2017年3月に入居した松浦哲男さんは、昭和2年生まれの90歳。高校生の頃、海軍航空隊に入隊するべく飛行予科練習生に志願し、多くの同志と生活を共にした経験をお持ちだそう。数十年の歳月を経た今、アンサンブル浜松尾野で再び始まった共同生活は「あの頃とは全く違う」と松浦さんは語ります。お話を伺いました。
アンサンブル浜松小野での暮らしは、思い描いていた集団生活とは違った
【終戦後、祖父母がいた浜松に身を寄せ、以来ずっとこの地で暮らしてきた松浦さん】
――松浦さんは戦前のお生まれだそうですね。
そうなんです。ちょうど10代の頃に太平洋戦争が勃発しました。私は学校が嫌いでね(笑)。兵隊になったら学校へ行かなくてもいい、と聞いてそれはいいなと。そこで学校を辞めて海軍の飛行予科練習生(以下、予科練)になりました。
――予科練で集団生活を体験されていると聞きました。どんな暮らしでしたか?
予科練での集団生活といえば、それは厳しいものでした。縦社会で規律を守らない者は殴られたりしましたね。だから最初は、アンサンブル浜松小野も同じようなところかなと思って入居したんですよ。でも様子が全く違いました。ここのスタッフはどの方も人柄が良くて、威張っている人はいませんでしたね。
――時代の移り変わりを感じる話ですね。
その反面、個人的な生活が優先される雰囲気に驚いてもいます。昔は同じルールを守って生活を送るのが美徳という価値観をみんなが持っていましたから、気の合う人も多かったですし、何かあれば助け合ったりする関係性もありました。でも、ここはどちらかというとそれぞれが自分のペースで生活していますよね。
――たとえばどんな部分に驚いたのでしょうか?
いちばんは人によって生活のルールが違うところです。私はここでお酒を飲んでいません。ところが、見ているとお酒を飲む方がいらっしゃるんですよ。おかしいな、と思って聞いてみたら、その方は自費で購入したお酒を飲んでもいいという約束になっているんだそうですね。てっきり全体のルールとして「お酒は飲まない」と決まっていると思っていましたから、これには驚きました。
――介護付き有料老人ホームの生活では、ご入居者の体調やご家族の意向によって、生活の許容範囲が異なるケースがあるということですよね。
そうです。思っていたよりも禁止事項が少なく、希望が優先される雰囲気なんです。こういう状況だと、自分に頂き物があっても分け合ったりすることもできないので、関わりあう機会が減って寂しいです。私が古い価値観の持ち主だからかもしれませんが、そこはみんなが同じルールで集団生活を送れる方がいいな、とは思いますね。
前向きに生活することで、ホーム全体の雰囲気を明るくしたい
【松浦さんにお招きいただき取材は居室にて行いました。】
――松浦さんは何がきっかけでアンサンブル浜松尾野に入居を決めたのですか?
家族がこの施設の方と知り合いで、紹介してもらったのがきっかけで入居しました。もっと早く入居したいと個人的には考えていて、実は以前から特別養護老人ホームに申し込みをしていました。ただ、なかなか空きがなくて入居できる順番をずっと待っていたので、チャンスだと思い入居を決めました。ここは住み心地が悪くないし、いいところだと思います。
――アンサンブル浜松小野のどんなところを気に入っていますか?
不満は特にないとはいえ、やっぱり自宅が一番です(笑)。家族が仕出し屋をやっているので、美味しいものをたくさん食べていましたし、お酒も飲み放題、タバコも吸い放題でしたから。
ここでは贅沢は言えませんね!お金を使わなくていいのが、一番いい点かもしれません。健康的な生活を送ることができている、とも言えますね。
――レクリエーションには参加していますか?
ほうっておくと、寝て起きて一日中ゴロゴロするだけの生活になってしまうので、誘われたらどこへでも行きますよ!私は無趣味な人間ですが、だからこそ興味があってもなくても、レクリエーションは全部参加するようにしています。
これまでに印象に残っているのはお花見ですね。2、3回ほど行きました。
【春の外出を楽しむ松浦さん。社内フォトコンテストで優秀賞を獲得した作品だそう】
――リハビリにも取り組んでいますか?
日曜日を除いて毎日やっています。トレーニングスペースがあるので、体操をはじめ機械を使ったいろいろなリハビリに取り組んでいます。やればやっただけの効果はあるので、やらない人がいるのを不思議だなと思っています。
――誰もが気持ち良く毎日を過ごせるといいですよね。
今は、自分のペースでどんどん生きていくような個人の時代でしょう。だったら毎日積極的にリハビリをして、ちょっとでもいい状態でいたほうが気持ちよく生きられるし、それがひいてはホーム全体の雰囲気を明るくできるんじゃないかな。
私は今の時代のいいところは取り入れながら、昔の古き良き価値観も貫きたいですね。
(記事中の内容や施設に関する情報は2017年8月時点の情報です)