質問

遠方に住む70代の母が老人ホームへの入居を検討しています。今は要支援2ですが、ホームに入り生活範囲が狭まることで、ゆくゆく寝たきりにならないか心配です。
最近、介護予防や自立支援という言葉をよく聞きますが、有料老人ホームではどんな取り組みをしているのでしょうか?

回答
吉田 匡和

有料老人ホームには、専属のスタッフによって24時間介護を受けられる「介護付き有料老人ホーム」と、必要に応じて外部の介護サービスを利用する 「住宅型有料老人ホーム」があります。
いずれも個々の身体能力に応じたケアプラン が作成され、トレーニングマシーンを使った機能訓練や、レクリエーション要素を含んだリハビリテーションなどが行われています。 吉田 匡和(社会福祉士 介護支援専門員)

【目次】
  1. 1.近年の介護は「自立支援」「介護予防」中心の考え方にシフト
  2. 2.老人ホームで行われる自立支援の取り組みとは?
  3. 3.自立支援に積極的なホームの見極め方
  4. まとめ.介護予防・自立支援はサービスのひとつです

1.近年の介護は「自立支援」「介護予防」中心の考え方にシフト

これまでの介護は「本人ができないことを、手助けをする」というのが基本的な考え方でしたが、一方では「できる能力があるにもかかわらず、その機会を奪っているのではないか?」という指摘もされてきました。そうした経緯から、介護保険制度では「尊厳の保持」と「自立の支援」が理念に掲げられています。
現在では、「人として自尊心を持って生きるために、残存機能(本人が保持している能力)を維持するための支援」が介護の理念として定着ています。
また、近年では自立支援だけでなく、介護を予防するためのリハビリテーションである「介護予防」の考えも浸透しています。

1-1.介護予防とは何か

2000年に創設された介護保険制度により、あっという間に要介護者(サービス利用者)が増え財政難に陥りました。原則として介護サービス費の9割は公費でまかなわれるため、国は費用負担の抑制として「要介護状態にならないためのシステム作り」に着手します。
その一つとして、2005年の介護保険法改正を契機に、要支援の区分を介護保険サービスから切り離し、介護予防サービスに移行させました。厚生労働省では介護予防の理念を以下のように定義しています。

・高齢者が要介護状態(介護が必要な状態)にならないように予防する。

・介護が必要になったときには回復を目指し、回復が難しい場合は悪化を防止する。

・日常生活を送るための機能が低下した高齢者に対してリハビリテーションの理念を踏まえて、「心身機能」「活動」「参加」のそれぞれの要素にバランスよく働きかける。

・高齢者の運動機能や栄養状態といった心身機能の改善だけを目指すものではなく、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を促し、それによって一人ひとりの生きがいや自己実現のための取組を支援して、生活の質の向上を目指す。
(出典:厚労省ホームページ「これからの介護予防」)

最初は「予防のためのリハビリテーション」という趣旨が理解されにくく、思ったような参加が見込めませんでしたが、「身体機能を維持することにより、現在の生活が継続でき、その結果仕事や趣味などの社会参加ができる」というメリットを繰り返し伝えることで、徐々に浸透していきました。

1-2.自立支援介護とは

これまでの介護は、「できるだけ手を差し伸べることが親切」と考えられていました。
そこには、高齢者が自分の能力を使ってゆっくりと食事をするよりも、介助した方が早く食事を済ませることができ、仕事がスムーズに進むといった介護側の都合も大いにありました。
しかし世相の変化とともに「本人ができる能力を阻害してよいのか」という機運が高まり、現在の介護は、「箸で食事をするのが無理なら介護用スプーンを使って自分で食べる」など、本人の能力を引き出すようにアプローチする「自立支援介護」へシフトしています。

2.老人ホームで行われる自立支援の取り組みとは?

要介護状態にならないためには運動が必要です。高齢者の運動不足は、廃用症候群という機能低下を招く要因にもなるのです。老人ホームでは一般的にフィットネス関連器具を使用した介護予防運動指導、レクリエーションなどが行われています。

2-1.介護予防運動指導員を配置

財団法人東京都健康長寿医療センター研究所が認定する民間資格です。老人ホームでは、介護予防プログラムを立案し、プログラムに基づいて高齢者の筋力向上トレーニングなどの実施・指導、トレーニングの効果測定などを行っています。

2-2.機能訓練を実施

介護予防運動指導員などを中心に、介護予防するための運動を実施。日常生活に必要な筋力を維持するための介護予防体操や、マシンを使用したトレーニングやリハビリの個別相談口腔機能(噛んだり飲んだりする力)を維持するための口腔体操を行い、身体機能の維持をサポートしています。

2-3.生活リハビリ

介護予防やリハビリは器具を使った運動だけではありません。簡単な調理をする、部屋から共有スペースを歩く、アクティビティへの参加など、生活にメリハリをつけることも介護予防になります。

2-4.バリエーション豊富なレクリエーション

お正月の新年会から始まり、節分、ひな祭り、七夕、敬老会、クリスマスなど四季折々の行事が実施されています。また外食や水族館や動物園、スポーツ観戦といった外出行事も盛んに行われ、入居者に季節感と刺激、社会との交流を絶やさない工夫がされています。

3.自立支援に積極的なホームの見極め方

多くの老人ホームが自立支援を掲げていながら、取り組みに消極的な施設も散見されます。特に住宅型有料人ホームの職員配置には法的な配置基準は存在しません。介護報酬減算のようなペナルティがないため、リハビリ関連のスタッフが欠員したままになっている施設もあるようです。自立支援に積極的なホームの見極めるには、下記の点に注意してみてください。

3-1.リハビリスタッフの配置を確認する

まずはリハビリ関連のスタッフがいるか確認します。
専属スタッフがいなくても、デイサービスなどを併設している場合は、そこでリハビリを実施している場合がありますので、そうした活動を行っているかも確認しましょう。

3-2.リハビリの内容を確認する

障害の程度は個人差があるため、リハビリの内容は個別にプログラムを作る必要があります。入居を予定されている方の心身の状況を説明し、その方にはどのようなリハビリが想定されるのか、事前に確認するとよいでしょう。また、可能であれば実際にリハビリの様子を見せてもらいましょう。スタッフの対応が丁寧で、かつ入居者が楽しそうにリハビリしていれば「自立支援に積極的なホーム」といえるでしょう。

3-3.レクリエーションの内容を確認する

ただ体を動かすのは辛いもの。リハビリを行うには、「家族と旅行をするため」や「レクリエーションに楽しく参加するため」など、身体機能を維持するための動機と目的を持ってもらう必要があります。レクリエーションが充実していれば生活は楽しくなるため、リハビリへのモチベーションも高まることでしょう。

まとめ.介護予防・自立支援はサービスのひとつです

最近では介護予防・自立支援の考えが進んでおり、有料老人ホームでもさまざまな取り組みが行われています。
介護予防・自立支援をサービスの一つとして、メイク、ネイル、足浴、マッサージなどのリラクゼーションや各種教室の開催などに力を入れ、他の老人ホームと差別化を図っているところもあります。
ご自身の好みに合った介護予防・自立支援を行っている老人ホームを選び、楽しく健康維持
に努めてください。

このQ&Aに回答した人

吉田 匡和
吉田 匡和(社会福祉士 介護支援専門員)

高齢者福祉施設生活相談員及び管理職。福祉専門学校において教職員の経歴を持つ、実践力と学術的知識の二つの顔を持つスペシャリスト。自身も介護を必要な親を抱えており、親身になって懇切丁寧にご質問にお答えします。