【医師監修】関節リウマチの症状・原因・治療法や生活の工夫

関節リウマチは免疫に異常が起きて、関節が腫れたり、変形したりする病気です。早期発見・治療することで、悪化を防げます。ここでは症状・原因・治療法や、家庭でできる工夫、経済的な支援について解説します。

関節リウマチとは?

関節リウマチとは、免疫が誤って自分の細胞や組織を攻撃してしまうことで、滑膜(かつまく:関節を取り囲んでいる膜)が炎症を起こしたり、骨や軟骨が破壊されたりして、関節の腫れや痛み、変形がみられる病気です。

一度変形した関節は元には戻りませんが、早期に発見して適切な治療を行えば、症状を抑えて変形を防ぐことができます。

30〜50代の女性に多くみられ、日本には60〜100万人の患者さんかいると言われています。

関節リウマチは65歳未満でも要介護認定の対象

介護保険サービスは本来、65歳以上でなければ利用することができません。しかし関節リウマチは介護保険の特定疾病に指定されています。そのため、40歳以上64歳未満でも要介護認定を受けて、介護保険サービスを利用することができます。

関節リウマチの原因

関節リウマチでは、免疫機能が誤って自分の体の一部を「自分のものではない」と判断し、攻撃します。

そのために炎症が起き、関節の腫れや痛みが現れます。

なぜそのようなことが起こるのか、原因はまだよくわかっていません。

遺伝的な要因や細菌・ウイルスの感染が関連していると考えられています。

初期症状を知って早期発見を

関節リウマチの代表的な症状は、関節の痛み・腫れ・こわばりと、倦怠感などの全身症状です。進行すると関節が変形してしまいます。

関節の痛み・腫れ・こわばり

関節の痛みなどは左右対称に症状が現れることがほとんどです。

また起床後30分ほどが最も症状の出やすい時間で、日中や夜は比較的落ち着いているのが特徴です。

症状が悪化すると、関節の変形がみられるようになり、日常生活に支障をきたすこともあります。

一度変形すると元には戻りませんが、関節リウマチを早期に発見して治療することで、関節の変形を予防することができます。

パジャマのボタンが外しづらい、ドアノブが回しにくい、靴ひもやリボンが結びにくいなどの症状がある場合は、関節リウマチの初期症状かもしれません。かかりつけ医や整形外科医に相談しましょう。

全身症状

関節リウマチは関節の病気と思われがちですが、微熱、倦怠感、貧血、食欲不振など、全身にも症状が現れます。また腎臓の機能が低下することもあります。

関節リウマチの検査

関節リウマチの主な検査は血液検査、尿検査、画像検査です。

血液検査
血液検査では主に、炎症の程度や、リウマチの患者さんによくみられる抗体や酵素を調べます。また貧血の有無なども調べます。
尿検査
関節リウマチが長く続くと腎臓の機能が低下して、尿たんぱくがみられることがあります。
画像検査
病気の進行具合や炎症の程度をみるために、レントゲンやCT、MRI、超音波検査などを行います。

治療の目的は良い状態を長く保つこと

関節リウマチを完全に治す治療法は残念ながらありません。そのため、治療の目的は関節の破壊を最小限に抑えて、いい状態を少しでも長く保つことです。主に薬物療法とリハビリテーションを行いますが、場合によっては手術を実施することもあります。

薬物療法

抗リウマチ薬
免疫の異常を抑えることで、関節の破壊を防ぎます。治療の主体となる薬です。骨髄抑制、肝障害などの重い副作用が現れることもあるため、定期的に検査を受けながら使用します。
生物学的製剤
抗リウマチ薬で効果がみられないときに使用します。炎症を抑えることで、軟骨や骨の破壊を防ぎます。感染症にかかりやすくなることに加えて、高額というデメリットがあります。
ステロイド
炎症を速やかに抑える働きがあり、抗リウマチ薬の補助として使われます。長期間使用すると糖尿病、白内障、感染症、骨粗しょう症などの副作用が現れるため、抗リウマチ薬の効果が出てきたところで薬の量を徐々に減らし、中止していきます。
非ステロイド性消炎薬
痛みを発生させるプロスタグランジンという物質ができるのを防ぎ、痛みや炎症を抑えます。病気の進行を止める作用はありません。

リハビリテーション

  • 体を動かすことで、関節が固まって動かなくなることを防ぎます。また筋力低下を予防します。このほかに、自助具を使う練習や関節を保護するための装具の装着なども行います。

手術

人工関節置換術
ひざや股関節などがうまく動かせないときに、人工関節に入れ替える手術を行います。
関節固定術
首の骨が変形すると、神経が圧迫されて手足がしびれたり、突然呼吸が止まってしまうことがあります。こうしたことを防ぐために、手術で首の骨を固定します
滑膜切除術
炎症の程度がひどい滑膜を取り除く手術です。

このほか、腱が切れたときや足の関節が変形したときにも手術を行うことがあります。

負担軽減のために家庭でできること

日常生活を送る上で、できる限り関節に負担をかけないことが悪化を防ぐためには大切です。

ここでは関節に負担をかけないようにご家庭でできる工夫について紹介します。

自助具の活用

関節が変形すると、調理や食事、服の着脱など、日常の動作が困難になることもあります。

そのようなときには自助具を使うことで、患者さんが一人でできる動作が増えて、生活の質を保つことができます。

介護ショップや在宅介護支援センターなどで取り扱っているので、試してみるといいでしょう。

家族のサポート

関節リウマチの患者さんは、重いものを持つことが難しくなります。

また症状の現れ方は日によって波があり、いつもはできている家事が、今日は自力で行えないということもあります。

患者さんとご家族で、日々しっかりとコミュニケーションを取り、必要なサポートができるように心がけましょう。

生活習慣を整える

関節リウマチは完治することがなく、長く付き合っていく病気です。悪化させないためにも、健康的な生活を送りましょう。

バランスの良い食事や入浴、適度な運動が大切です。また頑張りすぎず、適度に休養を取り入れましょう。

利用できる経済的な支援制度

関節リウマチの治療費は、生物学的製材などの使用で治療費が高額になることもあります。

先ほど紹介した介護保険サービス以外にも、利用できる経済的な支援制度があります。積極的に利用して、負担を軽減しましょう。

高額療養費制度
医療機関や薬局で支払う1ヶ月あたりの医療費が限度額を超えた場合に、払い戻しを受けたり、事前に申請することで窓口での負担を限度額までに抑えたりすることができます。
加入している医療保険の担当窓口に問い合わせましょう。
治療用装具支給制度
医師の指示に基づいて治療用装具を作った場合、その費用の一部を療養費として請求することができます。
加入している医療保険の担当窓口に相談しましょう。
難病医療費助成制度
関節リウマチの中でも悪性関節リウマチは難病医療費助成制度の対象です。
悪性関節リウマチの治療で払う医療費の上限が定められ、上限額に達した場合はそれ以上払う必要がありません。
利用するには医師の診断書と、お住まいの市区町村の担当窓口への申請が必要です。まずはかかりつけ医に相談しましょう。
障害者手帳・障害者年金
関節の変形など身体的な障害がある場合には障害者手帳を取得することができます。
所得税や住民税の控除、公共交通機関などの割引などが受けられます。また条件を満たしていれば障害者年金の受け取りが可能です。

支援制度を賢く利用して、療養生活の負担を軽くしていきましょう。

イラスト:坂田 優子

この記事の制作者

矢込 香織

著者:矢込 香織(看護師/ライター)

大学卒業後、看護師として大学病院やクリニックに勤務。その後、メディカル系情報配信会社にて執筆・編集に携わる。現在は産婦人科クリニックで看護師として勤務をするかたわら、一般生活者のヘルスリテラシー向上のための情報発信を行っている。

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noteKaori Yagome*看護師

Twitter@KaoriYagome

上野 正喜

監修者:上野 正喜(医療法人社団慶泉会 町田慶泉病院 副院長)

日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本専門医機構脊椎脊髄外科専門医
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
日本骨粗鬆症学会認定医

公式町田慶泉病院

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