孤独死の原因や対策
離れて暮らす家族と連絡をとったのはいつですか? 定期的に連絡をとりあったりする友人・知人はいますか?
独居の高齢者が、誰にも看取られることなくたった1人で亡くなってしまう孤独死。日本ではこの孤独死が年々増加し、社会問題化しています。なかには、亡くなったことに気づかれることなく、しばらくの間放置されてしまい、その対応に家族が大変な思いをするということもあります。
孤独死の原因や、孤独死したらどんなことが起こるのか、そして孤独死しないための対策について解説します。
孤独死とは?
孤独死とは、主に一人暮らしの人が「誰にも気づかれることなく1人で亡くなること」、そして「長期間それに気づかれない状態」を表した言葉です。似たような言葉に「孤立死」があり、行政などではこちらを使うことが多いようです。
孤立死は、普段から周囲との交流がなく、社会や地域から孤立した状態であるというニュアンスが強いです。
孤独死の現状
超高齢社会となった日本では、一人暮らしの高齢者が増加、これにともない孤独死も年々増加の一途をたどり社会問題化しています。
2019年「国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上の高齢者のいる世帯は、約2,558万世帯(全世帯の49.4%)となっています。1986年は、976万世帯(26.0%)でしたから、高齢者のいる世帯は、約2.5倍に増加しています。
元データ 「2019国民生活基礎調査の概況」2019年の高齢者のいる世帯のうち、737万世帯(構成割合28.8%)が単独世帯、いわゆる「独居老人」となっています。1986年の単独世帯数が121万世帯ですから、約5.75倍に増加しています。
また、高齢者の単独世帯の男女構成比は、女性のほうが多く7割近くを占めています。年齢層でみてみると、男性は65歳から74歳の前期高齢者、女性は75歳以上の後期高齢者が多くなっています。
元データ 「2019国民生活基礎調査の概況」一方、孤独死と考えられるデータとして、東京都福祉保健局監察医務院の統計によると「東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数」は、年々増加しており、2018年は3,882名となっています。
さらに内閣府の調査によると、高齢者のうち「孤独死を身近な問題と感じるものの割合」は、夫婦のみの世帯、家族と同居などの世帯が約3割なのに対し、単独世帯は50.7%。半数以上の人が、孤独死に対し不安を抱えているというデータもあります。
元データ「内閣府令和2年高齢社会白書(全体版)」孤独死しやすい人とは?
では、どのような人が孤独死しやすいのでしょう? 孤独死の原因には、次のようなものがあげられます。
独居の単身者(配偶者の死別を含む)である
独居の単身者は、1人で生活しているため、体調の急変などがあっても気づかれにくいということがあげられます。高齢者は、転倒や転落などで大怪我を負ったものの、助けを求められずにそのまま亡くなってしまうというケースもあります。
持病がある、健康管理ができていない
日頃の健康管理ができていないと、孤独死のリスクが高まります。持病がある、アルコールを大量に摂取する習慣がある、足腰が弱っているといった状態は、突然死に繋がりやすく、孤独死のリスクも高まります。
経済的に困窮している
経済的余裕がない人は、住居にエアコンがない、食生活が偏り、栄養不足に陥るなど、生活レベルが下がりがち。また、医療費をかけることができず、病気を放置しがちで、健康リスクを増大させてしまいます。
社会的に孤立している
家族とも連絡をとっていない、頻繁に会う友人や仲間がいないという「人と接しない生活」は、「ひきこもり」になりがち。ひきこもりは、生きがいを無くし生活環境や健康状態が悪化しているのに自力で改善できず周囲にも助けを求められない「セルフ・ネグレクト」という状態につながると言われています。
男性である
日本少額短期保険協会の調査によると孤独死する人の8割以上が男性というデータがあります。はっきりとした理由はわかりませんが、身の回りのことを妻に任せていた男性の場合、食生活なども適当になりがちで、徐々に健康を害することも原因として指摘されています。
一方女性はコミュニケーション力が高く、孤立化しにくいことなどが男女差の要因として考えられています。
元データ 日本少額短期保険協会 孤独死現状レポート孤独死したらどうなるの?
孤独死によって起こる問題
もし、孤独死してしまったらどのような影響があるのでしょう? 大きな問題として、遺された家族や関係者に「精神的・経済的ダメージ」を与えてしまうことがあげられます。また、身寄りがない場合は「無縁仏」となる可能性もあります。
精神的影響
孤独死の遺体は、腐敗が進んでいることも多く、第一発見者が家族だった場合は、その変わり果てた姿を見てしまうという精神的ショックは計り知れません。またその光景や強い異臭で体調を崩したり、トラウマとなりPTSDになったりすることもあるでしょう。
また、看取ってあげられなかったこと、1人で死なせてしまったことに対し、「お別れすることができなかった」「あのとき会いに行っていれば」「日頃から連絡を取っていれば」などと、後悔の思いが一生残ることにもなるでしょう。
経済的影響
孤独死した現場の状況によっては、家族での清掃が難しく、専門の業者に「特殊清掃」を依頼しなければならないこともあるでしょう。家の広さや状態によっても変わりますが、床上の清掃、脱臭・消臭、害虫駆除など数万円から数十万円の費用がかかります。
また床のフローリングの張替えなど、リフォームをしなければならない場合、100万円を超えるケースも発生します。賃貸住宅の場合は、孤独死が起こると「事故物件」となり、家賃の減額や原状回復のため空室期間が発生します。自殺の場合はその補償を求められることもあります。
また、特殊清掃が必要となった現場では、遺された遺品の9割以上が「買取対象外」となります。その整理も遺品整理専門業者に依頼することになり、その費用もワンルームの部屋で十数万円から30万円ほど発生することになるでしょう。
参考記事: 特殊清掃の料金相場|みんなの遺品整理身寄りがない場合、無縁仏となることも
孤独死された人の身寄りが判明しない、遺体の引き取り手がない場合は、いわゆる「無縁仏」となります。身元不明の遺体は、「行旅死亡人」として自治体が火葬を行い、遺骨を一時的に保管します。その後も引き取り手が見つからない場合は、合祀や合葬されることとなります。
孤独死しないためにできる対策
高齢者の孤立が加速すれば、それだけ孤独死の危険性も高まります。高齢者の孤立を防ぐ方法として下記のような対策があります。
自治体による取り組み
社会問題化する孤独死に対し、市区町村をはじめとする自治体は、独自にさまざまな取り組みを始めています。警察や民生委員、ボランティア、NPO法人といったさまざまな機関と協力し見守り活動などを行っています。
その取り組みの1つに近所同士での見守り・相談活動があります。例えば、近所の人が「洗濯物が数日間干したまま」「郵便物が溜まっている」といったことを、地域包括支援センターなどのホットラインに相談をすると、職員が訪問し安否確認するといったものです。
自治体の取り組みの例
- 職員の電話や訪問による安否確認
- 警察、ゴミ収集等の協力による安否確認
- 配食などの支援サービスを活用した見守り
- 機器による危険情報のキャッチ
- コミュニティでのふれあいや交流の支援
また、要介護認定を受けている方は、介護サービスを受けることが、見守りにもつながります。
民間の訪問サービスなど
民間企業でも、有料で孤独死対策のためのサービスを提供しています。
例えば郵便局では、契約した高齢者の自宅に定期訪問、会話を通じて生活状況を確認し、その結果を家族へ伝えるというサービスがあります。また、宅配会社がそのネットワークを活用し、自治体とタッグを組み見守りサービスを行っている地域もあります。
このほか、民間のサービスを活用している例をまとめました。
民間サービスの活用例
- 配置薬の会社が定期補充の際に安否確認を行う
- 配食サービスの際に見守りをしてくれる
- 警備会社が高齢者の緊急通報を受付け24時間体制で駆けつける
- 電気、水道、ガスといったメーターの使用量の変化で見守る
見守りツールの活用
自宅に設置するカメラやセンサー、家電、スマートフォンのアプリといった見守りツールを活用することもおすすめです。
自宅に設置したカメラやセンサーで、動きを見守ることはもとより、冷蔵庫の開閉やポットでの湯沸かしをキャッチし、家族へ自動でメールが送られるサービス、Bluetoothを内蔵した電池型の機器により、リモコンのON、OFFで家族に通知が送られるものなど、さまざまな家電があります。
また、近年高齢者の所持率が高くなってきているスマートフォンにも、数多くの見守りアプリがあります。1日に数回画面に表示されるボタンをタップするだけで、安否確認が行えるというものです。
いずれも、簡単に導入が可能ですが高齢者の「監視されている」「操作が難しそう」という気持ちに寄り添って導入の有無を検討するとよいでしょう。
人とのつながり
人とのつながりや社会参加ということも、孤独死対策として有効です。2021年版高齢社会白書によると、日本人は近所の人との付き合いについて「相談ごとがあった時、相談したり、相談されたりする」「病気のときに助け合う」と回答する割合が、他国と比較して最も低い水準となっています。
また、家族以外の人で、相談し合ったり、世話をし合ったりする親しい友人がいない、という割合も最も高くなっています。
このデータからもわかるように、日本人は他国に比べ「人と人とのつながり」が希薄であり、それが「孤独」を生み、孤独死につながっているともいえます。
では、人とのつながりをもつには、どのような方法があるのでしょうか?
1つは、趣味のサークルに参加したり、地域のボランティアなどの活動に参加したりすることです。また、元気であれば「働く」ということも有効です。定期的に人と会うこと、社会の一員として生きがいをもつことは、孤独死を防ぐだけでなく、若々しく生きることにもつながります。
また、手軽な方法としてSNSの活用もよいでしょう。お子さんやお孫さんとLINEのやりとりをする、Facebookで近況をコメントし友人とやりとりするといったことも、安否確認に繋がります。「年寄には難しい」と諦めず、チャレンジしてみてはいかがでしょう。
健康的な生活
運動習慣や食生活に気を配って健康的な生活を送ることも孤独死対策になります。
自炊のため食料の買い出しで出歩くことは、運動になるため体力面の向上につながります。また、お店の人と会話するなどのコミュニケーションがあれば、社会との関わりにもなります。さらに、食事の献立を考えることは、認知症の予防にも効果的でしょう。
老人ホームの利用も孤独死対策に
前述の対策は、利用者が自宅で一人暮らしをしていることが前提です。そのため、寝ている最中に異変が起きたなどという場合は、対応が間に合わないということも考えられます。
そうした不安を解消するには、例えば老人ホームへの入居もおすすめです。老人ホームというと、介護が必要な人でないと入居できないというイメージをお持ちかもしれません。
しかし、「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」といった施設は、介護の必要がない元気な方から介護度の重い方まで幅広い方が入居できる施設となっています。
こうした施設であれば、スタッフが常駐しているため、何かあってもすぐに対応してくれます。また、介護士や看護師によるケアも行ってもらえるでしょう。
さらに施設によっては、運動習慣を身につけるための日々のアクティビティーや趣味のサークル活動、お花見やクリスマス会といった季節のイベントなど様々な活動が行われるなど、生き生きと暮らせる仕組みも整っています。
孤独死がもたらす影響を考えると「独居しない」で、施設での暮らしで安心を得るというのも有効な選択肢といえるでしょう。
コラム
<孤独死しても家族に迷惑をかけないために>
孤独死しないよう対策をすることは、最も重要なことですが、万一孤独死してしまっても家族にできるだけ迷惑をかけないよう、事前準備しておくことも大切です。次のようなことを予め検討したり、準備しておくと良いでしょう。
- 葬儀対策
- どのような葬儀を希望するのか、家族と話し合うとともに、その費用を準備しておきましょう。事前に規模やプランなどを調べておくと良いでしょう。
- 相続対策
- ご自身の死後に家族が相続トラブルとならないよう、ご自身の資産を整理し、遺言書や公正証書遺言などを作成しましょう。また、遺族が個人の意向を汲み取れるよう、エンディングノートを作成するのも良いでしょう。
- 生前整理
- 孤独死してしまった場合には、部屋がひどい状態となり、貴重な遺品が台無しになってしまうことも。大切なものがどこにあるかなど、すぐわかる状態にしておきましょう。また、必要のないものは、事前に断捨離しておくのも良いでしょう。
まとめ
一人暮らしの高齢者が増え続ける日本。「家族がいない」「経済的理由」はもとより「気楽な一人暮らしが良い」とのことから独居を選ぶ人もいることでしょう。
「まだまだ元気だから大丈夫」と思っていても、孤独死のリスクはあるものです。そして万一、孤独死してしまった場合は、家族に多大な影響を与えてしまうことにもなります。
そんな孤独死を予防するには、自治体や民間の様々なサービス、家電やアプリなどのテクノロジーの活用が有効です。そして何より、人とのつながりを大切にし、社会の一員として生き生きと暮らすことが重要です。
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この記事の制作者
監修者:片山 万紀子(遺品整理士)
祖父の死をきっかけに遺品整理業界へ就職。3年間の現場スタッフ期間を経て、遺品整理・不用品回収の総合サイト・ReLIFEの総合ディレクターとして立ち上げから携わり、執筆・監修を務める。ReLIFEを通して、年間4000件以上の案件に関わり、遺品整理業界の透明化を目指す。定期的に遺品整理現場でスタッフとしても作業、取材を行い、利用者目線でのサイト作りを継続中。