シニアの一人暮らしにマンションはおすすめ?メリットやデメリット、選び方を解説
一人暮らしのシニア世代が老後を見据えて住み替えを検討した時に、選択肢のひとつとしてマンションなどの集合住宅が上がります。シニアの一人暮らしを考える際に、マンションに住むメリットや選び方を、LIFULL 介護が調査したアンケートデータを元に解説します。
シニアの一人暮らしでマンションが選ばれる理由
シニア世代の一人暮らしでは、住まいの選択肢としてマンションが多く選ばれる傾向にあります。一人暮らしに合わせた間取りを選びやすく、オートロックや防犯カメラなどのセキュリティ設備が充実している物件も多いことから、一人でも快適に、安心して暮らしやすいためです。
また、戸建てと比較すると駅から近い便利な場所に建てられていることが多い点や、管理の負担が少ない点なども、シニア世代に選ばれやすい理由のひとつになっています。将来的に車を手放して徒歩移動が中心になったり、家の管理を自分で行うのが難しくなったりしても、マンションなら無理なく一人暮らしを続けやすいことも理由の一つです。
シニアの住み替え先として「生活の満足度」が高まりやすい分譲マンション
出典:LIFULL 介護「老後の住替え調査」マンションには賃貸と分譲の選択肢がありますが、シニア世代の一人暮らしなら、その中でも分譲マンションを選ぶのがおすすめです。その理由は、住み替え後の満足度の高さにあります。
上記のランキングは、LIFULL 介護が2024年5月に実施した、60代以降に住み替えを行った方へのアンケート調査データです。「住み替え後、生活の満足度が上がったか?」という問いに、「上がった」と答えた人は、分譲マンションで76.0%という結果が出ています。
60代以降でマンションは購入できる?
60代以降のシニア世代でも、これからマンションを購入するのは不可能ではありません。
ただし、年齢や収入の面で住宅ローンを組むのが難しくなることから、現金比率を上げるなどの工夫や対策が求められます。住宅ローンは80歳までに完済することを前提に、「60歳以下」「70歳以下」などの年齢制限が設けられているのが一般的です。
また、住宅ローンの審査では安定的な収入があるかどうかも重視されるため、退職し年金が主な収入源となるシニア世代には通過しにくいという課題もあります。せっかく借りられても少額になってしまったり、返済期間の短さゆえに毎月の負担が大きくなったりするケースが少なくありません。シニア世代のマンション購入では、これらの前提を知ったうえで、無理のない資金計画を立てることが大切です。
シニア向け分譲マンションという選択肢も
シニア世代がこれからマンションを購入するなら、「シニア向け分譲マンション」も選択肢に含めるのがよいでしょう。
シニア向け分譲マンションとは、設備のバリアフリー化や見守りサービスの提供など、シニア世代が暮らしやすい工夫が施された分譲住宅のことです。一般的な分譲住宅と同じ自由な生活を送りながら、安全に配慮された環境で、必要な生活のサポートまで受けられる点に魅力があります。
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何歳からシニア向け分譲マンションに入れる?
シニア向け分譲マンションは、主に自立した生活が送れる高齢者が対象です。具体的な年齢は施設によっても異なりますが、中には40代・50代から入居できたり、そもそも年齢制限がなかったりする施設も多くあります。
60歳以上で賃貸マンションへの入居は難しい?
出典:国土交通省住宅局「家賃債務保証の現状」賃貸マンションへ入居しやすい年齢は、「70歳」がひとつのボーダーラインになります。
賃貸契約時に必要となる家賃債務保証会社の審査が、70代から極端に通りにくくなるのが主な理由です。また、この年代では健康上の不安等から、大家に入居を拒否されるケースも少なくありません。
一方で、少子高齢化が進む現代ではシニア世代向けの賃貸物件も増えてきており、それらを専門に取り扱う不動産業者も登場しています。60歳以上のシニア世代が賃貸マンションを探す際には、こういった専門業者の利用も検討するのがよいでしょう。
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65歳以上の高齢者世帯の家賃の平均は?
総務省統計局が公表している「平成30年住宅・土地統計調査」の結果によると、借家に住む世帯のうち、家計を主に支える者が65歳以上の高齢者である世帯の1か月あたりの家賃は、「4万~6万円」が平均額となっています。
もちろん地域や立地、間取り等にもよりますが、一人暮らしの単独世帯で4万円前後、夫婦のみの2人世帯なら5万円前後が、シニア世代の家賃の目安になるでしょう。
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賃貸ならサービス付き高齢者向け住宅という選択肢も
シニア世代がこれから賃貸マンションを契約するなら、高齢者の入居を前提とした「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」も、有力な選択肢のひとつになります。
サ高住とは、常駐スタッフによる見守りや生活支援などのサービスが付いた、バリアフリー対応の賃貸住宅のことです。基本的に食事などの提供はなく、完全に独立した自由な暮らしを送りながら、必要なときだけプロのサポートが受けられます。
そして一般的な賃貸物件の年齢に対する貸し渋りをするリスクがあるのに対して、何よりも高齢者の「住まい」に一定の理解がある点が最大のメリットとなります。
身の回りのことは自分でできるお元気な高齢者が主な対象ですが、今後お身体の状態が変化し介護が必要になったときは、訪問介護など外部の介護サービスを利用することも可能です。
特に外部との交流の減少がリスクにつながるシニア世代の一人暮らしにおいて、安否確認などで他者との交流機会を保てるのは、大きな安心につながるポイントだと言えるでしょう。
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サービス付き高齢者向け住宅は何歳から入れる?
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、60歳以上、もしくは60歳未満で要支援・要介護の認定を受けている人が入居可能です。
なお、一般型のサ高住では、将来的に要介護度が上がり、外部の介護サービスで対応しきれなくなった場合、介護付き有料老人ホームなどへの転居を検討しなければなりません。
一部には要介護者を対象とした「介護型サービス付き高齢者向け住宅」も存在するため、入居時の状態によっては選択肢に含めるとよいでしょう。
シニアが一人暮らしをするマンションの選び方
・身体の状態が変わっても住み続けられるバリアフリー環境が整っているか ・浴室暖房など、部屋・場所ごとの寒暖差を小さくする仕組みがあるか ・車がなくてもスーパーや病院へ行きやすい立地か ・災害が少なかったり、災害対策が十分なエリアか ・オートロックや防犯カメラなどのセキュリティ設備は十分か ・見守りや緊急通報サービスなど、物件や地域のサービスを利用できるか |
シニア世代の一人暮らし、マンション選びで失敗しないためには、分譲・賃貸を問わず、特に上記ポイントを重視することが大切です。
今後、身体の状態が変わる可能性に備えてバリアフリーかどうか、高齢者に多いヒートショックのリスクを抑えられる室内環境かなどはよく確認しましょう。なお、住まいの内部だけではなくエリアについても日頃の生活に支障がないこと、災害時にも安心できるかも重要な要素です。
また、シニアの一人暮らしは病気の発見が遅れてしまったり、犯罪に巻き込まれたりするリスクが高まります。各種見守り、防犯体制も入念に確認しましょう。分譲・賃貸問わず、一人暮らしの最大の不安要素を解決できるかどうかも、シニア向けの住宅を選ぶ際のポイントとなるでしょう。
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まとめ
シニア世代の一人暮らしでは、立地や管理のしやすさ、セキュリティなどの観点から、マンションという住居形態が有力な選択肢になります。特に分譲マンションは、実際に「住み替え後に生活の満足度が上がった」と感じている人の割合がもっとも多いというデータもあり、終の棲家にすることを考えている人におすすめです。
近年では、シニア向け分譲マンションやサービス付き高齢者向け住宅など、シニア世代を対象とした物件の数も増えてきています。豊富な掲載物件から条件に合ったマンションが見つかるLIFULL 介護を、理想の住まい探しの一助としてぜひご活用ください。
この記事の制作者
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。