- 質問
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母はいま入居中の老人ホームが気に入らないらしく、別の施設への住み替えを検討しています。
老人ホームを住み替える際に注意するべきポイントを教えてください。
- 回答
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退去時にトラブルとなりやすいのが金銭問題です。①入居一時金の返還額 ②原状回復費用の支払いが必要か。この2点をホームによく確認しましょう。
前提として、安易な住み替えは本人と家族にとって大きな負担となります。
暮らしづらさを抱えたまま住み続けるか、金銭的・精神的な負担がかかってでもより暮らしやすい住まいを求めるのかは、最終的には本人が選択する問題です。なるべく住み替えをしなくていいように、不満な点を改善できないかホームの運営会社に相談をすることをお勧めします。
ここではよくある退去の理由と次のホームを探す際の注意点を解説します。ホームの住み替えを検討する際に参考にしてください。
1.老人ホームを退去する理由
現在入居中の老人ホームを探すまでには、大なり小なり苦労された点があるかと思います。せっかく選択した住まいには、出来ればそのまま住み続けたいものです。
しかし、安心して住み続けることが困難となれば、次の住まいへの移動を考えざるを得なくなります。
お亡くなりになる以外で老人ホームを退去する理由には、以下のようなものがあります。
病状の悪化
要介護度が進行し身体状況が悪化した、認知症の進行で周辺症状が悪化した、今までなかった病気にかかったり、介護サービス以外の医療的ケアの比重が高くなると老人ホームでは対応できないという場合があります。
経済的な理由
介護保険外サービスの利用が予定より多くなり、金銭負担が増えた、費用負担を当てにしていた家族の経済状況が変化した、などの理由によってこれ以上負担を継続することが困難になることがあります。
生活・設備・サービスの不満
思っていたよりも部屋が狭い、最初は不便なく生活していたが、入居後の身体状況の変化で使い勝手が悪かったり不便に思ったりすることがあります。
アクセス・立地の不満
ホーム内で体調不良等問題が起こった際に家族が呼び出されるケースは多いです。実際に入居してから、こんなにホームから呼び出されることが多いとは思わなかった、という声をよく聞きます。
他の入居者とのトラブル
他の入居者の騒音や態度などで入居者同士がぎくしゃくすることがあります。他の入居者との関わりの中で生じるトラブルについては、どんな施設であっても起こり得る内容です。
参照:「平成25年度有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」(公益社団法人全国有料老人ホーム協会調べ)より
2.退去時の金銭トラブルに注意しよう
退去の際にトラブルとなりやすいのがお金についてです。入居一時金がどれだけ返還されるのか、原状回復費用の支払いが必要か、の2点をホームに確認しましょう。
これらの事項は重要事項説明書や管理規程に記載されており、入居時に説明がなされていますが、再度直接確認することが必要です。
そして、退去の旨を何か月前までに申し出る必要があるのかも確認しておきましょう。
居室の原状回復費用を入居者が負担するのは、主に造作の変更(新たにドアや棚などを設置する等)の場合です。
入居者とホーム側のどちらが費用負担するかは、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(平成23年国土交通省住宅局)を参考に協議することとされています。
また、クーリングオフ制度を利用できる場合も考えられます。これは、「入居後90日以内に退去と契約解除が決まっている方」という条件があり、しかも、平成18年4月以降に開設したホームの場合には、クーリングオフが認められ返金する義務が施設側に発生しても「500万円と返還債務残高のうち、額が低いほうを支払う」となっています。
したがって入居金が全額戻ってくるとは限らないので注意しましょう。
住み替え先の施設での手続きは、初めて老人ホームに入居する場合と同様です。
3.次のホームの探し方
退去に向けた本人の最終意思を確認確認したら以下のような流れになります。
身元引受人の確認 → 家族側の責任・連携・役割の確認 → ホームとの契約 → 入居日の決定 → 行政等の手続き → 引っ越し。 |
次のホームを探す際は、今回退去を考える原因となった点を解消できるかどうかがなによりも重要です。
しかし、他人と同じ建物で生活している以上、上記に記載したように、本人だけではどうしようもならない問題もあります。
最初に老人ホームを探したときと同様、何を重視して選ぶのかを明確にしておきましょう。「家族も一緒に見学に同行する」、「より多くのホームを見学する」、「専門家に相談する」というように、多角的な目で次の住まいを見極めることが重要です。
まとめ
住む環境が変わることは必ずしも本人にとって良いとは限りません。
他の老人ホームに移ったことで問題が全て解決するとは限りませんし、また別の違った問題が発生する可能性もあります。
ホームが変われば職員の方も変わりますし、介護に関する方針、ホームの運営方針などホームによってまったく異ります。
本人の身体の負担や精神的な負担を考えると、できれば安易な住み替えは避けるべきです。本人に直接言いにくい場合は、日頃接しているホームの職員の方へ一度話してみるなど、方法を変えて本人の本質的な意向を把握することをしてみましょう。
しかし、本人の意向を最優先に考えた中で、結果的に本人が他のホーム等に移ることを望まれたのであれば、家族は本人が一日も早く楽しい生活が送れるよう精一杯応援してあげましょう。
のちのち後悔しないように、本人と家族がしっかり話し合ってホーム選びをしていきましょう。