老人ホーム入居を考えたら、まずやるべきこととは?

老人ホームへの入居を決めたら、次のステップは「老人ホームを探す」ことだと多くの方は考えられるかもしれません。

たしかに間違いではないですが、より効率的に、納得のいく老人ホーム探しをするために、「探す前にやるべきこと」があります。

LIFULL 介護編集長の小菅が解説します。

老人ホーム探し、まずは何から手を付ければ?

老人ホームへの入居を前向きに検討しはじめた時に、まず手をつけていただきたいことが3つあります。それは以下の通りです。

  • 親の収入・資産の確認
  • 探すエリアを決める
  • 老人ホームの知識をつける

私は、これまで入居相談員として様々な方の老人ホーム探しをお手伝いをしてまいりました。経験上、この3つを先に押さえておくだけで、格段に探す効率がアップし、短い期間で納得のいく老人ホーム探しができます。これから一つずつ解説していきます。

親の収入・資産の確認

多くの場合、子が親の老人ホームを探すことになります。まずは探す老人ホームの価格帯を絞り込むため、親の収入と資産を確認しましょう。年金収入の方が大半なので、年金は年間いくらなのか確認できるといいですね。

基本的に、老人ホームの毎月の費用が年金で賄えれば一番安心ですね。「親の年金がひと月あたり15万円なので、月15万円で入れる老人ホームを探したい」といったご相談は非常に多くありました。

有料老人ホームに関しては、入居一時金というまとまったお金を支払うところが多く見られます。その部分は預貯金から充てる方が多いです。

預貯金と毎月の収入以外に、株や債権といった金融資産や、一戸建てのような不動産がある場合は、それらを売却して今後の月々の費用に充てていく方も中にはいらっしゃいます。

資金から居住年数をシミュレーション。最低5年は住めるところを。

収入、資産が確認できると、探すべき老人ホームの価格帯がわかってきます。居住年数をシミュレーションしてみて金額的に「ここなら5年暮らせる」と考えられるところが良いでしょう。

というのも、今多くの有料老人ホームで設定されている入居金には、償却期間が設けられているんです。償却期間とは「期間の途中で退去したら、残った入居金をお返ししますよ」という制度のことで、多くのホームでは3~5年程度で設定されています。

これは、だいたい入居して5年以内にお亡くなりになる方が非常に多いからです。

ただし日本人の平均寿命が延びていますので、5年以上入居する方も当然いらっしゃいます。70代前半と、比較的お若い方の場合は、5年どころか10年、もしくはそれ以上の期間入居する可能性も高いです。

入居時の年齢が若い方の場合は、最低5年、場合によっては10年以上入居する可能性を想定しておきましょう。毎年、日本政府が日本人の平均寿命を発表していますので、そのデータと照らし合わせて目安にしてみましょう。

探すエリアを決める

次に、老人ホームを探すエリアを決めます。

傾向として多いのは、面会に行く方の自宅近くにするケースですね。一方、当然地元に残りたいという親御さんもおられ、ご本人の意見を尊重して、地元の老人ホームに入居させるケースも確かにあります。

ですが、遠くのホームに入居すると、面会が大変です。季節の変わり目に着替えを持っていったり、嗜好品の差し入れを持っていったり、毎週のように行くことになります。そうすると、一回往復するだけで2、3時間かかる距離にあると、大変ですよね。交通費もバカになりません。

後々の面会頻度を考慮すると、可能な限り面会する方の家の近くで探しておいた方がいいと思います。

入居先から病院に入院することもある。その時の着替えは?

あまり考えたくはないですが、急な体調の変化、持病の悪化などで入院する可能性も当然出てきます。その時「入院中の親の洗濯物は誰がやるの?」という話になるんですよ。

老人ホーム側の有料オプションでお願いできる場合もあれば、それはご家族でやってくださいと言われることも当然あります。その時に、頻繁に病院まで通えるかどうかも考慮していた方がいいですね。

住み慣れた街の老人ホームに入っても、外出できないことも多い

老人ホームに入居すると、ホームの外に出る機会は、どうしても限られます。

その方の身体状態によって、どうしても付き添いが必要な場合があるからです。施設がそこに人員を割けないケースもありますし、別途有料のオプションで散歩などの付き添いを提供しているケースもあります。

ですから、ホームの立地にこだわるより、その施設内でいかに快適に過ごせるかに重きを置いた方がいいのです。

老人ホームの情報収集をする

最後に、ざっくりでいいので「親の介護ができる施設の種類」を知っておきましょう。親の介護度に合わせて、入居できる施設種別を簡単に把握しておくといいと思います。

高齢者住宅と一言で言ってもたくさん種類があります。それらをすべて知って網羅したい、理解したうえで施設を探したいとなると、きちんと理解するまでには半年くらいかかってしまいます。

また、施設種別による生活の違いは大きくないんです。なので、すべての施設種別を理解する必要は、私はないと思っています。

公的な施設にこだわりすぎるのも考えもの

また、「公的か民間か」という選び方をする人もいますが、ここにもあまり差はありません。

たしかに公的な老人ホームの方が入居費用は安く抑えられます。収入が少ない方であれば介護サービスの負担限度額認定の制度を使って、食費や居住費を下げることも可能です。

たしかにそういった部分はいいと思いますが、実際に提供される介護の内容は、民間と公的でそれほど変わらないんです。

入居のしやすさの観点からも、あまり公的施設にこだわる必要はないと思います。公的施設は、やはり入居待ちが発生しているところもあり、こだわりを持ち続けてしまうといつまで経っても入居できない状態になりかねません。

簡単に「入居できる要介護度の条件」だけを把握しておこう

最低限、把握しておきたいのは入居できる条件です。施設種別ごとに入居できる条件は少し異なり、介護度だけでも把握しておくと良いと思います。

例えば認知症の方を対象とした施設である「グループホーム」は、入居条件が「要支援2から」なんですよね。かたや特別養護老人ホームでは「要介護3以上」です。主な施設と入居できる要介護度を簡単にまとめてみました。

施設種別 入居条件
グループホーム 要支援2〜
特別養護老人ホーム 要介護3〜
介護老人保健施設 要介護1〜
介護付き有料老人ホーム 要支援1~
サービス付き高齢者向け住宅 多くは自立〜

ざっくりと施設の特徴も把握しておこう

また、要介護度に合わせてそれぞれの施設がざっくりどんな特徴を持っているのかも把握しておきたいですね。比較的介護度が軽い方や、自立状態の方ならサ高住、住宅型有料老人ホーム。手厚く介護が必要であれば介護付き有料老人ホームや特養がおすすめです。また、認知症があるけれど身の回りのことは自分でできる方にはグループホームが良いでしょう。

ただし、介護付き・住宅型・特養でも認知症の方の受け入れはしているので、グループホームだけが認知症の方向けの施設ではないことは、抑えていただきたいポイントです。

要介護度に加えて、簡単な特徴を下記にまとめてみました。

施設種別 入居条件 特徴
グループホーム 要支援2〜 認知症の方が共同生活をする施設
特別養護老人ホーム 要介護3〜 介護度が重い方の施設
介護老人保健施設 要介護1〜 在宅復帰を目指した施設
介護付き有料老人ホーム 要支援1〜 介護が必要な方の入居施設
サービス付き高齢者向け住宅 多くは自立〜 主に、自立、要支援の方の施設

賢い老人ホームの探し、おすすめは専門家に頼ること

老人ホーム探しは、ケアマネも自治体も専門家ではない

施設種別が分かる状態になったら、実際に施設を探す段階になります。

介護サービスの窓口は自治体だったから、介護施設の情報も自治体や行政から入手できる…と思いきや、施設について役所は十分な情報を持っていません。電話帳のような簡素なリストをもらうことはできますが、入居対象者に合わせた最適な施設をお勧めしてはくれません。

同じことはケアマネジャーにも言えます。施設を探すことは、厳密に言えばケアマネの仕事の範囲ではありません。地域の施設の情報を熱心に収集して、おすすめを紹介してくれるケアマネもいますが、少数派です。

ケアマネジャーがいる事業所には、周辺の老人ホームから営業が来ます。ですので、だいたいどこにどんな老人ホームがあるかは知っていますが、ほとんど実際に施設の中を見ているケアマネジャーはいません。

ケアマネ自身が営業マンの話しか聞いていない状態で、老人ホームを紹介することもしばしば。「ケアマネジャーさんが紹介してくれたから、きっといいところだろう」なんて期待していくと、ミスマッチだった…ということもあります。

専門家を経由することで時短になる

そこで手っ取り早いのは、やはり老人ホーム紹介会社に問い合わせてみることです。

「うちの親はこういう介護度で、こういう困っていることがあるのですが、このエリアならどの老人ホームがお勧めですか?」

「うちの親はこんな趣味を持っていて、こういうことを続られる老人ホームを探しています」

「1ヶ月に1度くらいは家族と一緒に車に乗ってどこか外食に行けるといいな」

など、入居後の生活に関する希望を伝えてくだされば、紹介会社の相談員はその希望に近い候補をいくつか挙げてくれるでしょう。

もし相談員を介さずに一人で探していた場合は、希望の条件が叶えられるホームかどうかは自分で一軒一軒確認しなきゃいけないですよね。

でも、条件は良くても見学に行ってみたら「なんとなく雰囲気が暗かったので、ここには入居できないな…」ということも起こりえます。そういったことを何度も繰り返して、手間ばっかりかかってしまい、なかなかいい施設に巡り合えない方もいらっしゃいます。

こうした手間を全部専門家に外注して、絞り込んだ状態で提案してもらえれば、時短になると思います。

おすすめは複数の相談員と話してみること

もちろん、相談員も人間ですので、提案の質にはバラつきがあります。たとえば入社して3ヶ月の相談員と、入社3年以上の相談員だと知識量がまったく違います。そこで、複数の紹介センターに問い合わせてみることがおすすめですね。

たとえば紹介会社2社に問い合わせてみて、同じ条件を伝えた場合にどういう提案が来るかを比べてみてもいいと思います。そして「どうしてこの施設が私にとっていいと思ったんですか?」と、提案した理由を聞いてみてもいいと思うんです。

そうするといろいろな回答が出てくるので、それを見極めてから、納得感のある方に見学をお願いするといいと思います。

LIFULL 介護にも入居相談員がいます

Webで老人ホームを探してみると、多くのサイトに「入居相談窓口」があるので、そこに連絡してみるのも良いと思います。LIFULL 介護にも、希望を伝えると最適な老人ホームを提案してくれる入居相談員がおりますので、お気軽にご相談ください。

LIFULL介護相談窓口

専門スタッフが介護施設についてご相談をお受けします。

0120-652-140( 9時~18時、土日祝日休み )

クチコミは思ったよりアテにならない

施設を探すときに、入居している方や地域での評判を知りたい方は多いです。しかし、クチコミはあまりあてにならないと考えています。

というのも、ある人にとってはいいと思える老人ホームも、ある人にとって「住み心地は最悪…」ということもあるのです。

たとえば、要介護度が重い方にも手厚いサービスを提供しているホームがあるとします。人員体制が手厚く、24時間看護師がいるような老人ホームは、確かに要介護度の重い方には安心かもしれません。

しかし、お元気な方が暮らしている場合「このホーム、状態の重い方が多くて、お話し相手がいない。認知症の方も多いし、私もいつかああなるのかな……」なんて思ってしまうわけです。

そのため、お知り合いの方から「あそこの老人ホームはいいよ」と言われた時は、「事実」と「主観」に分けてその感想を捉えることが大事です。

たとえば「雰囲気がよかった」「食事がおいしかった」「スタッフの人みんないい人でした」など、これらは全部「主観」なんです。ですので「あ、分かりました。あなたはそう思ったんですね」と捉える必要があります。

一方「ここの老人ホームはまだできて2年目だから新しい」「浴室に機械浴があるから、もし将来寝たきりになっても大丈夫」「施設長が元看護士だから医療的な知識があって安心」など、これらは「事実」ですよね。なので「じゃあ、それは参考にしておこう」と捉えたらいいと思います。

また、インターネットのクチコミを参考にされる方もいらっしゃいますが、悪い評判は書き込まれやすいものです。クチコミや地域の評判が良くない施設でも、一度見学をしていただき、ご自身の目で判断されることをお勧めします。

まとめ

あらためて、これまでのお話をまとめると以下の通りです。

老人ホームを探す前に最低限おさえておきたい3つのこと

  • 親の収入・資産の確認
  • 探すエリアを決める
  • 老人ホームの情報収集をする

賢い老人ホーム探しのコツ

  • 老人ホーム探しで時短を望んだら、紹介会社を複数利用するべし
  • クチコミ情報は「主観」と「事実」を分けて理解するべし

老人ホーム探しは、新しい住処を探す、人生の中でも大きな出来事です。LIFULL 介護では、皆様が納得のいく老人ホーム探しができることを願っています。

この記事の制作者

小菅 秀樹

著者:小菅 秀樹(LIFULL介護 編集長/介護施設入居コンサルタント)

介護施設の入居相談員として首都圏を中心に300ヶ所以上の老人ホームを訪問。1500件以上の入居相談をサポートした経験をもつ。入居相談コールセンターの管理者を経て現職。「メディアの力で高齢期の常識を変える」を掲げ、介護コンテンツの制作、セミナー登壇。YouTubeやX(旧Twitter)で介護の情報発信を行う。

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