グループホーム、訪問ヘルパー、特別養護老人ホーム、居宅介護支援のケアマネジャーと、さまざまな形態で介護の仕事に携わってきた橘川まどかさん。それらの経験を経て、現在勤務する介護付有料老人ホームに求められているのは「最高レベルのサービス」と語ります。
橘川さんが目指す「最高レベルのサービス」とは? お話を伺いました。
介護業界16年、もともとはママ友に誘われたことがきっかけ
――介護の仕事に就かれたきっかけを教えてください。
ママ友に「ヘルパー講習があるけど一緒に行かない?」と誘われたことが、そもそものきっかけです。当時は専業主婦だったのですが、子育てが一段落したこともあり、講習を受けてヘルパー2級の資格を取得しました。
――最初はどのような施設で働き始めたのでしょうか?
認知症の方々が家事を分担して共同生活をするグループホームです。ヘルパー講習で知り合った方に誘われたのですが、当時は介護の世界を知らなかったので軽い気持ちで始めました(笑)。始めてみると、それはそれは大変なお仕事で。
でも、気が付けば介護業界に入って16年、まさかこんなに長く続くとは思っていませんでしたね。
――長く続けてこられた理由はどこにあるのでしょう。
ヘルパーを始めるまでは漠然とでも自分が年老いていくなんて考えもしませんでした。でも当たり前のことなんですけど「ご入居者の方たちにも、私たちのような若い時代があったんだな」と。
そうした方々のお話を聞くにつれ「頑張って生きてこられた方々が安心して余生を暮らせるお手伝いがしたい」と強く思うようになりました。それが長く続けてこられた理由の一つかもしれません。お話を聞いていると、本が1冊書けてしまうくらい、みなさまいろいろな歴史をお持ちなんです。
さまざまな形で、多くの高齢者のケアを担当する
――グループホーム以外にもご経験があると伺いました。
グループホームで働いているうちにほかの介護の現場も見てみたくなり、訪問ヘルパー、特別養護老人ホーム、居宅介護支援のケアマネジャーを経験しました。
一番長かったのは特別養護老人ホームです。本当に大変でしたが、学びの多い施設でしたね。ワンフロアに60名と利用者数が多かったので、ご利用者に対するケアに苦労しました。重度のご利用者が多い施設ということもあり、余命わずかとなった時期のターミナルケアについても学ぶことができました。
――そして、環境のまったく異なる介護付有料老人ホームに転職した理由は?
特別養護老人ホームの後、居宅介護支援のケアマネジャーをしていたのですが、お客さまを老人ホームにご紹介するのも仕事の一つでした。そんななかで、有料老人ホームではどんな介護が行なわれているのか知りたくなったんです。それが、アライブ杉並松庵で働き始めることになったきっかけです。
入居者一人ひとりに対するきめ細やかなサービスに終わりはない
――現在のお仕事内容を教えてください。
ケアマネジャーとしてご入居者一人ひとりのケアプランを作成したり、ご本人やご家族のご要望やご相談を承ったり、運営メンバーの一人としてスタッフの育成や経営にも携わっています。
――これまでの施設と異なる点はどんなところですか?
もちろん、きめ細やかな配慮が必要なのはどの施設も一緒です。とはいえ、ご入居者の人数やスタッフの人数、要介護度、公共施設なのかそうでないのか、施設の種類や規模によって、できることも求められることも変わってきます。
アライブ杉並松庵は自立度の高いご入居者が多いので、技術的なサポートよりも、精神的な部分のケアに重きを置いています。ご入居者数も少ないので、お一人おひとりと、より密なコミュニケーションをとることができます。
――有料老人ホームだからこその大変さはありますか?
ちょっと変な言い方かもしれませんが、当ホームのご入居者は、社会で活躍されていた頃に高い地位にいらした方が比較的多いようです。そのため、介護技術はもとより、言葉遣いなどの接遇においてハイレベルなマナーや心配りが要求されていると感じます。
――そういった面で印象に残っていることはあります?
ご家族から思いもよらないご指摘を受けたことがあります。ご入居者であるお母さまが特に気に入っておられる洋服があって、スタッフはご入居者に好きなものを着てほしい、とその服を着ていただくことが多かったんですね。そうしたら面会にいらした娘さんから「先日も母はこの服を着ていたけど、いつもこの服なのかしら?」と。
もちろん、説明すればご理解いただけるのですが、ご入居者を思ってした行動が、ご家族の方からするとそうは感じられなかったというすれ違いがあり、「身だしなみへの配慮が足りなかったな」と、勉強になる出来事でした。
――そうした対応は正解がないだけに、常にきめ細やかな心配りが求められそうですね。
介護付有料老人ホームなので、介護技術だけでなく、接遇面も最高レベルを望まれるのは当然のことです。ですからスタッフには常々「心の目を開けて、細かいところにも配慮していきましょう」と伝えています。
サービスにはきりがありません。常に「どうすれば最高のサービスができるのか」を考え、実践していくことが、有料老人ホームの課題の一つ。
たとえば、ご入居者のお部屋に伺って着替えのお手伝いをした際、お花があれば水を取り替えるとか、そんな些細なことの積み重ねでご家族の方、何よりもご入居者にご安心いただけ、ご自宅と同じ環境やお気落ちで過ごしていただけるのではないかと思っています。
(塚本佳子+ノオト)
(記事中の内容や施設に関する情報は2017年4月時点の情報です)