であること

・喉にチューブがないので口から食べる機能訓練を行いやすい

・摂食嚥下(えんげ)がうまくできずに誤嚥を起こす可能性がある場合の栄養確保


2-2胃ろうのデメリット

・口での飲食がなくなる場合、唾液の分泌などが少なくなり、口腔内が乾燥したり、ケアが行き届かず不潔になりやすい(口腔内のケアを習慣づければ問題ありません)

・栄養剤の注入には長時間要するため、同じ場所の皮膚が長時間圧迫されることにより床ずれができることがある

>胃ろうについてもっと詳しく!ケアの方法と注意点



3.胃ろうの方が入居可能な老人ホームとは?


老人ホームで対応可能な介護・医療体制は、施設によってさまざまです。

施設内に医師がいなくても提携医療機関の支援を受けることができ、24時間対応の訪問診療や訪問看護体制が整った老人ホームもあります。

胃ろうケア、たんの吸引、床ずれの処置などは医療行為であるものの、一部は医師の指示のもとに看護職員や特定の研修を受けた介護職員がケアすることを許されています。

たとえ健康状態に変化があっても長く暮らせるような環境かどうかを確認しておきましょう。


【老人ホームの医療・介護体制をチェックしよう】

・どのような協力医療機関か(近隣にあるのか、診療科目にはなにがあるか、往診、送迎の有無は?)

・介護・看護にかかわる人員の体制は?

・リハビリにかかわる支援はあるか

・医療的ケアはどこまで対応できるか

・看取りの体制はあるかなど

>老人ホームで受けられる医療行為とは

>【特集】胃ろうの方も入居相談が可能な老人ホーム・介護施設


まとめ

入居時は元気であっても少なからず皆、健康に不安を抱えています。

将来、介護が必要になった場合のことを考えて、老人ホームへの入居を検討される方が多いのではないでしょうか。

ご希望される老人ホームの医療体制を、比較検討することは老人ホームの選びの重要な選択要素となります。事前にチェックすることで健康不安が高まったときの住まいの不安を軽減しましょう。


(参考文献)
「コメディカルのための静脈・経腸栄養ガイドライン」 南江堂
「やさしくわかる創傷・褥瘡ケアと栄養管理のポイント」 フットワーク出版


>胃ろうに対応している全国の施設を探す

>老人ホームの希望条件を整理する4つのポイント

(監修:森 裕司 株式会社HOPE代表、介護支援専門員、社会福祉士)

このQ&Aに回答した人

德田 泰子
德田 泰子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ所属)

株式会社ヘルシーオフィスフー/代表取締役
(公社)全日本司厨士協会大阪府本部女性部/副部長
管理栄養士・調理師、栄養コンサルティング
「食事を介護施設の付加価値に」口から食べるための介護食を支援している。