【ケアマネが解説】デイサービスを拒否する母を楽しく通わせる5つのポイント
デイサービス(通所介護)は、要介護高齢者が自宅から通い、利用者同士の交流や、レクリエーションや運動を行うことで心身の活性化をはかります。今ある身体機能を維持していくためにも有効な、介護サービスのひとつです。
“今までできていたことができなくなってきた”といった際に、デイサービスの利用を考える方もいらっしゃるかと思います。
しかし、家族の心配とは裏腹に、母親が「デイサービスに行きたくない」と拒否する場合も家庭では多くみられます。
母親の気持ちに寄り添いながら、デイサービスを勧めるうえでの注意点や、うまくいくポイントをみていきましょう。
デイサービスに通うメリット
身体機能の維持、向上が期待できる
加齢とともに身体機能が低下し、今までできていたことができなくなってしまうことがあります。その状態のまま生活を変えず自宅に閉じこもったりすると、運動機能や認知機能の更なる低下にも影響します。
デイサービスの利用が身体を動かす良い機会となり、適度な負荷が筋力維持にも繋がります。
また、デイで行われるレクリエーションを通じて、ほかの利用者やスタッフとコミュニケーションをとること。さらにほかの利用者やスタッフと関わることにより人間関係などを考えることで脳が刺激され、認知症予防にも良い影響をもたらします。
デイの利用は家族の休息(レスパイト)の時間になる
親がデイサービスを利用している時間は、介護をしている家族にとって休息の時間にもなります。用事を済ませたり、その間に仕事へ行く方もいらっしゃると思います。
また、介護に時間を費やして、友人関係など人とのつながりを持つことができない介護者も多いはず。親がデイに行っている時間は、家族以外の人と会い気分転換を図ることも大切です。
親しい人であれば、ときには介護のグチをこぼしても良いのです。介護は一人で抱え込んでしまうと共倒れの危険性も潜んでいます。気持ちがリフレッシュできるよう、デイを利用している時間を有効に使いましょう。
母親がデイサービスを拒否する理由
メリットも多いデイサービスですが、どんなに家族が良いと思っていても、実際に行くのは母自身です。母が行きたくないと思う理由もあるでしょう。
そう言っている母を、無理やり行かせるわけにはいきません。まずは、なぜ母がデイサービスに行きたくないと思っているのか、母の気持ちになって考えることが大切です。
どんなところなのか想像できない、わからない
初めての人にとっては、デイサービスがどんなところなのか、どんなことをするところなのかも想像できないはずです。
母にしてみると、「得体の知れないところへ連れていかれる」と思っているかもしれません。または母の友人や近所の方から、デイサービスについて聞いていることも考えられます。
もしもデイについて、嫌なところ。例えば「姥捨て山だ」という風に聞いていたら、そのような負のイメージを抱いているかもしれないのです。
まずはデイサービスについてどう思っているのかを確認し、負のイメージしかないようであれば改善できるよう、デイの実情を伝えてあげましょう。
そのとき、デイのパンフレットやホームページなどを見せることで、どういった場所かイメージしやすくなると思います。
新たな環境は誰もが不安に感じるもの
新しいことを始めるとき、誰でも一歩踏み出す勇気が必要です。人生経験の長い親とて例外ではありません。特に、今まで一日の大半を自宅で過ごしていた方の場合、出かけることにも不安であったり、億劫に感じることがあると思います。
このように、母の生活環境が大きく変わるのです。デイサービスでは、家族以外の他者と会い、コミュニケーションをとることになります。そのような精神的負担もかかることも理解しておきましょう。
気持ちが前向きになる5つのポイント
ここまでデイサービスに対する、母の思いについて見てきました。
その思いを理解したうえで、これからあげる注意点・ポイントを意識して、母とデイサービスについて話をしてみましょう。
1.母が行きたくなるデイサービスを見つける
デイサービスには、通うところによって、提供しているサービス内容が変わってきます。
例えば、フラワーアレンジメントや手芸など、趣味を楽しむことができるデイサービスや、マッサージやエステ・化粧・ネイルアートを受けられるデイサービスもあります。
こうしたサービスを行っているところがあるかどうかは、地域によって異なりますので、ケアマネジャーや地域包括支援センターに聞いてみましょう。
母が若いことにやっていた趣味や、今やってみたいことなど聞き、それが行えるデイサービスがあると気持ちも前向きになってくれるのではないでしょうか。
まず家族として、母が今どんなことをしたいのか、楽しみとなることは何かを知っておきましょう。
2.行きたくなるようなデイサービスの勧め方
デイサービスを実際に勧めるときには、「行かせること」に一生懸命になってはいけません。これが最大のNGポイントです。行かせることを全面に出してしまっては、母も構えてしまいます。
そのため、母が行ってみたいと思ってもらえるように話すことを意識しましょう。「デイに通うことが母の生活の質を向上させる」「引いては母の幸せにつながることだ」と思いながら話しをすると、その思いが母にも伝わるものです。
また、1度の会話で結果を出そうとせずに、母が理解できるようにゆっくり話し、考える時間を作ってあげるようにしましょう。
3.交流機会を増やすことから始める
デイサービスを勧めても、拒否されることが続くようでしたら、まずは家族以外の人に会う機会を設けたり、介護サービスに慣れることから始めてみてはいかがでしょうか。
外へ出ることに抵抗があるようなら、自宅で受けられる訪問系の介護サービスの利用から始めてみるのもひとつです。
訪問系の介護サービスとは、主に「訪問介護」「訪問看護」「訪問リハビリテーション」があります。訪問して介護サービスを提供してくれるスタッフと母との信頼関係がサービスを利用し続けることで、深まっていきます。
信頼関係ができたスタッフから、「デイサービスに行くと、色々な方と出会えて楽しいところですよ」などと母に話してもらうことで、母の気持ちが前向きになり、行きたいと思ってくれるかもしれません。
家族がしつこくデイサービスを勧めると母の気持ちとしては「私を邪魔と思っている」などと思うかもしれません。しかし信頼する他人から言われることで、歪んだ形ではなくすんなりと話しを聞いてくれる場合も多くあります。
訪問看護について詳しく見る 訪問リハビリについて詳しく見る4.人の役に立ってほしいと話をしてみる
加齢や病気で身体が不自由になったとしても、誰しも人のお世話になることは嫌なものです。逆に、「誰かのお世話をしたい」「人のためになりたい」「役に立ちたい」と思う気持ちはどんな方にもあるものです。
その気持ちを大切にして、デイサービスを勧めるときに、「デイサービスに来ている人を励まして、元気にさせてきてほしい」「デイサービスで困っている人の手伝いをしてきてほしい」などと話しをしてみて、社会的な役割をもつ場所として、デイサービスを勧めてみることも良いでしょう。
5.家族の思いを伝えてみる
それでもどうしても拒否する場合、家族の思いを伝えてみましょう。
例えば「お母さんが弱っていくのが心配で仕事も家事も手につかないから、私たち家族のためにもデイサービスに通ってほしい」というような勧め方です。
大事なのは、家族のために通ってほしいということです。親は家族に心配をかけたくないものです。その気持ちを意識しながら、話しをすることで「家族のためにも、一度行ってみようかな」と思ってくれるかもしれません。
母親の気持ちに寄り添いながらデイを勧めよう
ここまでデイサービスを拒否している母に、どのような勧め方をしたらよいかをご紹介してきました。拒否している母をデイサービスに行かせてよいのか、悩んでいる方もいるかもしれません。
デイサービスに通うことで、身体機能を維持・改善するだけでなく、多数の人と交流を持つことで認知症の予防にもつながります。
当初は拒否をしていても、一度デイサービスに通ってみると「楽しい」と感じたり、友達ができたりするものです。
通っているうちに「来てよかった」と思える瞬間も多くありますので、将来的に母のためになることを願い、気持ちに寄り添いながらデイサービスを勧めてみましょう。
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この記事の制作者
著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)
株式会社HOPE 代表取締役
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。