【特定疾病】糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症(糖尿病の合併症)

糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症は糖尿病に特有の合併症です。

糖尿病の三大合併症とも呼ばれます。

介護保険の特定疾病に該当しますので、40歳以上であれば介護保険サービスを利用することができます。

ここでは糖尿病の三大合併症について解説します。

糖尿病の三大合併症とは?

糖尿病は、体内の各細胞にエネルギーを送り届ける「インスリン」というホルモンの働きが悪くなることで、慢性的に血液中の糖分の濃度(血糖値)が高くなってしまう病気です。

血糖値が高い状態が長く続くと血管が傷つき、合併症を引き起こします。

特に、細かい血管が傷つくことで起こる糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症は糖尿病特有の三大合併症と呼ばれ、発症して進行すると生活の質が著しく低下します。

糖尿病の三大合併症は介護保険の特定疾病

糖尿病の三大合併症である糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症は、介護保険の特定疾病に該当します。

そのため、40歳以上でいずれかの合併症がある方は、合併症の状況によっては申請することで、介護保険サービスを利用することができます。

詳しくはお住まいの市区町村の担当窓口に問い合わせてみましょう。

糖尿病性神経障害とは?

糖尿病性神経障害は、神経に栄養を送り届けている細かい血管が傷つき、神経がダメージを受けて起こる合併症です。

ダメージを受ける神経には感覚神経、運動神経、自律神経の3種類があり、糖尿病性神経障害で現れる症状は、傷ついた神経の種類によって感覚神経障害、運動神経障害、自律神経障害に分類されます。

また、どの部位の神経がどのくらい傷ついたかによって、現れる症状が変わってきます。

感覚神経障害

糖尿病を発症して5年程度という比較的早期から現れることがあり、両足の指先から始まり、両手の指先へと進行します。

初めは違和感から始まり、異常感覚(足の裏に紙が張り付いているような感覚、平らな場所を歩いているのに玉砂利の上を歩いているような感覚、熱いお風呂に入るのに熱さをあまり感じないなどの症状)がみられるようになります。

進行すると温痛覚障害(寒くないのに冷えを感じる、熱くないのに熱さを感じる)、しびれ、痛み(針で刺すような鋭い痛み)が出現します。

最終的には神経が完全に破壊されてしまい、画びょうや釘を踏んでも痛みを感じなくなってしまいます。

このように神経障害が進行すると、傷がついても痛みを感じなくなるので、手当てが遅れてしまうことがあります。

その結果、傷が大きくなり潰瘍(かいよう:大きくえぐれた傷)や壊疽(えそ:皮膚や筋肉などが壊死してしまうこと)にまで進行し、指や足を切断しないといけなくなることがあります。

さらに、心筋梗塞や糖尿病薬の副作用で低血糖が起きた場合も、神経障害が進行していると症状が乏しくなるために気づくことができず、対処が遅れて命の危険に晒されることがあります。

運動神経障害

筋肉が弱くなり、進行すると筋肉が萎縮(いしゅく:縮んで小さくなること)して、太ももや足の筋肉が落ちます。

進行すると足の変形を起こすことがあります。

脳神経の一部が傷つくと、顔面神経麻痺や目の動きが障害されることがあります。

自律神経障害

自律神経は血圧・心拍・体温や、胃腸の働き、排泄機能を調節しています。

そのため、神経障害が進むと起立性低血圧(立ちくらみ)、便秘や下痢を繰り返す、失禁や残尿感、勃起障害などの症状が現れることがあります。

糖尿病性神経障害の治療

糖尿病性神経障害の治療は、血糖値のコントロールが基本です。

軽症の場合は血糖値を良好にコントロールすることで症状が緩和することがあります。

血糖値が短期間で急に改善すると一時的に症状が悪化することがありますが、長くても半年程度で必ず良くなります。

このほか、痛みやしびれなどの症状には、しびれの原因物質が体の中で作られるのを防ぐアルドース還元酵素阻害薬という飲み薬を使用したり、症状に合わせて鎮痛剤や整腸剤などを使ったりします。

神経障害の薬は全ての人に効くものがありません。

人によって相性があるため、効果が出るまでさまざまな薬を試す必要があります。

糖尿病性腎症とは?

腎臓には糸球体(しきゅうたい)という毛細血管が集まったフィルターのような組織が100万個もあり、そこでは24時間365日、体内で使われて汚れた血液が集められます。

フィルターは汚れた血液を濾過してきれいになった血液や必要なタンパク質を体に戻し、不要なゴミ(老廃物)や水分を尿として捨てる働きがあります。

糖尿病性腎症はこの糸球体のフィルターに穴が開いてしまい、体に戻さなくてはいけないタンパク質が尿に漏れることで、徐々に腎臓の働きが落ちてきてしまう病気です。

始めは自覚症状がないため、尿検査(タンパク・微量アルブミン)や血液検査をしなければ発症に気づきません。

進行するとむくみ、息切れ、食欲不振などの症状が現れます。

腎臓の機能がかなり落ちて腎不全になると、血液中の老廃物が取り除けなくなり、嘔吐、吐き気、激しい疲労感、筋肉のこわばりなどが見られるようになります。

糖尿病性腎症の治療

治療の基本は、

1)減塩などの食事療法、

2)運動療法、

3)尿蛋白を減らす作用のある薬を用いて、血糖・血圧・コレステロール値を目標値におさめて維持するように管理すること

です。

進行してしまうと、食事から摂るタンパク質の量を減らす必要があり、食事内容を大きく変える必要があります。

さらに、血液中の不要なゴミ(老廃物)や水分が取り除けないほど腎臓の機能が悪化すると(末期腎不全)、生命維持のために透析療法が必要になります。

日本で血液透析を始める原因となる病気で最も多いのは、この糖尿病性腎症です。

糖尿病性網膜症とは?

網膜は、目の中でスクリーンの役割を果たしている、一番奥にある薄い膜です。

高い血糖値にずっと晒されることで網膜の血管が傷つき出血(いわゆる眼底出血)するのが糖尿病性網膜症です。

網膜症は出血してもすぐには自覚症状がありません。

実際はいないのに蚊が飛んでいるように見える(飛蚊症:ひぶんしょう)、赤いカーテンがかかったように見える、突然視野が欠けるなどの症状が出たときには、かなり進行していることが多いです。

そのため糖尿病と診断されたら、症状がなくても年1回は眼科を受診して、早期に発見することが大切です。

初期の時点で発見できれば、網膜にできた出血しやすい血管(新生血管)をレーザーで焼いて進行を遅らせたり、新生血管ができるのを邪魔する薬を目に注射したりします。

出血が多い、網膜が剥がれてしまったなどの場合には、手術による治療を行うこともあります。

三大合併症との向き合い方

糖尿病患者にとって合併症の発症・進行は、生活の質が非常に落ちることがあります。

合併症を発症・進行させないためにも、しっかりと糖尿病の治療を継続し、健康的な生活を送ることが大切です。

血糖・血圧・コレステロールを管理する

合併症を発症・進行させないためには、血糖、血圧、コレステロールを管理することが大切です。そのために通院は継続するようにしましょう。

また、バランスの良い食事と適度な運動も重要です。

食事や運動内容は症状の程度によって制限が必要になることがあるため、医師と相談するようにしましょう。

年に1回眼科を受診する

糖尿病性網膜症は症状が現れたときにはかなり進行しており、人によっては失明寸前ということも珍しくありません。無症状であっても年に一度は眼科を受診するようにしましょう。

禁煙

タバコを吸っている人の方が合併症を発症するリスクが高まることがわかっています。

禁煙治療は健康保険が使えます。

タバコを吸っていて止めたいのに自力でやめられない人は、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。

糖尿病は悪化させない、合併症を発症しないことがとても重要です。

生活の質を保つためにも、わからないことがあれば積極的に医師に相談しましょう。

この記事の制作者

山本直之

監修者:山本直之(八王子糖尿病内科クリニック・院長)

2002年に東海大学医学部卒業。
2008年より東海大学医学部腎内分泌代謝内科・助教。
2009年より東海大学八王子病院糖代謝内科赴任。
2016年より現職。
医学博士・日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・研修指導医。

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