東京都世田谷区祖師ヶ谷にある『ソナーレ祖師ヶ谷大蔵』では、“Life Focus”をコンセプトに、入居者一人ひとりの自分らしさを追求した生活を目指しています。
その実現のため、ライフマネージャーというオリジナルの職種を創設しました。2016年4月よりライフマネージャーとして業務を担当する山田悟さんに、入居者の生活をどのようにサポートしているのかお話を伺いました。
「ライフプラン」をベースとした介護の取り組み
【ソナーレ祖師ヶ谷大蔵の初代ライフマネージャーとして働く山田悟さん】
−−ライフマネージャーとはどんなお仕事なのでしょうか?
山田さん:「これまでの老人ホームは介護が中心でした。ご入居者の状態に応じてケアマネージャーが支援計画を立て、介護職員が実行するというものです。機能訓練を実施する際など、ご本人の楽しみや希望を目標にすることもありますが、あくまで機能回復を目的とした視点なんですよね。
もっと生活の充実そのものに光を当てて、ご本人が心からやりたいと願っていることを支援できる方法はないかと考え、誕生したのがライフマネージャーの仕事です。」
−−具体的な業務としてどんなことをされていますか。
山田さん:「入居してはじめの1ヶ月に、ご入居者がどのような人生を歩んでこられたのかをじっくり伺います。ご本人の人となりや趣味嗜好を理解したうえで、ライフプランを作成するのがまず大きな仕事のひとつですね。
【ライフヒストリーを年表にまとめる有料サービスも提供しているそう】
——ライフプランとはどのようなものでしょうか?
山田さん:「ここで自分らしい生活を送っていただくための具体的なプランです。ライフプランが決まったら、その実現に必要な介護プランをケアマネージャーが計画します。
介護と連動しながらライフプランの実現までしっかり支援するのが主な役割です。他にはレクリエーションやイベントの企画運営も担当しています。」
−−どのくらいの規模、期間を想定したライフプランを提案しているのでしょうか。
山田さん:「その方にとっての心地よさをベースに考えることを大切にしているので、かなえたい夢の大きさや実現までの期間はさまざまです。
日常の中で取り組めるものから、大がかりな準備が必要なものまでありますよ。そこは特に基準を設けず、ご本人の希望にフィットする提案ができればと考えています」
−−入居者もきっといろいろな性格の方がいらっしゃいますよね。なかには打ち解けるのに時間がかかる方もいると思うのですが、関係を育むのにどんな工夫をしていますか?
山田さん:「その方が心地よく感じられる距離感を保ちながらゆっくり進めていきたいと考えています。ライフヒストリーを聞くといっても『はい話しましょう!』といきなり面と向かって切り出すわけじゃないんですよ。」
【暖炉のあるリビングスペース。モダンなインテリアでゆったりとくつろげます】
山田さん:「ご入居者がくつろがれている時にふらっと行って世間話をするんです。そのなかでふるさとの話や、子供の頃の思い出の話がポロっと出てくればすごくうれしいし、忘れないように頭の中にメモをして持ち帰って後でまとめています。
課題は、時代背景に関する知識を深めることですね。ただお話を聞くだけでは会話は成り立ちません。幼少期に中国で過ごされた方もいらっしゃいますし、そういったお話をきちんと理解し、会話ができるようになるには、まだまだ経験が足りないと感じています」
心おどる状況をかなえるプロセスが人生を充実させる
−−これまでにどんなライフプランが実現されていますか?
山田さん:「ご入居者で“もう一度、ゴルフ場でプレーしたい“という希望をお持ちの方がいらっしゃいます。その方はパーキンソン病ということもあり、ふだんは車椅子をご利用なのですが、とても意欲的にリハビリに取り組んでおられます。
最近になってご自宅から奥さまがゴルフセットをお部屋に持ってこられたんです。たぶんご本人がいつでも使えるようにとお願いされたんでしょうね。
いきなりゴルフ場に行くのは難しいので、まずはパターゴルフから始めてパッティングできる状態まで戻したいと作業療法士と話しています。実際にコースは回れないとしても、一緒にゴルフ場へ行って芝生の匂いなど雰囲気をもう一度味わってもらえたらと思っています」
【入居者がバーを開いたビューティルーム。】
−−車椅子で生活されているということは、歩行困難な状態なのですか?
山田さん:「そのご入居者が歩くのは、歩行器を使ったリハビリの時だけですね。右足にあまり力が入らないので、短い距離をやっと行ったり来たりできるくらいです」
−−その状態で「もう一度ゴルフをしたい」という意欲に結びつくのはすごいですね。
山田さん:「私もそう思います。身体機能が衰えていく状況の中では、自分にできる範囲の目標を設定しがちだと思うんです。でも、やっぱり小さく未来を描くよりも、心おどる状況をかなえるプロセスが人生を充実させるので、そういう意欲こそ支援したいです。
その方はお酒も大好きで、昔レストランでオードブルやサンドイッチをつくるアルバイトをされていたんです。そこでホーム内にあるビューティルームをバーに仕立てて、50年ぶりにサンドイッチを作っていただき、ご入居者やスタッフをもてなすというイベントを提案しました。
ご本人もはじめは渋っておられたんですけど、だんだんその気になられて。故郷の長野から新鮮なレタスを取り寄せられたり、『自分で食材買いに行くよ』と車椅子で近所に買い出しに行ったりと、イキイキとした様子に変わっていきました」
いい仕事は、自分の人生を大切にすることからはじまる
【山田さんご自身が生活の充実を大切にしている様子がお話を通じて伝わります】
−−前職は経営管理のお仕事だったそうですね。そういった経験が今の仕事に活かされているのでしょうか?
山田さん:「いや~まったくないですね(笑)!介護業界に入って、ソフトサービスや現場でライフマネージャーの企画をはじめたとき『今まで何をやっていたんだろう?』って思ったくらい対極にある仕事だなと思いました。
もともと、経営管理は前の会社で必要に迫られて担当したので、そんなに好きではなかったんです(笑)好きではない仕事の中にも、やりがいを見つけることはできるんですけどね。数字を扱うよりも、人になにか貢献できる仕事が自分に合うし、好きだと気がつきましたね」
−−働くうえで、大切にしていることはなんでしょうか?
山田さん:「仕事をする上でやっぱり大事なのは自分の家族です。仕事ばっかりして体を壊しても仕方ないし、それによって家庭がぎくしゃくするのも変な話なので、まず家族を一番に考えなきゃいけないと。いい仕事はそこから始まると思っています。」
−−とても大切な視点ですね。特に忙しいといわれがちな介護業界に、もっとその価値観を体現できる環境が増えるといいなと感じました。
山田さん:「そうですね。ソナーレ祖師ヶ谷大蔵では、スタッフがゆとりをもってケアを実践できる環境づくりを大事にしています。たとえばスタッフの腰痛予防としてリフト等の福祉機器を導入したり。レクリエーションをするにしても、スタッフが楽しんでいないとご入居者も心から楽しめない、という前提で企画を考えています」
−−最後にこれから入居を検討される方に、メッセージをお願いします。
山田さん:「ご入居者のみなさんには、自分らしさをずっと大切にしてもらいたいという思いがあるんです。ソナーレ祖師ヶ谷大蔵にご入居いただければ、ご自身が望まれる生活の実現目指して私たちがしっかりサポートしてまいります」
ソナーレ祖師ヶ谷大蔵:スタッフインタビューを終えて
プライベートでは音楽を聴くのが大好きだという山田さん。小気味のいいジャズやポップスをホームのBGMとして選んだり、家族愛のメッセージを届けようとオススメの映画鑑賞会を企画したりと、ご自身も仕事を楽しまれていました。
ケアプランを実行するプロセスを通じて、入居者の楽しみや生きがいをかなえる工夫は、QOL(生活の質)の向上という観点からどの老人ホームでも取り組まれています。
しかし生活の充実そのものを目的としてプランを立て、そこに様々な支援や取り組みがつながっていくという発想は、ソナーレ祖師ヶ谷大蔵ならではの大きな魅力だと思いました。
(記事中の内容や施設に関する情報は2017年4月時点の情報です)