【はじめての方へ】間質性肺炎|肺が硬くなり咳や息苦しさが出る病気
間質性肺炎は肺が硬くなることで咳や息苦しさが生じる病気です。原因によってさまざまな種類があり、なかには治療法がなく、悪化すると命に関わるものもあります。
ここでは症状や治療法について解説します。また治療にかかる費用の経済的な支援についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
間質性肺炎は肺が硬くなる病気
間質性肺炎は、肺が炎症・損傷と修復を長年繰り返すことで、膨らみづらくなってしまう病気です。通常の肺炎との違いや、発症の原因をみていきましょう。
通常の肺炎との違い
肺は肺胞という小さな風船の集まりでできており、肺胞の周りを支えて包み込んでいる、外枠に相当する部位が間質です。間質性肺炎では、この間質で炎症や損傷が起こります。これを繰り返すことで肺胞の壁が厚く硬くなり、治療しても戻らなくなる場合もあります。その原因はさまざまです。
一方、通常の肺炎は肺胞の中で炎症が起こり膿(うみ)がたまった状態で、肺胞の壁にも炎症は及びますが、中にたまった膿が完全に体の外に出せれば後遺症を残さず回復します。 微生物の感染がきっかけとなるため、抗菌薬などで治療ができ、もとの状態に戻ることができます。
間質性肺炎の原因
間質性肺炎は原因によって幾つかに分類されます。それぞれ治療法が異なるため、どの種類に当てはまるかを見極めることが重要です。
原因が不明のもの
原因が不明の間質性肺炎を特発性間質性肺炎といいます。間質性肺炎で最も多くみられ、難病法の指定難病となっています。そのなかでも一番多い特発性肺線維症(IPF)は、いまのところ完治できる治療法がありません。診断確定後から亡くなるまでは平均して2.5〜5年ほどですが、個人差が大きく予測が難しい病気です。
職業・環境によるもの
粉じん・石綿などによるじん肺、カビ・有機物の粉じん・化学物質などによる過敏性肺炎があります。
治療薬の副作用によるもの
放射線治療による放射線肺や、薬やサプリメント、栄養食品などによる薬剤性肺障害があります。
全身性の病気によるもの
関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病によるものがあります。
主な症状は咳と息苦しさ
間質性肺炎では、痰を伴わない乾いた咳や息苦しさがよくみられる症状です。初めは身体を動かしたときに息苦しさを感じますが、その程度は徐々に強くなっていきます。
また間質性肺炎の中で最もよくみられる特発性肺線維症では、4割近い人で指先が太鼓のばちのように太くなる「ばち指」がみられます。
さらに特発性肺線維症は感染症などをきっかけに、急激に症状が悪化する急性増悪を起こすことがあります。とても危険な状態で、死亡率は約80%と高く、改善しても平均して6ヵ月で亡くなっています。急性増悪(ぞうあく)を防ぐために、手洗い・うがいなどの感染対策や、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠の確保など、生活習慣を整えることが重要です。
ここまで間質性肺炎の原因や症状についてみてきました。ここからは受診の目安や検査、治療について、解説していきます。
心配なときは呼吸器内科を受診しよう
受診の目安は、体動時に息苦しさを感じたり、乾いた咳が2週間以上続く場合です。特発性肺線維症では比較的ゆっくりと進行する特徴があります。
自分では気がつかないうちに悪化するため、自覚症状がある場合は病状が進行していることが多いです。また自覚症状がなくても、健診で異常を指摘されることがあります。このようなときには、かかりつけ医や呼吸器内科を受診しましょう。
医療機関では間質性肺炎が起きているのかを検査で確認すると同時に、治療法を決めるために、原因についてしっかりと調べます。
問診
原因となる喫煙歴、職業歴、粉じん吸入歴、ペットの有無、居住環境,既往歴、家族歴、漢方やサプリメントの服用がないかを確認します。
レントゲン・CT
間質性肺炎の原因を鑑別したり、進行の程度を調べます。また、特発性肺線維症では合併症としてよくみられる肺がんの有無についてもチェックします。
血液検査
肺炎の原因、炎症や肺損傷の程度、血液中の酸素濃度について調べます。
肺機能検査
「スパイロメーター」という機械を使って、肺に出入りする空気量や酸素の交換能力を評価します。定期的に検査することで病気の進行スピードを推定します。
また、必要があれば気管支鏡や手術で肺の組織を採取します。麻酔を用いるため、入院が必要となります。
間質性肺炎の治療、はじめの一歩は禁煙から
間質性肺炎は原因によって治療法が異なりますが、共通して大切なことは禁煙です。特発性間質性肺炎のなかには禁煙のみで症状が改善するものもあります。
特発性間質性肺炎
最も多くみられる特発性肺線維症では、まだ完治できる治療法が確立していませんが、早期治療が重要といわれています。
血液中の酸素濃度や肺機能が低下し始めたら、抗線維化薬と呼ばれる内服薬を開始して、進行をできるだけ遅くし増悪を予防する治療を行います。低酸素状態が強い場合は在宅酸素療法を実施します。根本治療がないため、肺移植を検討することもあります。
また、急性増悪を起こした場合はステロイドや免疫抑制剤で治療を行いますが、死亡率が高いことから人工呼吸器の使用は慎重に決定します。
そのほかの特発性間質性肺炎では、病状に応じてステロイドや免疫抑制剤で治療を行います。
職業・環境によるもの
じん肺は完治できる治療法がありません。吸入薬や鎮咳薬、去痰薬などの対処療法と、呼吸リハビリテーションによる呼吸機能の維持を図ります。
過敏性肺炎では原因となるカビや化学物質などの原因を避けるようにし、重症の場合はステロイドを使用します。
治療薬の副作用によるもの
原因となった薬の使用を中止します。鎮咳薬などの対処療法で様子をみますが、症状が強い場合はステロイドの使用も検討します。
全身性の病気によるもの
原因となる病気の治療を行います。一部の膠原病で抗線維化薬を使うことが有効であることが分かってきました。
間質性肺炎で受けられる経済的な支援
間質性肺炎の治療では高額な治療薬を使用したり、在宅酸素療法で必要な医療機器をレンタルするなど、経済的な負担が生じます。さまざまな支援を使って、負担を減らしましょう。
難病医療費助成制度
間質性肺炎のうち、特発性間質性肺炎は指定難病です。重症度が高い場合は難病医療費助成制度の対象となり、医療費の自己負担額が軽減されます。
高額療養費制度
重症度が低く難病医療費助成制度の対象とならなかった場合は、高額療養費制度を使うことができます。自己負担額が限度額を超えた場合、その分を払い戻しまたは免除を受けることができます。
介護保険
65歳以上であれば、介護保険を利用して、公的介護サービスをうけることができます。必要に応じて介護サービスの利用も検討しましょう。
在宅介護サービスの種類と特徴について詳しく見る身体障害者手帳
肺機能検査や血液中の酸素の濃度が条件を満たした場合には、身体障害者の認定が受けられます。国や自治体、民間の障害者向けサービスを受けることができます。
経済的な支援を受けるためには重症度など一定の条件を満たす必要がある場合が多く、医師の診断書が求められることもあります。主治医と相談しながら、賢く利用しましょう。
イラスト:坂田 優子
この記事の制作者
著者:矢込 香織(看護師/ライター)
大学卒業後、看護師として大学病院やクリニックに勤務。その後、メディカル系情報配信会社にて執筆・編集に携わる。現在は産婦人科クリニックで看護師として勤務をするかたわら、一般生活者のヘルスリテラシー向上のための情報発信を行っている。
監修者:茂木 孝(呼吸ケアクリニック東京・所長)
東京医療学院大学客員教授
日本内科学会認定総合内科専門医
日本呼吸器学会専門医・指導医
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会代議員
呼吸ケア指導士