質問

父は身体が弱くちょっとしたことでも入退院を繰り返すので、いつ長期の入院が必要になるかわかりません。老人ホームに入居したあとに、入院が必要となったら退去を迫られるのでしょうか?
また、入院中も老人ホームに支払う費用などあれば教えてください。

回答
馬渡 初代

老人ホーム入居中に入院しても、すぐ退去を迫られることはありません。ただし、老人ホームで生活していなくても入院期間中の「家賃」や「管理費」等の支払いは発生します。したがって、入院療養費と老人ホームの費用を二重に負担することになります。もし長期間の入院が見込まれる場合は、施設側と相談し今後を判断することとなります。

また、医療処置が常に必要であるといった場合など入居前の心身の状態によっては、そもそも老人ホームに入居できないケースもあります。すべての老人ホームで医療処置ができないわけではなく、24時間看護師が常駐しており、可能な医療処置をうたっている老人ホームも一部あります。

ここでは老人ホーム入居後に入院が生じた場合に想定される生活について解説していきます。入院しがちな方が施設を探す場合や、入居後に入院が必要になった場合に参考にしてください。 馬渡 初代(1級ファイナンシャルプランニング技能士・AFP)

【目次】
  1. 1.入院してもすぐに退去を迫られることはない
  2. 2.入院中でも老人ホームの費用は発生する
  3. 3.長期入院を必要とする場合とは?高齢者に多い病気 
  4. 4.たった一度の転倒で要介護に!注意したい高齢期の骨折
  5. まとめ

1.入院してもすぐに退去を迫られることはない


体調に問題なければ老人ホームに戻ることができる 

入院して居室が空いている状況であっても、老人ホーム側からすぐに退去の話はありません。

入居者の病状や入院の期間によって、いったん退去(契約解除)するのか、そのまま契約を続けるのか判断をすることになります。

病院では、治療が終われば退院を促します。特別な治療は必要ないものの、引き続き療養が必要なケースであれば、住み慣れたホームに戻ることが本人にとって望ましいでしょう。

ただし、退院後も引き続き医療行為が必要な場合は、もとの老人ホームに戻れないということもあります。

>老人ホームで受けられる医療行為(医療的ケア)


長期間に渡る入院のときは契約解除も

入院期間が3ヶ月以上と長引くような場合、老人ホーム側から入居者の家族へ相談する二つのケースがあります。

①医療費(入院費)と老人ホームの費用を二重に負担しなければならず、経済的な状況から老人ホームの費用が支払えないと予想される場合。

②病状によっては老人ホームでの生活が困難であるという場合。そのときは、退去手続きを取ることになります。

このように、一方的に老人ホーム側から退去を迫るわけではありません。しかし、本人にとってより良い選択ができるように本人、家族、老人ホームとでよく話し合いましょう。

入居契約をする前に、重要事項説明書の退去要件をよく確認しておきます。さらに、過去に長期入院をされた入居者がいたか。そのときはどのように対応したのかを確認しておくと参考になるでしょう。



2.入院中でも老人ホームの費用は発生する

入院している最中も、契約を解除しない限り月額費用は発生します。負担するものは、一般的に「家賃」と「管理費」になります。居室を使用していなくても家賃はかかり続けるので覚えておきましょう。

介護保険自己負担分(原則一割負担)や食事代の負担はありません。光熱費やその他日常生活費等の費用の扱いは老人ホームによって異なりますので、入居時に確認をしましょう。

「老人ホームの月額費用」と「病院での入院費用」の2重の支払いが困難な場合、早めに老人ホーム側に相談をしましょう。


3.長期入院を必要とする場合とは?高齢者に多い病気 

長期入院するケースとして、脳梗塞や脳卒中などの脳血管疾患などがあげられます。ガンや心臓病と比べて入院期間が長くなります。

さらに脳血管疾患は身体に麻痺が残るケースが多く、日常生活に戻るまでにリハビリを行う必要があります。急性期の治療が終わった後、リハビリ専門の病院に転院するケースも少なくありません。

退院後もリハビリが必要となった場合は、居住している老人ホームで希望するリハビリを実施できるのか確認しましょう。

もしも希望するリハビリができない場合は、リハビリ体制の充実した老人ホームへの転居も検討しなければなりません。

要介護状態となる要因の第1位は脳血管疾患です。早い段階で「要介護4 や 5」となってしまうのもこの病気が最も多いと言われています。

>脳血管疾患とは|寝たきりになる病気第1位 原因から予防まで

4.たった一度の転倒で要介護に!注意したい高齢期の骨折

病気のほかに、高齢者が入院する要因として骨折があげられます。

特に女性は更年期を過ぎると骨が弱くなる傾向があり、転倒や骨粗しょう症等による骨折のため入院するケースも少なくありません。

骨折する箇所は、大腿部(脚の付け根)や腰の骨折が多く 、これらの部位は姿勢を保つのにも、立ち上がる動作にも必要です。骨折をきっかけに歩けなくなり、要介護状態になるということがあります。

このように、高齢期の入院の原因は様々です。入院中の治療の状況は、老人ホーム側とも情報を共有しておきましょう。

入院したからと言って、すぐに老人ホームの契約を解除する必要はありません。退院後に住み慣れたホームに戻るのが本人にとっても一番適切といえます。

また、特別養護老人ホームでは、長期入院する場合注意が必要です。

なぜなら、入院が3か月を超える場合は退去手続きをおこなう特養が多いからです。

ただし、その後退院して再度施設に入りたいという場合は、優先的に入居できるように配慮してくれるところもあるようです。退去手続きの際に確認しておきましょう。

>高齢者の骨折|70代から急増するワケと予防法

Point!老人ホームの一時介護室
老人ホームによっては、退院後にホームでの生活に慣れるため、居室にすぐ戻るのではなく「一時介護室」に入ることがあります。

一時介護室はヘルパーステーションのすぐ近くに配置されることが多く、投薬のペースに慣れたり、体調の変化にスタッフが早く気付けるようにするための部屋です。
一次介護室での生活に慣れてきたら、自分の居室に戻ります。



まとめ

入居中に入院しても、すぐに退去というわけではありません。退院後、体調に問題がなければ住み慣れた老人ホームにもどることもできます。


ただし、退院後も引き続き必要な医療処置がある場合や、希望するリハビリが実施できない場合は専門病院に転院する。あるいは別の老人ホームへの転居を検討する必要もあります。


注意すべきは特別養護老人ホームなどの介護保険施設です。長期入院(3か月を超えて)になってしまう場合、退去手続きをすることになるからです。


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いかがでしたでしょうか。

近年、入院の短期化が進んでいます。その傾向はこれからも変わりません。退院後はまた元の生活に戻れるかどうかがポイントです。入居契約をする前に、ホームの受け入れ態勢を確認しておきましょう。

もしも入院が長期化が予想される際は、費用面も含めてホーム側と密に相談することをお勧めします。

このQ&Aに回答した人

馬渡 初代
馬渡 初代(1級ファイナンシャルプランニング技能士・AFP)

ファイナンシャルプランナーとして、一人暮しの高齢者の方の傾聴ボランティアと見守り活動をしています。人生100年時代。自分らしい老後を過ごすための終活セミナーやエンディングノート書き方ワークショップを実践中。
「独居老人を一人にさせない」をモットーに社協の方と連携で地域福祉を推進しています。