経管栄養とは?種類や特徴、ケアの注意点
経管栄養は、口から食事が摂れない方や、誤嚥の可能性が高い方に行う栄養補給の方法です。経鼻経管栄養・胃ろう・腸ろうのほか、間歇(かんけつ)的口腔食道経菅栄養法など方法も様々。メリットやデメリットも異なるため、最適な方法を選択しましょう。
経管栄養とは
経管栄養とは、口から栄養を摂取するのが難しかったり、誤嚥の可能性が高かったりする場合に用いられる栄養補給方法です。
管やカテーテルを使って、直接胃や腸に栄養を送ります。種類については後述しますが、複数の方法があり、患者の状態に応じて最適なものがチョイスされます。
経管栄養の目的
- 生きていくために必要な水分や栄養成分の摂取
- 腸の免疫機能の維持
- 肺炎や褥瘡の予防
- 誤嚥防止
経管栄養の大きな目的は、腸など消化管機能が衰えることによる全身の機能低下や免疫低下を防ぐことです。
人間の腸には栄養の吸収機能だけでなく、免疫機能も備わっています。そのため、栄養を摂取しないことで腸が十分に働かなくなれば、エネルギーや筋力の低下、神経の伝導障害などが起こりやすくなるほか、感染症にもかかりやすくなるのです。
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経管栄養の種類
種類 | 概要 |
---|---|
経鼻経管栄養 | 鼻から管を通して胃に栄養を送る方法。手術は不要。 |
胃ろう | 手術によって腹部に小さな穴を開け、そこからカテーテルを通して胃に栄養を送る方法。 |
腸ろう | 手術によって腹部に小さな穴を開け、そこからカテーテルを通して小腸に栄養を送る方法。 |
間歇(かんけつ)的 口腔食道経菅栄養法 |
栄養を注入する際のみ管を口から食道の先端まで通し、終われば管を抜く方法。 |
主に上記4つの方法がある経管栄養。種類ごとに栄養を送る場所や手術の有無が異なります。消化管の状態などを基に最適な方法が用いられます。
【主な経管栄養法①】経鼻経管栄養
経鼻経管栄養は鼻の穴から胃まで管を入れて栄養を摂る方法です。手術が不要なため入院中などに一時的に行うことも多く、口から食べる力が回復すればすぐに止められます。
経鼻経管栄養の対象者
- 食べ物を飲み込む力が衰えている人
- 病気などの影響で十分な栄養が摂取できていない人
- 口やのど、消化管の手術を行った人
メリット
- 手術がいらない
- 管の挿入が簡便
- すぐにやめられるので、一時的な栄養補給に適している
- 消化管の機能を維持できる
- 自宅での生活が可能
経鼻経管栄養は管理のしやすさが大きなメリット。手術が不要で、適切な知識があれば自宅で生活しながら行えます。すぐにやめられるため一時的な栄養補給に適しており、患者さんの体力も回復するためリハビリ効果の促進も図れます。
デメリット
- 何らかの理由で肺に管が誤って入ってしまい、肺に注入してしまうことがある
- 管が詰まることがある
- 誤って管を抜いてしまう事故が起こりやすい
- 下痢など消化器系のトラブルを起こしやすい
経管栄養のデメリットとして、管に関連するものが多いことがわかります。上記は、管や周辺を適切に管理することでリスクを大きく減らせます。
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【主な経管栄養法②】胃ろう
胃ろうとは、手術によってお腹から胃まで小さな穴をあけて管を通し、栄養を摂る方法です。胃ろう手術は「PEG」と呼ばれ、一般的には30分前後で終了します。
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胃ろうの対象者
- 口から栄養を摂取するのが難しい人
- 食べ物を飲み込もうとするとむせる人
メリット
- 誤嚥性肺炎を予防できる
- 咽頭部の刺激が少なく、状態次第では口からの食事と併用できる
- 必要な栄養を確保しやすい
- 種類によっては胃ろうを洋服で隠せる
- 胃ろうによって生活や行動範囲が制限されない
直接胃に栄養を送り込む胃ろうでは、誤嚥や誤嚥性肺炎を予防できます。咽頭部への刺激が抑えられるなどの負担が少ない点が特徴。誤って管を抜いたり、挿入部から感染を起こしたりするリスクも少なく、安全性も高いです。
デメリット
- 胃ろう周辺の皮膚トラブルが起こりやすい
- 定期的に、医師による胃ろうカテーテルの交換が必要
- 誤って抜いてしまうと一晩短期間で塞がってしまう。塞がった場合は再手術が必要に
胃ろうを行う際の注意点は主に上記の通りです。特にチューブの管理には注意が必要で、誤って抜いてしまうと穴がすぐに塞がり再手術が必要に。身体に大きな負担がかかるため、慎重に管理しましょう。
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【主な経管栄養法③】腸ろう
腸ろうとは、手術によって腹部に開けた小さな穴から、カテーテルを通して小腸に栄養を送る方法。胃がん手術などで胃を切除している場合などに選択するケースが多いです。
腸ろうの対象者
- 口から栄養をとることが難しい人
- 誤嚥(ごえん)による肺炎を繰り返している人
- 胃がん手術などによって胃ろうができない人
メリット
- のどの刺激が少ないため、口からの食事も一緒に行える
- 誤嚥性肺炎を予防できる
- 洋服で隠れるため、生活が制限されない
- 経鼻経管栄養と比べて、誤って管を抜く事故がおこりにくい
- 必要な栄養を確保しやすい
- 逆流が少ない
腸ろうの主なメリットは上記の通りで、基本的には胃ろうと同じものも多いです。腸ろう特有のメリットとして挙げられるのは逆流の少なさ。小腸に直接栄養剤を入れるため、逆流のリスクを抑えられます。
デメリット
- 皮膚トラブルが起こりやすい
- 医師による腸ろうカテーテルの定期的な交換が必要
- 誤ってカテーテルを抜いてしまうと再手術が必要になることもある
腸ろうの周辺はカテーテルなどが原因で皮膚が荒れてしまうことがあります。予防には、できるだけ清潔を保つなどのケアが大切です。また、カテーテルを交換する際には毎回通院が必要になります。胃ろうより介護側の負担は大きくなるでしょう。
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【主な経管栄養法④】間歇(かんけつ)的口腔食道経菅栄養法
間歇(かんけつ)的口腔食道経菅栄養法とは、栄養注入時のみ口からチューブを入れ、注入後に抜く方法です。
様々なメリットから、近年注目を集めている方法です。
メリット
- 平常時の過ごしやすさ
- 嚥下訓練にもなる
- 介護側の負担も軽くなる
先述の通り、間歇的口腔食道経管栄養法は注入時のみチューブを通すため、平常時の過ごしやすさが格段に高いです。介護側の負担も軽いでしょう。チューブを飲み込む動作が嚥下訓練になる点も大きなメリット。
デメリット
- 嘔吐反射が出ることがある
- 誰にでも行えるわけではない
人によっては挿入時にチューブを噛んだり、舌で出してしまったりすることも。強い嘔吐反射が出る場合は実施が難しいでしょう。声が出せない方や、過去に食道や胃を手術した方も実施できない可能性があり、行える人は限られます。
よくある質問
ヘルパーさん(介護職員)でも対応できるの?
栄養剤の注入は家族と医師のほか、看護師と一定の条件のもとで研修を受けた介護福祉士などの実施が認められています。研修を受けていない介護職員が対応することはできません。
どのタイミングで管を入れるの?
経管栄養の管は、必要性が生じたときに挿入し、不必要に入れることはありません。誤嚥(ごえん)性肺炎を繰り返して入院したとき、脳や神経の病気を発症したとき、化学療法中などで必要な栄養が十分とれていないと判断されたときなどに挿入します。
本当に必要な栄養がとれる?
経管栄養の管やカテーテルは細く、一度に多くの量を注入することができません。そのため、使用する栄養剤は少量でも必要な栄養素やエネルギーを摂取できるように作られています。また、必要であれば栄養剤の注入回数を増やすことで対応します。
栄養はとれても空腹感は満たされない?
経管栄養は胃に栄養剤を注入することで血糖値が上昇して、空腹感は満たされます。しかし味わえないため、食事の満足感が下がることはあるでしょう。嚥下訓練を続けることで口からの食事を再開できる場合もあります。
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喉が渇いたらどうする?
飲み込む力がある程度保たれている場合には、とろみ剤を使用するなどして水分を口からとることも可能です。歯磨きなどの口腔ケアは毎日実施し、口の中を潤します。ワセリンやグリセリン入りのうがい剤、口の中専用の保湿剤、白ゴマ油などを塗って、口の中の乾燥を防ぐこともあります。
外出はできる?
管を入れたままでも外出は可能です。外出中に栄養剤の注入も可能ですが、そうならないように注入時間を調整するとよいでしょう。
特徴を把握して最適な経管栄養方法を
経管栄養には様々な種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。健康状態や病状は人によって異なるので、最適な方法を見つけてチョイスしましょう。
また、ご家族が経管栄養を選択され、在宅介護に不安がおありであれば、看護師や介護福祉士が在籍している施設へ入居したり、訪問看護サービスを利用したりする方法もあります。プロの対応により患者様のご負担軽減も期待できるため、ぜひ検討なさってみてください。
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