- 質問
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最近、体力の衰えなど健康面に不安を感じており、有料老人ホームの入居を考えています。気になるホームの見学に行ってみようと思っているのですが、どんなところをチェックすればいいのかわかりません。教えてください。(80歳・一人暮らし)
- 回答
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見学前にパンフレットを取り寄せ、その老人ホームに関する予習をしておくことで、見学時間を有効に使うことができます。現在の元気な状態だけでなく、「身体状態が低下した場合」や「車いすが必要になった場合」にも安心できる住まいかどうか、という視点で見学することが大切です。
老人ホームの見学時はつい建物ばかりに目が行ってしまいがちです。もちろん居住空間も大切ですが、実際に介護サービスを提供するのはスタッフなので、ホーム長をはじめスタッフの表情(笑顔)や態度もよく確認しておくことが大切です。
ここでは老人ホームを見学する際のポイントを解説いたします。見学前にお読みいただき、しっかりと見定めるためにお役立てください。
1.見学前にやっておきたい事前準備
老人ホームの概要を予習しておきましょう
見学に行く前に、パンフレットや重要事項説明書などを取り寄せ、ホームの概要や特徴をつかんでおきましょう。
重要事項説明書に関しては、契約前に、ホームから詳しい説明を受けますが、「介護に関わる職員体制」「職員の人数や勤務形態」「サービス内容」「利用料金」「入居者の平均年齢や要介護度」など、文字通り、重要なことが記載されています。
最初は、ざっくり何が書かれているかだけでもよいので目を通し、見慣れておくことが大切です。自分だけでは不安という方は、ご家族にお願いして見学にも同行してもらいましょう。
また、見学時に、見落としがないようチェックリストを作っておくと便利です。さらに、気になる点や不明な点など、確認したいことをまとめておきましょう。
※ご参考用のチェックシートがありますので、印刷してご活用ください。
LIFULL介護 老人ホームの見学チェックシート
見学前に電話で事前予約を入れましょう
見学に行くときは、必ず、事前予約を入れてください。忙しい時間帯だとゆっくり時間を取ってもらえない可能性があります。
また、ホームの責任者である施設長がいる日を確認し、同席してもらえるようお願いしておきましょう。電話で予約をすることで、ホーム職員の第一声や、顔が見えない相手に対する対応から、ホームスタッフの接遇を感じ取ることができます。
老人ホーム周辺を散策しておきましょう
ホームへは、ひとりでタクシーで直行するのではなく、可能な限り、ご家族と一緒に公共交通機関を利用し、最寄駅からホームまで散策してみましょう。
散歩できそうな公園や、食料品や生活用品が手に入るスーパーやコンビニが近くにあるか、坂道は多くないか、最寄駅からアクセスしやすいかなど、ホーム周辺の情報収集は、入居する本人だけでなく、訪問する家族にとっても見逃せないポイントです。
見学当日は、歩きやすい履物で行きましょう。また、ホームの内見では、エントランスで靴を脱ぐところや、居室で脱ぐところもあります。着脱しやすいものが好ましいです。
2.見学時のチェックポイント ~共有スペース編~
第一印象が決め手なることも
ホームの生活において、食事やお風呂、レクリエーションやリハビリなど、日中、共有スペースで過ごす時間は少なくありません。
雰囲気や安全性、どのような設備があるかなど確認しましょう。まず、エントランスに入った時に受ける印象の良し悪しも大切です。複数のホームで迷ったら、最後は、空気感や第一印象が決め手になることもあります。
生活しやすい造りになっているか
全体的に、清潔感があり整理整頓が行き届いているか、居室から食堂までの距離は遠くないか、ロビーや談話スペースは立ち寄りやすく、くつろげそうか。
お風呂は、介護状態になっても、座ったままや寝た状態でも入れるような特殊浴槽があるか、家族や知り合いが訪ねてきたときに、ゆっくり話せる応接室があるかなどはチェックしておきたいポイントです。
その他、ホームによっては、カラオケルーム、娯楽室、図書室、運動器具が備えられた機能訓練室、大浴場、理美容室があるところもあります。
共有スペースの充実度は、暮らしの満足度に繋がる重要な部分でもあります。どのような設備があるのか、複数のホームを見て比較してみるとよいでしょう。
館内の掲示物からホームの情報を知る
掲示物にも注目してみましょう。廊下の掲示板には、1ヶ月分のレクリエーションやイベント、食事のメニューなどが張り出されています。
また、廊下に、経営理念が掲げられていたり、入居者が描いた絵や写真、作品などが展示されていたりします。ホームの特色や、入居者がどのような生活を送っているのか、日常を垣間見ることができます。
3.見学時のチェックポイント ~居室編~
居室は一日の多くの時間を過ごす場所です。
安心して落ち着いて過ごせる部屋かがポイントとなります。トイレやベッドサイドに設置されている緊急通報は適切な位置か、お風呂がある場合、浴槽はまたぎやすいか、床は滑りやすくないか。
居室の入口やトイレのドアは重くないか、ドアのタイプは、車いすでの生活を考えて、スライド式の引き戸になっているかなど確認しておきましょう。
また、ホームの中には、トイレのドアがなく、カーテンやアコーディオンカーテンのところもあります。元気な状態で見学に行くと、違和感があるかもしれませんが、介護度が重くなったり、車いす状態になった場合でも生活しやすいように配慮や工夫がされているかという視点で見ることも大切です。
また、ワンルームタイプのホームの場合、小さな収納スペースしかありません。自宅にある物はほとんど持ち込めないと認識しておいた方がよいでしょう。
備え付けの備品は、エアコンや照明器具は付いているところが多いようですが、ホームによっては、ベッドやカーテン、チェストまで完備されているところもあります。標準装備についても聞いておきましょう。
スタッフや入居者の表情を確認する
生活を共にする入居者やスタッフが、どんな人達なのかはとても気になるところです。顔の表情やしぐさから、すべてが分かるものではありませんが、人柄や心情を読み取ることができます。ホームのスタッフは、施設長、介護士や看護師のほか、ケアマネジャー、受付・事務、清掃係、厨房で働く方など様々です。
心地の良い職場環境だと、スタッフも自然と表情も穏やかになり笑顔も出るものです。
一方で、疲れた印象を受ける人が多かったり、誰もが慌ただしそうだと、時間と心に余裕がないのではないかと不安になります。
入居者への声掛けや言葉遣い、ケアの方法や接し方など観察してみましょう。また、談話スペースには、人が集まっているか、楽しそうに暮らしているかなど、入居者の様子も要チェックです。
特徴やサービス内容について質問してみましょう
ホームの見学ができたら、次は、細かなホームの特徴や重要事項について説明を受けましょう。
どんな質問に対しても、的確かつ誠実に答えてくれるか、担当者の人柄やこころざし、ホームに対する愛着をうかがい知ることができます。
説明を受ける際は、ホーム長にも同席してもらいましょう。ホームの責任者として、営業活動、収支管理、職員の採用や育成、安全管理など、ホーム全体を把握し、指揮する重要な役割を担っています。
特に、小規模なホームでは、ホーム長の思いや考えが、直接、経営理念や運営方針に反映されます。管理能力の高さやスタッフとの信頼関係が築けているかなども見ておきたいポイントです。
5.ホーム長に確認しておきたい5つのこと
1.運営理念や事業計画
運営理念は、ホームが目指す方向性と価値観を示しています。一生のお付き合いとなるホームの価値観に共感できるか、ホーム長だけでなく、スタッフ全員に理解され浸透されているかが重要です。
また、いくら居心地がよくても、頻繁に経営者が変わるようなホームでは安心して生活できません。入居率は安定しているか、財務の健全性や、サービス向上に向けた取り組みなどについても教えてもらいましょう。
2.スタッフへの教育体制やケア
特に、介護のケアをしてくれるスタッフのレベルは気になるところです。どのような資格を持っている人が何人くらいいるのか、資格を取るためのサポートはあるのか、認知症や看取りケア、マナー研修など、スキルの向上を目指した教育プログラムを実施しているかなど聞いてみましょう。
知識や技術が高いほど、上質な介護サービスが期待できます。また、子育てしながらでも働きやすい環境が整っているか、健康面や精神面でのサポートがあるかなど、職員への配慮がなされているところは、安定的な人材確保へと繋がります。
ホーム長や介護スタッフ、双方に話しを聞いてみるといいでしょう。
3.トラブルの要因となりやすいお金の話しと退去要件
トラブルの原因になりやすいのがお金に関することです。入居一時金を支払う場合は、途中で退所した場合どうなるのか、毎月の費用のうち、パンフレットに記載されていない、上乗せ介護費やオムツ代、有料となるサービスについて、どれくらい見積もっておけばいいのかなどは、しっかり確認しておきましょう。
退去の要件については、暴力行為や奇声を発するなど、他の入居者の迷惑となる行為や、ホームでは対応できない医療行為が必要となった場合などとしているところが多いようです。
また、3ヶ月以上の入院を退去要件にしているところもあります。実際に退去となったケースがあるのか、ある場合、退去に至るまでの過程が、納得できるものか、精一杯、手を尽くしてくれそうか、確認しておきましょう。
4.夜間の緊急時と看取りの対応
夜間の介護や緊急時の対応も確認しておきましょう。介護職員はいても、看護師が夜間常駐しているとは限りません。
その場合、緊急時には、数分で駆けつけられるところに看護師が住んでいるとか、目の前が協力医療病院なので、そちらに運ばれるなど、対策を取っているところもあります。
また、看取りや終末介護に対応するには、24時間、看護師や介護職員が、協力医療機関の医師と密に連携をはかれる体制を整えておく必要があります。看取りや終末介護の実績があるかや、職員研修を行っているかなどについても聞いておきましょう
5.通院時の付き添いや入院時の対応
協力医療機関の場合、通院時の付き添いや、入退院時の手続きなどは無料でやってくれるところが多いようです。
入院中、毎日、洗濯物を取りにきてくれたり、お見舞いにきてくれるところもあります。協力医療機関ではない場合は、どこまでサポートしてもらえるか、また、有料の場合、どれくらい費用がかかるかも調べておきましょう。
ホーム長に聞いておきたいポイントは、重要事項説明書に記載されている内容が多く含まれています。耳だけでなく、文字を見ながら説明を聞く方が、より理解度が増します。
自宅に戻って、重要事項説明書で内容を振り返れるよう、また、家族に説明できるよう、記載されている場所を示してもらいながら説明を聞き、大切なことはメモしておきましょう。
まとめ
見学前に、しっかりとホームに関する予習をしておくことで、見学の時間を有効に使うことができます。今の元気な状態だけでなく、重い介護状態になった場合、車いす状態になった場合に安心できる住まいかどうかという視点で見学することが大切です。
また、時間の経過とともに記憶は曖昧になってくるので、見学後は、チェックリストに、見たことや聞いたことを思い出して、良かった点、悪かった点を書き留めておきましょう。
たくさんの施設を見ることは大切ですが、見れば見るほど、どこを選べばよいのか迷い出す人も少なくありません。自分にぴったり合ったホームを選ぶために、ホームに求める条件や優先順位を明確に持っておくことが大切です。