- 質問
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私自身が入居する老人ホームを探しています。いま入居を検討している老人ホームには「入居金0円」の月払いプランと「入居金500万円」のプランがあります。
どちらを選んだ方が得なのでしょうか?選ぶ際の注意点などあれば教えてください。
- 回答
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入居金のない「月払いプラン」と最初にまとまった額を支払う「入居金プラン」はどちらが得なのか。これは最終的に何年居住したかによって異なります。
居住年数は入居時に想定することは難しいため、一概に断定できません。
老人ホームごとにプランが違うので、まずは料金説明をしっかり聞き理解することが大切です。家族や親族にも同行してもらい、一緒に説明を聞いてもらったうえで決めるとよいでしょう。
今回は、入居金のメリットや注意点を解説します。入居したい老人ホームの料金プランに迷ったとき、参考にしてください。
- 【目次】
1.入居金を支払うメリット
有料老人ホームの入居金は、入居時に一定期間分の家賃を前払いするという意味合いがあります。
入居金は契約時に一括で支払うため、最初に数十万~数千万円というまとまった現金が必要となります。
月払いプラン(入居金0円プラン)のある老人ホームは、まとまった現金が用意できない方でも入居検討ができるように用意されたプランです。
まずは月払いプランと入居金プランのメリット・デメリットから見ていきましょう
【月払いプラン(入居金0円プラン)】 |
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〇メリット ・入居金が不要なので、入居を検討しやすい ・入居時にかかる費用負担が、入居金プランに比べて少ない △デメリット ・家賃が上乗せされるため、毎月の支払額が高くなる ・いつまで住み続けられるかわからないので、総額でいくらかかるか判断しにくい |
【入居金プラン】 |
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〇メリット ・長く住み続けた場合でも、追加家賃などの「上乗せ金なし」で終身にわたり住むことができる ・入居時に将来の家賃等を前払いすることで、毎月の支払額を入居金0円プランに比べて低く抑えることができる △デメリット ・高額な費用を一括で支払うことになる ・クーリングオフ対象期間(90日)を過ぎた後、短期間で退去した場合は初期償却分の返還金はない |
月払いプランの場合、本来入居金として支払う金額を月額利用料に上乗せして支払うイメージです。そのため、初期費用は掛からない分、月額費用が高額になります。
2.一定年数入居するなら入居金を支払う方が得になる
入居金を最初に支払うのと、月払いプランで契約し月額に上乗せして支払うのとでは、居住年数によって最終的な支払い額が変わります。
一定期間以上入居するのであれば、最初に入居金を一括で支払ったほうが最終的な支払い額は少なく済むことがあります。なぜなら、毎月の利用料に家賃などの「上乗せ金なし」で終身にわたり住み続けることができるからです。
一方で、月払いプランで入居し、毎月の利用料に家賃などの「上乗せ金あり」の場合は、退去するまでずっと上乗せ金がかかり続けます。
下記のグラフは、入居金プラン(500万円、月額25万円)と月払いプラン(入居金なし、月額35万円)との合計金額を比較したものです。
入居金500万円プランは月払いプランに比べ入居時の出費は高額です。しかし総額でみると9年目から逆転します。
仮に10年間住むことを想定すると、最終的に支払う費用は入居金プランの方が割安となります。
3.入居金を支払う前に注意したい3つのこと
①初期償却と償却期間
施設入居の料金説明のなかで、「初期償却」と「償却期間」という言葉が出てきます。聞きなれない言葉ですが、その意味をしっかり理解しておきましょう。
●初期償却
初期償却とは、老人ホームが入居金から一定割合分をもらう仕組みのこと。初期償却の割合は入居金の10~30%程度としているところが大半です。
●償却期間
入居金のある老人ホームには償却期間が設けられています。期間はホームごとに定められていますが、おおむね5年~7年くらいで設定しています。
入居金の総額から初期償却分を差し引いた残額を、償却期間を通じ分割してホーム側が受け取る仕組みになっています。
【Point!】都道府県で異なる"初期償却"の取り扱い |
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法令では、「権利金その他の金品を受領してはならない」と定められています。初期償却がこれに抵触するのではないかと問題になりました。 実情はどうでしょうか。1都3県を例にとってみます。 東京都・埼玉県は「初期償却は不適切」としながらも、東京都は事業者に義務付けも罰則もしていません。埼玉県では新規事業者に対しては一切認めないとしていますが、法改正前に開設されたホームには認めています。 神奈川県と千葉県は明確な算出根拠が示されることを条件にこれを認めています。ただし、必ず「入居金0円プラン」も同時に示すよう求めています。 このように都県によって初期償却の扱いが異なります。今後は法改正を踏まえ取り扱いが変わることも考えられますので、この点も施設選びの判断材料にしましょう。 |
②償却期間内で退去した場合の返還金
利用権方式の場合、入居金は初期償却分を差し引いた残りの金額を毎月償却する仕組みです。
例えば、「償却期間が5年(60カ月)と設定されていて、ご逝去により3年(36カ月)で退去」となった場合、償却していない残り2年分(24カ月)の金額が退去時に返還されます。
これが5年以上入居した場合、返還金はありません(0円)。この返還金の算出方法は老人ホームごとに微妙に異なるのでよく確認しておきましょう。
【Point!】自立者向けホームの入居金 |
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自立(要介護認定なし)のお元気なシニアを対象とした「自立型(健康型)老人ホーム」の場合、70代前半など一般的な老人ホームの平均年齢よりも若い方が入居することがあります。その際、想定居住年数も長期になるので入居金も高額となりますが、償却期間も10年以上と長期間で設定される傾向にあります。 |
③クーリングオフ内容の確認
老人ホーム入居には、クーリングオフという制度が適用されます。これは入居後90日以内に、契約を解除した場合に入居金が全額返金となるというもの。ただし、入居期間中の家賃や食費、介護サービス費などは返還されません。
万が一、「入居したホームが自分に合わなかった」など90日以内で退去することになった場合、入居金は初期償却されずに返還されます。このクーリングオフの内容と入居金返還の規定についても老人ホームによって異なります。
ここまで、入居金を支払う前に注意したい3つのことについて解説しました。
お金はトラブルになりやすいため、内容を理解するまでしっかりと説明を受けましょう。入居者が高齢により理解が難しい場合は、家族や親族も同席して説明を受け、無用なトラブルを防ぎましょう。
4.入居金をめぐるトラブル事例
入居金をめぐるトラブルで多いのは、次のように退去時の返還金によるものです。
・入居一時金が当初の説明通りに返還されない ・退去時に何の説明もなく、「リフォーム代」と称してクロスの張替え代を請求された ・退去時の返還金の精算方法が、契約書に書かれている内容と違う |
返還金に関する説明が不十分なケースや認識のちがい、受け取り方の相違でトラブルが発生しやすくなります。
入居して90日以内のクーリングオフの場合、「全額返還」と書いている場合も注意です。最初に納めた全額が返金されるか、一定の居住費等を差し引いた金額なのかは、老人ホームによっても異なります。
また、クーリングオフ期間を過ぎた後の退去についても、同様に様々な取り決めがあります。老人ホーム側の説明でわからないことはその場で確認しましょう。あとで確認できるよう、パンフレットや重要事項説明書を入手し、よく内容を理解することがトラブル防止に有効です。
5.老人ホームから老人ホームへ。住み替え注意点は
入居した施設に不満があり、老人ホームから別の老人ホームへ住み替えることもあると思います。その際の注意点として、退去時に未償却の入居金は返還されます。ただし、初期償却分が入居時にさし引かれており、返還金だけで、また同等の老人ホームに入居するのは難しいかもしれません。
最初の老人ホーム入居の際、入居金を捻出するため自宅売却した場合だと帰るところがありません。
また、その住み替えで問題が根本的に解決するのか、新しい環境になじめるのか。予想していたよりサービス内容が低下する、といったことが起きることもあります。老人ホームの住み替えは慎重に判断しましょう。
まとめ:老人ホームお金に関する4つの注意点
1.老人ホームの料金内訳を調べ、何に使われる費用なのかを確認する。
2.月払いプランと入居金プランのメリット・デメリットをよく理解する。
3.初期償還と償却期間もそれぞれのホームで異なります。十分に確認する。
4.クーリングオフ期間やしくみも頭に入れておく。
大切な財産をもとに生活する場所を選ぶことになります。
おひとりで悩まずに信頼できる家族・親族にも関わってもらいながら判断すると良いでしょう。