【ケアマネが解説】遠方に住む父の介護|備えておきたい5つのポイント

上京や結婚を機に実家を離れ、生活環境が変化することにより父親と遠距離になることがあります。必然的にコミュニケーションも減少し、日々の変化や父親に何が起こっているのか把握することが難しくなります。

父親が年を重ねていくうちに、徐々に介護が必要な状態になっていくかもしれません。そうなる前に、遠距離だからこそ備えておきたい5つのポイントをご紹介します。

1.父親のライフスタイルと経済状況を知る

遠距離になると、父親がどのように1日を過ごしているのか、経済状況はどうなっているのかわからなくなります。父親の生活をある程度把握しておくと、いざという時の対応に役立ちます。

どのような点を知っておいた方がいいのか、みていきましょう。

1日の生活リズムを把握する

まず確認しておきたいのは下記の3点。

(1) 起床・就寝時刻

(2) 朝・昼・晩の食事の時間

(3) 主な外出先

なぜこうした事の把握が必要かというと、1日の生活リズムを知ることで父親の異変に気づきやすくなるからです。

例えば近所の方から、「もうお昼なのに、まだ窓のシャッターがしまったままだけど大丈夫ですか?」といった連絡が入ったときに、「普段は起きている時間なのにおかしい」といった予測ができるようになります。

また、あらかじめ食事の時間を確認しておけば、仮に電話したけど出なかった場合、外出してるのか?外出先で倒れていたり、入院している可能性はないか?あるいは自宅で倒れているかもしれない、などといった予測にも繋がります。

経済状況を確認

介護が始まるといくら必要か、考えたことはありますか?

介護とお金は切っても切れない関係です。介護サービスは所得に応じて総額の1~3割負担で利用することができますが、それでも、最低限のお金が必要になってきます。

また、入院や介護施設に入所するといった場合には、数十万円というお金が毎月支払いに消えていきます。父親がどのくらい収入があるのかを事前に把握しておくと、いざという時の経済的な備えができます。

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2.父親の自宅周辺で相談できる人をみつけておく

父親と遠距離になると、すぐに駆け付けることが難しくなります。そのため、父親の自宅近くに相談できる人がいれば、何かあった際に様子を見に行ってくれるかもしれません。

また、父親に困り事や悩みがあったときに「家族には迷惑をかけたくない」という意識が先行し、家族には話さないこともあります。家族には話さない悩みであっても、友人やご近所の方にはホンネで話をしているかもしれないのです。

友人・近所の方

父親の友人や近所の方は、万が一の場合に一番お世話になる方といえるでしょう。

そのため、お盆や年末年始の帰省時にはキチンとご挨拶をしておくことをオススメします。

その時には、「些細なことでも結構です。何かあれば連絡してください」と家族の連絡先を伝えておくことで、父親の友人や近所の方も気軽に電話することができます。

小さな異変があったときや、家族には話してくれない困りごとや、悩み事を聞いたときには教えてくれるかもしれません。

ただ注意しておきたいのは、友人や近所の方もあくまで厚意でしてくれることです。「父に異変があったのに連絡もくれなかった」などと相手を責めることだけはやめましょう。

民生委員、地域包括支援センター

民生委員、地域包括支援センターは、父親の友人や近所の方に比べると、公的な立場で支えていただける方になります。

地域包括支援センターは、介護が必要な状況になったときに、介護保険の申請を行ってくれます。また、介護サービスを利用するための手続きも行ってくれます。介護の相談窓口と覚えておいてください。

次に民生委員ですが、主に以下のような活動を行っています。

  • 高齢者宅への家庭訪問(訪問頻度は市区町村によって異なります。65歳以上の見守りを希望するおひとり暮らしの方は月1回以上訪問)
  • 生活の困りごとを聞き、福祉サービスなどの情報を教える
  • 支援が必要な方を地域包括支援センターへとつなげる

民生委員の見回りで、「認知症が進んでいて、あまり食事をしていない」や「病院に行っていない」など、家族の協力が必要な場合には連絡をしてくれます。

また、地域包括支援センターと連携し、地域の高齢者の困りごとを解決できるようにアドバイスしてくれることもあります。

地域包括支援センター、民生委員は父親の住んでいるところによって、管轄や担当が変わります。事前に確認しておきましょう。

地域包括支援センターについて詳しく見る

3.かかりつけ医にも挨拶をしておく

持病を抱える父親の場合は特にやっておきたいことです。父親が病院に行くときに一度は付き添い、ご挨拶とともに家族の連絡先を伝えておきましょう。これは、かかりつけの先生にとってもありがたいことなのです。

例えば、病気が悪化し検査が必要だが、父親1人では検査しにいけない、といった際に家族の連絡先がわからないと、検査もできずご本人も先生も困ってしまいます。

また、体調が急変したときに連絡先が分からないことで、家族への連絡も遅れてしまうことも十分考えられます。少なくとも1年に1回程度は先生とコミュニケーションをとっておくことをオススメします。

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緊急医療情報キットの設置

市区町村で配布している「緊急医療情報キット」をご存知でしょうか。これは、ペットボトルのような筒状の形をしており、冷蔵庫で保管します。その中には、緊急時の家族の連絡先、かかりつけ医の情報、服用している薬の情報などを記載した用紙などを入れておきます。

万が一救急隊が父親宅へ来た時にこれがあれば、医療情報や家族状況がわかるため、適切な一時対応へと繋がります。ぜひとも用意しておきたいものです。

ただ、注意が必要なのは、市区町村によっては、緊急医療情報キットを配布していない場合があります。まずは父親の住んでいる市区町村へ、緊急医療情報キットを配布しているか確認してみましょう。

緊急通報システムの設置

おひとり暮らしや高齢世帯向けに「緊急通報システム」というボタン付きの箱型の機械があります。これは電話回線を使用した機器で「胸が痛い」「動けない」など、緊急時に自分でボタンを押すことで、救急隊や民間の警備会社などにつながるシステムです。その後、救急隊や警備会社などが自宅に駆けつけて必要な支援をおこないます。

これも市区町村によって利用条件が変わりますが、無料で利用できることもあるので市区町村へ確認してみましょう。

4.情報通信技術(ICT)を活用し父親の様子を確認

父親は「家族に負担をかけたくないから」と、自分から連絡してくることはあまりないものです。そのため、父からの連絡を待つのではなく家族から定期的に連絡を取るなどし、普段からコミュニケーションをとっておくことが大切です。

連絡を取る手段として、みなさんは何が思いつきますか?

おそらく真っ先に思いつくものは電話でしょう。しかし、モノとインターネットを融合させた情報通信技術(ICT)が進んでおり、高齢者も使いやすい機器など様々な連絡方法があります。

スマートフォンなどのビデオ通話

ここ最近は、スマートフォンやタブレット端末が急速に普及しており、高齢者も利用する方が増えてきました。

ビデオ通話機能も標準で付いている端末が多く、声だけでなく顔色や表情などから健康状態が確認できます。父親としてもビデオ通話で孫の顔が見えたりすると嬉しいもの。このように、コミュニケーションツールとしても喜ばれると思います。

安否確認ができる情報通信技術

家電製品もインターネットにつながり、安否確認ができる機能がついているものが販売されています。

「湯沸かしポット」や「フォトフレーム」、「照明器具」などに通信機能がついており、一定時間家電の利用がない場合に、自動的にメールを家族に送ってくれるものです。

このような家電製品もうまく利用して、父親の生活を見守っていきましょう。

5.いざという時のサポート体制を話し合っておく

要介護状態になったときを想定し、家族内で誰がどのような役割をするのかも、介護になる前に話し合っておきましょう。

先にご紹介した通り、経済的な負担もあります。父親の年金だけでは足りない場合や、家族の金銭援助が必要なときがあるかもしれません。

介護が必要になってから話し合うのでは遅いのです。役割分担を事前にすることで、家族内のもめごともなく、父親の介護について安心してサポートすることにつながります。

介護は時間との勝負です。早く対応するほど、いい結果となります。これをきっかけに家族内で考えてみましょう。

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この記事の制作者

森 裕司

著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。

介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム(特養)、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、その他介護施設や老人ホームなど、高齢者向けの施設・住宅情報を日本全国で延べ57,000件以上掲載するLIFULL 介護(ライフル介護)。メールや電話でお問い合わせができます(無料)。介護施設選びに役立つマニュアルや介護保険の解説など、介護の必要なご家族を抱えた方を応援する各種情報も満載です。
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