【2021年最新】お薬手帳アプリは機能より使いやすさで選ぶ

お薬手帳アプリは、機能性に優れ、薬局での待ち時間が減るなど多くのメリットがあります。冊子型のお薬手帳と比べてアプリには、基本となる身体の情報と服薬の記録から、処方せん画像の送信、血圧や体重などを自動でグラフ化する健康管理ツールや、多彩な検索機能まで様々です。

ここでは、多数存在するお薬手帳アプリのなかから、その選びかたや、薬局で使うときの注意点について薬剤師が解説します。ご家族皆さまの健康管理にお役立てください。

お薬手帳アプリのメリット

お薬手帳アプリのメリットは、冊子にはない多彩な機能です。持ち忘れることが少なく、スマホで処方せんの画像を撮って薬局へ送れば、薬を受け取るまでの待ち時間も短縮できます。

また、およそ9割のアプリでは、家族など複数人の手帳もひとつのアカウントで管理ができます。子どものいる家庭などでは、受診のたびにかさばる冊子を持参しなくてすむため便利ですね。

お薬手帳アプリの多彩な機能

ここからはアプリの機能について「基本の機能」「便利な機能」「プラスαの機能」と大きく三つに分けて紹介します。

基本の機能

・副作用やアレルギーなどの安全に薬をつかうための情報
・住所や緊急連絡先
・処方薬の記録

便利な機能

・処方薬を二次元QRコードで読み込み
・スマホで撮った処方せんの画像を薬局へ送信
・飲み忘れを防ぐアラーム
・カレンダー(飲んだ記録、飲む予定日)
・家族などの手帳も管理
・薬局や医療機関の検索
・処方薬や市販薬の情報を検索
・バックアップ(データ保存)、データ移行
・健康診断の結果をグラフ化

プラスαの機能 ・体調などのメモ
・医療費の記録
・利用状況がポイントとなり、ギフト券などに交換
・オンライン診療やオンライン服薬指導の予約
・かかりつけ薬剤師/薬局からのメッセージを受信
・健康管理の役に立つ情報サイトへのリンク
・薬に刻印されている識別コードから薬を検索
・薬局以外でも、見せたい人にWebを使って情報を共有
・飲み忘れた薬代のデータをグラフ化

  • ※「便利な機能」は、ほどんどのアプリに搭載されていますが、「プラスαの機能」は、メーカ―ごとに異なります。

人気のアプリでは、基本的な機能はもちろん、飲み忘れをふせぐアラームや信頼できる検索サイト、ポイントがもらえるお得な情報など、メーカーにより様々な工夫があります。

どのアプリを選ぶかは、自分が日常的に気軽につかえて、長く愛用できる機能を優先に選ぶことが大切です。

アプリ選びの5つのポイント

どのアプリにも、冊子にあるような「基本の機能」はあります。また、処方せんの画像を薬局へ送信するといった「便利な機能」も、およそ8割のアプリで広く搭載されています。

では、数あるアプリから、どれを選んだらよいでしょうか?次にあげる5つの基準で、いちばん必要だと思えるものを選びましょう。

【自分にあったアプリを選ぶポイント】

  • 「シンプルなもの」薬の記録や処方せんの送信など、機能数が少なく覚えやすい
  • 「検索機能の充実」薬のほか、薬局や病院、役に立つ情報サイトへのリンク
  • 「体調管理ツール」血圧や健診、体重、万歩計などがグラフになり意識も高まる
  • 「サポートツール」薬局や薬剤師から必要なときはメッセージが貰えて安心
  • 「お得な情報が欲しい」利用状況に応じてポイントが貰える

薬局でつかうときの注意点

アプリはスマホにダウンロードしただけでは使えません。まず始めに、「氏名や連絡先」のほか、「副作用の既往」や「アレルギーの情報」などを登録しましょう。それぞれの利用シーンの注意点について解説します。

処方せんの画像を送る前に薬局へ一報いれておく

この機能は、病院で受け取った処方せんの画像をあらかじめ薬局に送信しておくことで、薬の受け取り時間を短縮することができる便利な機能です。

「初めて利用する薬局」や「初めてもらう薬」のときは、この機能を使う前にあらかじめ薬局に連絡をしておくとよいでしょう。万が一、薬の在庫がなかったとしても、事前連絡をしておくことで手配してもらうことができます。そのため、アプリの連絡先には携帯番号を必ず登録しておきましょう。

また、副作用や併用薬の情報も記載しておくと、送ったその時点で、安全確認をしてもらうことができます。

薬局独自のアプリにしなくても良い

薬局によっては、自社でアプリを開発していたり、おすすめアプリを紹介してくる場合があります。しかし、それに合わせて自身がつかっているものを変える必要はありません。

異なるアプリをつかっているときは、「ワンタイムコード」という機能が便利です。この機能があれば、薬局内のPCなどから情報を一時的に確認してもらうことができ、スマホを預ける必要がありません。6割以上のお薬手帳アプリにこの機能が搭載されています。※2020年10月時点。

処方せんを渡すとき

薬局で処方せんを渡すときに「手帳はアプリです」と伝えましょう。薬の情報を登録するために必要な、二次元QRコードを受け取り、その場でアプリに登録します。

薬局によっては、このQRコードを、領収書や明細書とは別の用紙で渡すところもあり、「アプリの利用」と伝えないとQRコードを貰えず、薬の情報が登録できないので注意が必要です。

アップデート(更新)は定期的に

久しぶりに薬をもらったら、アプリが旧バージョンで開けない……といった経験はありませんか?アプリは随時バージョンアップが必要です。メーカーは日々、より良い機能を追加したり、不具合を調整したり開発を重ねています。最初にダウンロードしたままだとこういった改修が反映されず、「QRコードが読みこめない」というような例もあるといいます。

アプリ内でのお知らせはこまめに確認し、アップデートのしかたが分からないときは、かかりつけの薬局で相談してみましょう。

オンライン化で加速する「プラスα」機能

2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のために、医療資源が少ない地域などに限定される通常のオンライン服薬指導とは異なった、特別なオンライン服薬指導が導入されました。

それに伴い、一部のアプリで「オンライン診療」や「オンラインでお薬」という機能が追加されています。この「オンラインでお薬」というのは、薬局へ行くことなく薬剤師からオンラインで説明を受けて、薬を配送してもらえる機能です。

処方せん原本を薬局へ郵送し、クレジットカードで支払いをおこなうなど、二次感染を防ぎつつ時間も節約することができます。

また、テレワークでインフルエンザや溶連菌など一般的な感染症にかかるリスクが減り、医療機関へ行かなくなったことから、健康の情報をえる機会が少なくなったひともいます。そのようなときは、「子ども医療電話相談#8000」といった、信頼性の高い情報の検索機能が役に立つでしょう。

このようにアプリは、オンライン化にも対応しながら、日々の健康管理に役立てられるとして期待されています。

もしものときにも安心な機能

アプリは機能が追加されるほか、逆に、バージョンアップすると、それまでの機能が使えなくなることもあるといいます。また、他のアプリでより魅力的な機能が追加され、変えたくなるひともいるかもしれません。では、ほかのアプリへ変えたくなったときは、どうしたらよいでしょうか?

5割以上のお薬手帳アプリに、データを移せる機能があります。ここで大切なのは、データの移行をする前に、バックアップをとっておくことです。

このバックアップには大きく二つの意味があります。一つ目は、データ移行に失敗したときのためです。そして二つ目は、災害や事故など、スマホをなくしたときのためです。

紙の冊子では、火事や水害でのデータ復旧は難しいですが、メーカーのサーバーに情報が保管されるアプリなら、復旧が可能なものも多いです。

【コラム】地域の医療情報ネットワーク

  • 自治体がつくる独自の医療情報システムもあります。たとえば、「MMWIN」(みんなのみやぎネット)は、あらかじめ病歴や検査結果といった個人情報を登録しておくことで、宮城県内の医療機関、介護福祉施設や薬局などで情報共有されます。これにより、もしも災害が発生しても、医療情報を失うことなく適切な医療支援ができるように整えられた情報ネットワークです。

機能の数より、「使いやすさ」が大切!

アプリはその機能の数よりも、自分が気に入って、長くつかえるものを選ぶことが大切です。

冊子の手帳と同じように、薬局や診療科で使いわけるのではなく、ひとつのアプリにデータを積み重ねていくことで、いつでもどこでも気軽に自身の健康をふり返ることが出来ます。

また、信頼性のある検索方法をつかって薬と健康について調べることで、健康寿命の延伸につながることが期待できるでしょう。

お薬手帳アプリを、より楽しく、健康を管理するためのツールとしてお役立てください。

この記事の制作者

曽川 雅子

著者:曽川 雅子(株式会社リテラブースト代表、薬剤師)

東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。2017年にセルフメディケーションサービスを展開する「株式会社リテラブースト」を設立。処方せん薬に偏ることなく、予防医療やヘルスリテラシーの在り方、そのサポーターと連携の意識を分かち合うため、薬局だけでなく、健康経営を掲げる民間企業へのセミナーも積極的に行っている。

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