大腿骨頸部骨折とは?症状や原因、対策からリハビリ、治療まで

大腿骨頸部骨折

大腿骨頸部骨折の患者数は年々増加しています。寝たきりになることを防ぐためには日常生活から予防することが重要。

万一骨折してしまった場合には適切な治療やリハビリが必要です。原因や施設利用についても触れているので、ぜひ参考にしてください。

大腿骨頸部骨折とは

大腿骨頸部骨折は股関節にある大腿骨(太ももの骨)を支える頸部(付け根、くびの部分)の骨折です。

転倒によって起きることが多く、骨折すると痛みがあり立つことも歩くこともできません。

骨折した側の足は外側を向いて、もう片方の足より短くなるのも特徴。高齢者が寝たきりになる大きな原因のひとつでもあります。

高齢者人口増加の社会的背景から、今後も患者数が増えると予想されている病気です。

大腿骨転子部骨折との違い

大腿骨頸部骨折と似たものに、大腿骨転子部骨折(だいたいこつてんしぶこっせつ)があります。

頸部骨折は太ももの骨のうち股関節の内側部分が折れた状態です。一方、転子部骨折は股関節の外側部分が折れた状態を指します。

転子部骨折では骨に栄養を届ける血管は傷つかないので、骨がくっつきやすく比較的回復しやすいと言えます。

それに比べて頸部骨折は血管が傷ついてしまうために回復が遅く、ときには骨が死んでしまう大腿骨頭壊死などの合併症を起こす可能性もあります。

高齢者の骨折

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原因

転倒

骨粗しょう症

大腿骨頸部骨折は主に転倒と骨粗しょう症が原因で起きます。明確な原因があるため、適切な措置を講じればある程度対策が可能です。

転倒

大腿骨頸部骨折の原因として最も多いのは転倒です。

高齢になると下肢の筋力や活動量の低下から歩行が不安定になること、視力障害から障害物を見落としてしまうことなどが転倒の要因に。特に70歳をすぎると転倒による大腿骨頸部骨折が増加します。

転倒して動けなくなった場合はまず大腿骨頸部骨折を疑います。無理に動かそうとせず救急車を呼ぶなどしてすぐに医療機関を受診しましょう。

骨粗しょう症

大腿骨頸部骨折の原因として、骨粗しょう症も挙げられます。軽い転倒でも、骨粗しょう症で骨がもろくなっている高齢者の場合は骨折してしまうことも。

寝たきりや活動量が低下した方の骨は脆くなっており、他者が少し動かしておむつ交換をしただけでも骨折することがあります。

強い骨を維持できるようにすることが大切です。

対策

骨粗しょう症の予防・治療

転びにくい環境作り

運動

定期的な検査

大腿骨頸部骨折の対策には上記のものが挙げられます。筋力低下や寝たきりの予防にも繋がりますので参考にしてください。

骨粗しょう症の予防・治療

現段階で骨粗しょう症でなくても、骨密度は年齢とともに下がりますので、日頃から予防を心掛けましょう。

予防の基本は食事なので、乳製品や小魚、乾燥キノコ、納豆などは意識して食べるようにします。

骨粗しょう症と診断されている場合は、飲み薬や注射で治療します。

転びにくい環境作り

家の中はなるべくバリアフリーな環境を心掛け、必要であれば手すりや滑り止め、足台を設置します。

外出時の転倒対策としては、履きなれた靴を履いたり、杖や押し車を活用したりする方法があります。

できる限り家族や介護者が付き添うことも必要でしょう。

運動

日頃からウォーキングやストレッチ、体操などの運動習慣を取り入れておくと、骨粗しょう症のみでなく筋力低下も予防できます。

一人では運動するきっかけが作れない場合は、地域のサロンに参加したり、デイサービスなど介護施設に通ったりする方法もあります。

定期的な検査

骨粗しょう症と診断されていなくても、定期的には骨密度などの検査を受けましょう。

骨密度の検査は注射など痛みを伴う検査ではなく、低エネルギーのX線や超音波で測定するものなので安心です。

1年に1回など、自分で頻度を決めて受診するのがおすすめ。

治療

骨接合術

人工骨頭置換術

保存療法

大腿骨頸部骨折の治療ではほとんどの場合手術をしてリハビリを行うことになりますが、場合によっては保存療法を取ることも。

どのケースに当てはまるか参考にしてください。

骨接合術

骨折したところを金属で固定して、骨をくっつける手術です。骨折のズレが少ないときに行います。

人工骨頭置換術(後述)に比べて手術による負担は少ない一方、うまく骨がくっつかなかったり、あとで合併症が生じたりすることも。

合併症が生じたときには、再手術によって人工骨頭置換術を実施します。

人工骨頭置換術

太ももの骨のうち、股関節部分を切り取って金属やセラミックでできた人工骨頭と交換する手術で、骨折のズレが大きいときなどに行います。

大腿骨頭壊死などの合併症を避けられますが、手術後は脱臼を起こすことがあるため、深くしゃがむ、股関節を大きく捻るなどの動作はしないように気を付ける必要があります。

保存療法

保存療法は、手術をせず安静にして過ごして骨が付くのを待つ治療法です。

骨が元の状態のようにきちんと付かなかったり、体重をかけられるまでに改善しなかったりするケースも。

元々寝たきりで歩く可能性がない場合や手術に耐える体力がない場合に選択されます。

リハビリ

・ベッド上座位保持訓練

・車椅子への移乗

・立位保持訓練

・平行棒内歩行訓練

・歩行器での歩行訓練

・松葉杖・T字杖での歩行訓練(個人の目指すゴールや使いやすさによって変わる)

大腿骨頸部骨折では、手術後できるだけ早期からリハビリを開始します。

高齢者では寝たきりになる時間が長くなると筋力や認知機能の低下につながるためです。リハビリは術後早い時期から以上のように進めていきます。

リハビリを進めながら骨折した周囲の関節を動かす可動域訓練や、筋力トレーニングも並行して実施します。

大腿骨頸部骨折のリハビリについてさらに詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。

関連記事大腿骨骨折の術後リハビリと注意点

リハビリや入院期間における周囲の役割

大腿骨頸部骨折のリハビリ期間には個人差があり、1~3カ月と長期に渡ります。

介護側の方もできる範囲でリハビリを見学し、本人ができることを把握しましょう。

また入院生活の間に、介護保険の申請や区分変更の手続きを進めておきます。

介護保険では、車いすやポータブルトイレなどのレンタルや、自宅の改修費用の一部補助もあります。

入院前の状態に戻れない場合には、訪問介護や通所リハビリ、施設入居など適宜介護保険のサービスを利用し、本人・家族の負担を減らしていきましょう。

在宅介護サービスについて詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。

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大腿骨頸部骨折を防ぐには日ごろからの予防が重要

大腿骨頸部骨折は手術や長期のリハビリが必要となるため、日頃から転倒予防・骨粗しょう症予防に努めることが大切です。

受傷した場合には治療後もリハビリや介護が必要になる場合もあります。

介護保険のサービスをうまく活用しながら本人とご家族にとって、よりよい生活が送れるようにしましょう。

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