【はじめての方へ】健康診断書は老人ホーム入居の必要書類|検査項目と依頼時の注意点

老人ホームや介護施設に入居する場合、医師が健康状態を記載した書類が必要です。医師が作成する書類は、主に「健康診断書」と「診療情報提供書」です。「紹介状」といった名称も聞いたことがあると思います。

何れも当人の健康状態を示す書類ですが、項目はそれぞれ異なり、入居する施設によって提出する書類も変わります。

ここでは各書類の用途や記載されている検査項目、作成時の注意点について解説します。これらの書類は、入居できるかできないかの決め手となる大事なものです。その内容をしっかり理解して書類の準備を進めましょう。
 

健康状態を把握するための必須書類

老人ホーム入居の決め手となる健康診断書ですが、そもそもなぜ必要になるのでしょうか。

感染症の有無を確認する

健康診断書は、入居を希望する人の健康状態を記載した書類になります。

施設側は、責任をもって健康管理や介護を行う上で、まず施設で対応できる健康状態であるかの確認をします。さらに感染症の有無を確認し、他の入居者の健康に影響を及ぼすことがないかを確認するために必要なのです。

ショートステイでも必要な場合がある

介護施設に長期入居するだけでなく、短期間滞在するショートステイでも基本的に健康診断書が必要です。

施設によって異なりますが、老健(介護老人保健施設)や療養病床(介護療養型医療施設)、介護医療院といった、医療系の施設であっても、健康診断書または診療情報提供書といった書類の提出を求められます。

ショートステイ(短期入所生活介護)とは?料金や活用法について

健康診断書、診療情報提供書、紹介状の違い

医師が作成する書類にはいくつかの種類があります。それぞれの違いについて解説していきます。

健康診断書とは

健康診断書とは、当人の健康状態が記され老人ホーム等へ入居する際に必要となる書類です。主に、施設側が書式を用意し、それを病院の医師に依頼して書いてもらいます。

主に入居の可否について判断される重要書類です。診断書の作成費用は健康保険の適用外で、全額自費負担になります。また、診断書記載に関わる検査もすべて自費となり、文書作成料と検査代で計1万~2万円くらいかかります(詳細は後述)。

診療情報提供書、紹介状とは

よく耳にする「紹介状」の正式名称が「診療情報提供書」です。これは、主に医師が他の病院の医師宛に作成するものです。

その内容は、当人の氏名や生年月日、住所、診療の経過や服薬内容等が記載されています。診療情報提供書は医療保険の対象となり、1割負担の方で250円と費用負担が安くすみます。

一部の介護施設では、書式の表題は診療情報提供書でありながら、健康診断書の検査項目が含まれているところもあります。しかし、一般的には検査結果などを記載する書式ではありません。

有効期限は3カ月

健康診断書の有効期間は3ヶ月(90日)です。これは検査結果が有効となる期間が3ヶ月と定められているからです。検査から時間が経過することで、健康状態に変化が生じる可能性があります。

健康診断書を作成するときにも、3ヶ月以上たった検査結果は記載できないため、この3ヶ月という期間は覚えておきましょう。これを1日でも過ぎてしまった場合、検査からすべてやりなおしになります。

健康診断書以外の書式でも、要件を満たせば入居できる

健康診断書は基本的にどの介護施設でも所定の書式を用意しており、それを受け取り医療機関に受診して検査結果を記入してもらいます。もしも複数の施設を平行して入居検討する場合、書式が異なると作成する枚数も増えて金銭的な負担も大きくなります。

施設によっては、必要な検査結果の記載があれば他施設の書式でも使用できる場合があります。もし複数の施設を同時に申し込みする場合には、手持ちの健康診断書で問題がないか事前に確認してみましょう。
 

作成の手順

では実際に健康診断書を求められた場合、どのように作成したら良いのでしょうか。その手順と、作成する上で知っておきたいポイントを紹介します。

診断書の作成はかかりつけ医に相談

健康診断書をどこで作成するのか。かかりつけ医がいる方は、まずその先生に健康診断書の作成をお願いしてみましょう。

かかりつけ医がいない方は、お近くの病院で作成してもらえないか相談してみましょう。「老人ホームへ入居するので健康診断書を作成してほしい」という旨を伝え、施設側から受け取った書式を渡すとスムーズです。

健康診断書ができるまで1~2週間かかる

一般的に、作成を依頼してから完成するまで1~2週間はかかります。その理由は、検査の内容によっては結果が出るのに時間がかかる項目があるからです。

また、多忙な医師が外来対応中に書くこともなかなか難しいようです。外来の患者が終わってから作成するため、時間がかかる場合もあります。

健康診断を受けたその日に診断書が出来ると思わずに、余裕を持って作成依頼をするようにしましょう。

健康診断書作成にかかる費用

健康診断書の作成料は病院が自由に設定してよい費用のため、各病院ごとに異なります。

作成料の相場は5000円~8000円くらいですが、レントゲンなどの検査費用も別途必要です。検査項目の数によって異なりますが、文書作成料と検査代で計1万~2万円くらいかかります。

また診療情報提供書という書類を、入居する時に必要になった場合は、文書料は医療保険が適応され、費用負担が軽減されます。

文書作成料は、医療保険が1割負担の方の場合、250円となっています。必要な書類の名称が、健康診断書なのか診療情報提供書なのかによって、違ってきますので、注意しましょう。

注意点

前述のように、検査から診断書の受け取りまで1~2週間程度かかりますので、すぐに受け取れないという点は注意が必要です。

総合病院とクリニック・診療所に依頼した場合とで、完成するまでの時間に大差はありません。

しかし、クリニック・診療所にレントゲンを取れるCTなどの検査機器がない場合は、総合病院にCTのレントゲンだけ受けに行く必用があり、その結果が書類に反映されるまで相応の時間がかります。作成する病院を選ぶときには、CTがある病院を選ぶと良いでしょう。

また、複数の老人ホームの入居検討をする方は、健康診断書をコピーして使ってよいか事前に医師に確認をするようにしましょう。
 

健康診断書の記載項目

入居に必要な健康診断書は、どのような内容になっているのでしょうか。健康診断書の項目を見ていきましょう。

血液検査・尿検査
血液検査、尿検査合わせて、約24の検査項目があります。血液や尿は、一回採取すれば、すべての検査が可能になります。ただ、医師が検査の依頼を出すときに、どの項目の検査を行うかを指示しないといけないため、検査前に健康診断書を見せて、必要な血液検査・尿検査の項目を伝えるようにしましょう。
胸部レントゲン
胸部レントゲンは、CTで胸を撮影し、胸部にある臓器に異常がないか調べる検査です。肺や心臓などの、循環器や呼吸器の病気がないかを判断する検査です。CTがないと検査ができないため、ない場合は、別の病院にCT検査を受けに行く場合があります。
感染症の有無
MRSAや結核などの感染症がないかを検査します。感染症の検査の中には、MRSAのように検査結果が出るのに1週間くらいかかるものもあります。健康診断書の完成に時間がかかるのは、この感染症の検査結果に時間がかかるという理由もあります。施設内に感染症が蔓延しないように、入居時にチェックされます。
薬の内容
薬の情報が記載されます。老人保健施設への入居のため、健康診断書が必要な場合は、この項目によって入居の可否が決まる場合があります。老人保健施設は、薬代を施設で負担する形になっているため、高価な薬を飲んでいると、入居できない場合があります。

介護施設が注目する項目は「感染症の有無」

血液検査や胸部レントゲンなど、どれも必要な項目ではありますが、感染症の有無については入居の可否に深く関わるため、介護施設側も注目して見る箇所です。次点では薬の内容を確認したり、注射の有無といった点も確認したうえで、総合的に入居可否を判断しています。

老人ホーム入居時に必要な健康診断書とは?

この記事の制作者

森 裕司

著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。

介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム(特養)、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、その他介護施設や老人ホームなど、高齢者向けの施設・住宅情報を日本全国で延べ57,000件以上掲載するLIFULL 介護(ライフル介護)。メールや電話でお問い合わせができます(無料)。介護施設選びに役立つマニュアルや介護保険の解説など、介護の必要なご家族を抱えた方を応援する各種情報も満載です。
※HOME’S介護は、2017年4月1日にLIFULL 介護に名称変更しました。

情報セキュリティマネジメントシステム 株式会社LIFULL seniorは、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO/IEC 27001」および国内規格「JIS Q 27001」の認証を取得しています。