腰椎圧迫骨折とは?症状や後遺症、治療法などを解説

腰椎圧迫骨折は、骨粗しょう症を合併する高齢者に多い骨折です。腰痛に似た症状が出ますが、後遺症が残るリスクもあるため早期発見・治療が肝心です。生活習慣を少し見直すだけで予防できるので、本記事を参考に生活を振り返ってみてください。

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腰椎圧迫骨折とは

腰椎圧迫骨折は脊椎圧迫骨折の一種です。脊椎は椎骨と呼ばれる骨が連結したもので、頸椎、胸椎、腰椎、仙椎など複数のパーツからなっています。このうち腰椎の椎体が圧迫されて潰れてしまうのが腰椎圧迫骨折です。

腰椎と胸椎の間で起こることが多く、身体を動かしたときに激しい腰の痛みを伴います。一方、安静時はそれほど痛みを感じないのが特徴です。

腰椎圧迫骨折の原因

高齢者の腰椎圧迫骨折の主な原因として骨粗しょう症が挙げられます。骨粗しょう症とは加齢などの要因で骨密度が低下して、骨が折れやすくなる病気です。骨粗しょう症の方が尻もちや転倒で衝撃を受けると、腰椎圧迫骨折を起こすことがあります。

骨粗しょう症は閉経後のホルモンバランスにも関係があるといわれており、女性に多い病気です。食事や運動、喫煙歴などの生活習慣とも深く関係します。骨粗しょう症がない場合でも、スポーツによる外傷や転落事故、がんの転移部などによって腰椎圧迫骨折が起こることもあります。

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腰椎圧迫骨折の症状

腰椎圧迫骨折の主な症状として強い腰痛が挙げられます。とくに激しい痛みが出やすいのは寝返りを打つときや、身体を起き上がらせるときなど。骨折によってつぶれた椎体が神経を圧迫することで、下肢の痛みやしびれなどの症状が出ることもあります。

腰椎圧迫骨折の後遺症

背骨の曲がり、ゆがみ
神経麻痺や歩行障害
逆流性食道炎
膀胱直腸障害

腰椎圧迫骨折が発症した方の中には、治療後にさまざまな後遺症が残り日常生活に支障が出ることもあります。後遺症次第では、手術が必要になるケースもあるため、日常的なサポートやリハビリが必要な場合は、介護施設の利用なども検討しましょう。

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背骨の曲がり、ゆがみ

腰椎圧迫骨折によって椎体がつぶれると、背骨が曲がったり歪んだりすることがあります。

主な症状は、背骨が横に曲がる脊椎側弯症や後ろに曲がる脊椎後弯症などです。脊椎後弯症には特に注意が必要で、背骨周辺の痛みや神経痛を伴うことも。立ったり歩いたりするだけでも激しい痛みがあるため、日常生活を送ることも困難になります。

神経麻痺や歩行障害

圧迫骨折によって骨が潰れると神経が圧迫されて神経麻痺や痛み、しびれなどの神経症状を引き起こすことがあります。悪化すると歩行時に杖が必要になったり、歩行障害を引き起こしたりする可能性もあります。

神経麻痺の症状はすぐに現れないこともあるため、腰椎圧迫骨折の後遺症と気づかないことも多いもの。症状が重度の場合は手術が必要になります。

逆流性食道炎

腰椎圧迫骨折により背骨が曲がった状態でくっつくと、腹部が圧迫され、逆流性食道炎を引き起こすケースがあります。腹部が圧迫されると食事量が減ってしまい、体力や骨密度も低下。食生活の改善で緩和されますが、食道がんなどに発展するリスクがある場合は薬物療法や手術が必要です。

膀胱直腸障害

腰椎圧迫骨折で排尿や排せつに関わる神経が圧迫されると、尿意や便意を感じにくくなり、失禁や頻尿、便秘などを伴う膀胱直腸障害の原因になります。

膀胱直腸障害が起きた場合、神経の圧迫を取り除いたり、変形した脊椎を矯正したりする手術が必要になることも。症状の程度によっては、長期間の治療やリハビリを行う場合もあります。

腰椎圧迫骨折の検査方法

1.医師による問診・触診
2.検査
3.場合によりCT・MRI

腰椎圧迫骨折の検査では、まず医師が問診と触診を行い、痛みが強い箇所や程度をチェックします。その後にレントゲン検査を行うのが一般的。腰椎圧迫骨折の原因が骨粗しょう症であることも考えられるため、骨密度の検査も行われます。

しかし、レントゲン検査は初期の段階だったり骨折の変形が少なかったりすると、正確な診断が難しい場合も。下肢の痛みやしびれなどの神経症状がある場合や、レントゲン検査で圧迫骨折の所見なく症状が続くときは、CTやMRIでより詳しく検査します。

腰椎圧迫骨折の治療方法

保存療法
手術療法

腰椎圧迫骨折の場合は保存療法を選ぶケースがことがほとんどです。しかし、脊椎変形や腫瘍性の圧迫骨折など、特定のケースにおいて手術を選択することもあるため、念頭に置いておきましょう。

保存療法

保存療法は腰部をギプスやコルセットで固定して、骨が固まるのを待ちながら痛みを緩和する治療方法です。一般的に保存療法を行うか否かの判断は、骨折の状態と麻酔の可否に左右されます。かなり痛みが強い場合でも、骨折の状態が酷すぎず麻酔が可能なら保存療法を選択するでしょう。

腰部を固定して安静にすることで痛みが軽減され、骨の変形を防ぐことも可能。手術療法と比べて体力の消耗や身体への負担も少ないため、高齢者に対しても有効です。

痛みが和らぐまでの期間には個人差がありますが、早ければ安静にして1週間から2週間、一般的には1ヵ月から数ヵ月程度です。痛みが強い場合は、炎症を抑えるために湿布や内服薬が処方されます。

手術療法

保存療法で経過を見ても症状が緩和されなかったり、脊椎に変形したりした場合、腫瘍性の圧迫骨折が起こったときは手術療法を行います。

手術は複数種類がありますが、比較的身体への負担が少ない「バルーン椎体形成術(BKP)」などが代表的。バルーン椎体形成術は全身麻酔をして1時間程度で行い、早期に痛みを緩和させられる手術です。

また、場合によっては骨粗しょう症の治療をすることも。主な治療内容は、定期的に骨密度を検査しながら内服薬の投与や皮下注射、静脈注射などです。骨粗しょう症の治療は保存療法の場合に行われる場合もあります。

腰椎圧迫骨折になった高齢者の入院期間

身体状況などによって個人差はありますが、バルーン椎体形成術を行う場合は1週間程度の入院になります。

バルーン椎体形成術は手術時間も短く切開する箇所も小さいため、比較的身体への負担が抑えられますが、まれに合併症を引き起こすことも。その場合は合併症の治療も行うため、本来の入院期間より延びてしまいます。

また再発防止の観点から、退院後も定期的に通院して手術箇所の状態を診てもらう必要があります。手術後に痛みなどを感じた場合は、すぐに病院へ相談しましょう。

腰椎圧迫骨折の予防方法

骨を丈夫にする食生活
適度な運動

腰椎圧迫骨折の予防には、日ごろの生活習慣を改善して、骨粗しょう症のリスクを最大限減らすことが必須。上記に加えて、転倒などを防ぐ生活環境作りも意識しましょう。

骨を丈夫にする食生活

骨粗しょう症を防ぐには、カルシウムやビタミンD、ビタミンKなどを積極的に摂り、骨を強く丈夫に保つ必要があります。日頃から栄養バランスのよい食事を意識しましょう。骨を丈夫にする栄養素やおすすめの食品は下記のとおりです。

骨を丈夫にする栄養素やおすすめの食品

カルシウム
骨や歯を形成する主要成分。牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品、豆腐や納豆などの大豆製品、野菜類や海藻などに豊富
ビタミンD
カルシウムの吸収を促して骨質改善をしてくれる栄養素。サケやイワシなどの魚類、キクラゲやシイタケなどのキノコ類に含まれる
ビタミンK
カルシウムを骨に取り込み、骨を強くする働きがある栄養素。小松菜やほうれん草などの野菜類、納豆、海藻、鶏もも肉などが代表的
骨粗しょう症とは

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適度な運動

適度な運動は骨粗しょう症の予防効果が期待できます。

普段身体を動かさない方は、ウォーキングや負担の少ないジョギングなどからはじめるのがおすすめ。息切れを起こしたり汗を大量にかいたりするほどの運動ではなく、心地よい疲労感が感じられる程度で問題ありません。ウォーキングであれば、1日30分から1時間程度を目安に継続できるとよいでしょう。

腰椎圧迫骨折は早期治療と再発防止の生活習慣が重要

腰椎圧迫骨折は後遺症が残る可能性もあるため、決して侮ってはいけない症状です。早期に発見して治療すれば、骨の変形を防いだり、痛みを緩和したりできます。治療後は再発防止がカギになるので、食生活を見直して可能な範囲で運動するなど、生活習慣の改善を心掛けましょう。

治療や再発防止の過程で、万が一自宅での介護やサポートが困難になったときは施設利用の選択肢もあります。「LIFULL 介護」ではリハビリ環境が整った施設情報も掲載中。専門スタッフによる無料相談室もあるので、お悩みの方はぜひご活用ください。

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この記事の制作者

井上留美子

監修者:井上留美子(整形外科医/松浦整形外科内科院長)

日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。正しく身体を使い、関節を動かして体の基礎をつくることを目的としたヨガ「整形外科ヨガ」を考案。啓発活動を展開している。

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