質問

主人は、ALS(※1)という難病で、介護保険の2号被保険者(※2)です。要介護度が上がり、老人ホームを探していますが、年齢が50代と若いためか入居金が高額なところが多く困っています。

価格の低い施設を探すにはどうしたら良いのでしょうか?施設を探すポイントがあれば教えてください。

※1:ALS(筋萎縮性側索硬化症)
※2:2号被保険者(厚労省規定の特定疾病により要介護状態にある40~64歳の人)

回答
武谷 美奈子

最も安価な施設を探す方法の一つは公的施設である特養(特別養護老ホーム)を検討することです。しかし、大都市圏では入居待ちの方が多いためすぐに受け入れてもらうことは困難です。
その際は、民間の有料老人ホームを検討することとなります。特養よりも高額な施設が多いため、「都市部ではなく郊外の施設」、「スタッフの人員体制にこだわりすぎない」といった条件で探すことで費用を抑えることができます。

このページでは、若年齢者向けのホームが少ない点や、入居金が高くなる理由。第2号被保険者の施設探しのポイントについて解説します。しっかりお読みいただき施設探しにお役立てください。 武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)

【目次】
  1. 50代の若年齢者向けの老人ホームは少ない
  2. 年齢が若いほど料金も高額に
  3. 第2号被保険者の施設探しのポイント
  4. 安価な施設を探す場合のポイント
  5. まとめ

50代の若年齢者向けの老人ホームは少ない

介護保険における被保険者は、第1号(65歳以上)と第2号(40歳以上65歳未満)に分かれており、第2号被保険者は、厚生労働省で定められた16種類の特定疾病によって要介護状態になった場合に、介護サービスを利用できます。ご質問のALS(筋萎縮性側索硬化症)も特定疾病に該当します。

>特定疾病|65歳未満も介護保険対象となる16の病気


老人ホームの入居条件は「60歳以上あるいは65歳以上」としているところが多く、第2号被保険者の対応を想定しているホームはとても少ないです。

その理由としては大きく3点あります。
①第2号被保険者で老人ホーム入居を検討する方はまだ多くない
②老人ホーム入居者の平均年齢は85歳前後であり、ほかの入居者とのコミュニケーションが取りづらい
③入居開始年齢が若く想定入居期間が長いため、入居金など多くの費用が予想される

こういった理由が挙げられます。

ただし、介護保険は適応されるため、条件が整えば特別養護老人ホームなどの介護保険施設へは入居可能です。民間の有料老人ホームなどでも、第2号被保険者の受け入れ実績があるところもありますので、各施設へ直接確認してみるとよいでしょう。

>たん吸引に対応している全国の施設



年齢が若いほど料金も高額に

有料老人ホームの入居時に支払う入居金は、入居時の年齢が若いほど高くなります

施設側は入居金を「前払い家賃」として受け取りますが、何ヶ月分の家賃を前払いとして受け取るかは、想定入居期間とリンクさせて設定しています。年齢が若ければ入居期間は長いと想定され、入居金が高額になるという仕組みです。その分、償却期間も長く設定されます。

>入居金の仕組み|老人ホームの入居金と返還規定

<例>同じ老人ホームでも、年齢が若いと入居金が高額になる料金の一例

【入居年齢65歳の場合】
入居金  800万円
償却期間 5年(5年の前払い家賃相当)

 ↓

【入居年齢55歳の場合】
入居金  1,600万円
償却期間 10年(10年分の前払い家賃相当)

※「入居時年齢が若い=入居期間も長い」と想定され、入居金が高額になり償却期間も長くなる。



第2号被保険者の施設探しのポイント

第2号被保険者の方が入居するホームを探す場合、対応しているホームは少ないため、インターネット上で情報を見つけるのは難しいと思われます。

気になる老人ホームへ個別に問い合わせをするか、老人ホーム紹介センターなどを利用すると良いでしょう。


<事前準備>

●疾病の進行変化を正しく理解する
介護認定を受けた原因疾病について、今後の病状変化と必要なケアについて、かかりつけ医や医療従事者に確認しておきましょう。


●予算計画を綿密に立てる
年齢が若いため、第2号被保険者の入居期間は長くなると想定されます。途中で支払い不能にならないように、病状変化による医療費も含めて余裕のある予算計画・資金計画を立てましょう。

>老人ホームの資金計画の立て方


<施設を探す際のチェックポイント>

●該当の疾病に対する知識・理解・経験があるか
入居を検討する老人ホームにおいて、同じ病気の方を受け入れた経験があれば、安心度が高まります。ただし、それはいつだったのかを確認しましょう。数年前ならその時に対応したスタッフがおらず、スキルが受け継がれていない場合もあります。


●疾病に適するケアプランが立てられるか
リハビリなど希望する内容でケアプランが立てられるかを確認しましょう。


●病状が進行しても対応が可能か
疾病によっては将来的に医療処置が必要になることもあります。看護師の体制はどうか、どのような身体状態まで対応可能かを確認しましょう。

>たん吸引に対応している全国の施設

●ホーム側と密なコミュニケーションが取れるか
長期間の入居生活において、ホーム側と家族のコミュニケーションは重要です。まずは入居の段階で、こうした相談にも乗ってもらえるのか、施設長や入居相談の担当者が話しやすい雰囲気であるか。また、通いやすい場所にあるホームを選択することも大切な要素です。


●本人が楽しく暮らせそうな要素はあるか
第2号被保険者の場合、他の入居者の方々とは20歳くらいの年齢差があり、どうしても孤立しがちです。同じ年齢くらいのスタッフがいて話し相手になれるか、趣味が続けられるか、同じ趣味を持つ入居者はいるかなどを確認して、楽しく生活できる環境を整えましょう。

各老人ホームの公式サイトに「ALS入居相談可能」など疾病の受け入れ可否を明記されているところは非常に少ないです。LIFULL介護の入居相談室では、疾病の状況、探している地域、予算等を伝え、対応できる施設があるか確認ができます。問い合わせをしてみると良いでしょう。

>LIFULL介護 入居相談室

▼ALSの方の介護施設の探し方について詳しくはこちら▼

ALSの方はどの介護施設に入居可能?必要なケアや選び方のコツをご紹介


安価な施設を探す場合のポイント

安価な施設を探す場合は、下記についてしっかり確認しましょう。


●人員体制・夜勤体制
施設の規模によっては、夜勤が1人という場合もあります。緊急時にはどのような体制を取っているのか、過去の事故の有無なども確認しましょう。


●建物の構造

もともと高齢者施設として建てられた物件ではない場合があります。微妙な段差やスタッフが見守りしにくい構造など、ケアする上でのリスクを認識しておきましょう。


●病状が進行した場合の転居のタイミング

病状が進行して24時間の医療体制が必要となった場合、安価な施設では対応が難しく転居が必要になります。そのタイミングを確認し、転居先の情報を入手しておきましょう。

ご質問のALSの方の場合、将来的に人工呼吸器が必要になることも考えられます。その時には、介護療養病床(介護医療院)へ転居するのも一つの選択肢です。

公的施設も併せて検討する

特養や老健などの公的施設を利用することで、費用の節約につながります。

要介護3以上であれば特別養護老人ホーム(特養)へ申し込みをしておきましょう。すぐに入居できるかは施設によりますが、待機期間のみ民間の有料老人ホームを利用するという方法があります。

また、待機期間のみという条件で、介護老人保健施設(老健)でも受け入れてくれるケースもありますので、個別に問い合わせをしてみましょう。

>要介護3以上が対象の公的施設「特養」とは

>リハビリに注力する短期入居施設「老健」とは


まとめ


第2号被保険者の方の場合は、入居期間はどうしても長期になり費用はかさみます。進行性の病気の場合は、将来的に転居が必要になることも考えなくてはなりません。

また、年齢的に、お子さんの教育資金がかかるという方も少なくないでしょう。無理なく払い続けるためには、総合的に考えあわせた綿密な予算計画が必須です。

このQ&Aに回答した人

武谷 美奈子
武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)

学習院大学卒 福祉住環境コーディネーター 宅地建物取引士
これまで高齢者住宅の入居相談アドバイザーとして約20,000件以上の高齢者の住まい選びについての相談を受ける。 「高齢者住宅の選び方」「介護と仕事の両立」等介護全般をテーマとしたセミナーの講師をする傍ら、テレビ・新聞・雑誌などでコメンテーターとして活躍。 また日経BP社より共著にて「これで失敗しない!有料老人ホーム賢い選び方」を出版。