【表で確認】漢方薬にも副作用がある!その原因と注意したい症状
「漢方薬は有効成分が生薬だし副作用がなくて安心」と思っていませんか?しかし、漢方薬にも高血圧や胃腸不良などの副作用があります。
低身長や低体重ほど起こりやすく、身体機能の低下した高齢者も過信はできません。
ここでは飲み方の基本や副作用、漢方薬と正しく向き合う方法について専門家が解説します。
漢方薬と西洋薬では副作用の症状が異なる
漢方薬にも副作用はあるので注意は必要です。ただし、一般的に効き目は穏やかなものが多く、西洋薬のように、飲み始めて数日間で治療が必要なほど大きな副作用が出るということはまれです。
漢方薬は、生薬とよばれる植物や動物、鉱物などを2種類以上組み合わせて作られたものです。
この生薬自体にアレルギーを持つ人の場合や、成分の強い生薬が含まれている場合には、薬疹(やくしん)などの皮膚症状や、胃痛や吐き気などの消化器症状が出ることがあります。
西洋薬なら、肝臓や腎臓の機能が低下している人の場合とくに副作用が出やすいだろうと予測できます。
一方、漢方薬はからだの中で主にどの部分に働きかけ、どの部分で分解されるといった効く仕組みの詳細がまだ明らかにされていません。そのため、持病のない人でも漢方薬を飲むときは、わずかな不調にも気付いて対処していくことが大切です。
漢方薬でよくある副作用の原因
医療用として処方される漢方薬(保険適用の漢方薬)は148種ありますが、前述のとおり、漢方薬には2種類以上の生薬が含まれていて、その種類数やそれぞれの量は様々です。
さらに漢方薬は2~3種を組み合わせて飲むこともあり、それぞれの漢方薬に含まれる生薬の重複にも注意が必要です。
漢方薬の副作用で最も多いのは胃もたれなどの消化器症状。次に湿疹やかゆみなどの皮膚症状です。これらは比較的軽い副作用で、ほとんどの場合は飲むのをやめれば症状はなくなります。
漢方薬の副作用が起こる主な原因
- 「漢方薬は作用が穏やかだから」と規定量を超えて飲む
- 2種類以上の漢方薬を自分の判断で組み合わせて飲む
- 生薬を含む市販薬やサプリメントを気付かずに併用する
生薬によって副作用の症状は異なる
生薬の中には、その生薬が起こしやすい副作用というものがあります。頻繁におこるわけではありませんが、初めて飲むときや長期で飲み続けているときは注意が必要です。
漢方薬に含まれる生薬の場合、市販薬にはその内容が箱に書いてあります。処方薬の場合は薬剤師や登録販売者に聞くと分かります。
生薬ごとに、次の表のような症状が出ていないかどうかをチェックし、もしも当てはまる症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。
副作用を起こしやすい生薬の代表例
生薬名 | 「副作用」とチェックする症状 |
---|---|
甘草(かんぞう) | 「偽アルドステロン症」「低カリウム血症」「ミオパシー」 血圧があがる、むくみ、手足のしびれ、つっぱり感、こわばり、筋肉痛、手足に力が入りにくい、など |
麻黄(まおう) | 有効成分のエフェドリンによるドーピング反応陽性化、動悸、不眠、多汗、胃もたれ、食欲不振、みぞおちの痛み、下痢、尿の出にくさ、など |
附子(ぶし) | 「アコニチン中毒」唇や舌のしびれ、手足の麻痺・しびれ感、吐気・嘔吐、動悸、脈がおかしい、のぼせ、熱感、発汗など |
地黄(じおう) | 胃もたれ、食欲不振、みぞおちの痛み、下痢など |
黄ゴン(おうごん) | (アレルギー反応として) 「間質性肺炎」「肝機能障害」発熱、乾いた咳、呼吸困難、眼球の白目の部分や皮膚が黄色くなる、全身のだるさや痒み、食欲が無い、不眠、など |
※代表的な生薬ごとの副作用を記載していますが、これがすべてではありません。飲んでみて不調を感じるときは自己判断せず、医師または薬剤師に相談しましょう。
あなたは大丈夫?副作用が起こりやすい人の特徴
漢方薬や生薬の副作用で起こる消化器症状と皮膚症状は、飲むことをやめれば副作用も治まることがほとんどです。
一方で治療が必要となる副作用もあります。その頻度は0.1%未満とごくわずかですが、症状が出始めた初期段階で受診することが重要です。
たとえば、肺がカチカチに硬くなってしまう「間質性肺炎」や、血液検査をしないと自分では気づきにくい「肝機能障害」、筋力が低下して入院につながりかねない「偽アルドステロン症」などを発症する可能性があります。
とくに、次のような特徴をもつ人は注意しましょう。
副作用が起こりやすい人の特徴
- 漢方薬を3種類以上あわせて飲んでいる
- 飲み始めて3ヶ月以内の人(副作用が発症したうち約4割の人が3ヶ月以内に症状が出ている)
- 女性(男性よりも2倍ほど多く発現している)
- 身長が低く体重も軽い
- 中高年(50~80歳代で多く発現している)
- 尿をだしてむくみを取る薬(利尿剤)を飲んでいる
- 糖尿病でインスリン治療をしている
- 糖尿病でインスリン治療をしている
- 肝臓疾患で治療をしている
- 健康診断や採血検査を1年以上うけていない
副作用だけじゃない!身体に影響を及ぼす漢方薬
漢方薬の副作用というレベルではありませんが、さらに3つほど注意しておきたい点があります。
血液検査に影響を与える生薬
2015年に、物忘れを改善する生薬として「遠志(おんじ)」が認められ、ますます漢方薬のニーズは高まってきていると言えます。これは市販でも買える漢方薬ですが、血液検査に影響を与えることがあります。
また、飲んでいることを伝えずに、糖尿病の検査をすると、正しく結果が出ません。本来の薬よりも強い処方がなされる可能性があり、低血糖のリスクが高くなってしまい危険です。
生薬「遠志(おんじ)」を含む漢方薬
- 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
- 加味帰脾湯(かみきひとう)
- 加味温胆湯(かみうんたんとう)
- 帰脾湯(きひとう)
長く使うと身体の負担になる漢方薬
便秘の人なら、一度は漢方薬の下剤を飲んだことがある人も多いのではないでしょうか。市販で手軽に買うことができますが、「自然の成分だしクセにならないはず」と思っている人は、注意が必要です。
生薬の「大黄(だいおう)」が含まれる漢方薬は、大腸を刺激して便を出しやすくします。これを長く飲み続けると、自身の腸運動機能を弱めてしまうだけでなく、依存性もうまれ、大腸の粘膜に色素が沈着して黒ずんでしまうことがあります。
食生活や腹筋の筋力アップなどで、薬に依存しない便秘改善法も探してみましょう。
便秘にも種類がある|予防に向けた食生活のポイント妊娠中は控えたい生薬
妊娠5~7ヶ月(16~28週未満)の中期をすぎて安定しているときには、比較的安全に使用できますが、全ての生薬が安全なわけではありません。
早産・流産の危険性がある、大黄(だいおう)、亡硝(ぼうしょう)、桃仁(とうにん)、牡丹皮(ぼたんぴ)、紅花(こうか)、牛膝(ごしつ)を含む漢方薬は飲まないようにしましょう。
セルフチェックで副作用に早く気付く
漢方薬を飲むきっかけは、「西洋薬では治しきれない不調がある」、「原因が分からず長く続く不調がある」といったタイミングが多いでしょう。この場合、つねに何かしらの不調に悩んでいるため、新たな不調があったとしてもそれが副作用と気づきにくいことがあります。
そこで次のようなセルフチェックをしてみましょう。
- 胃もたれや下痢など、心当たりのない消化器症状がある
- 湿疹やじんましん、かゆみなどの皮膚症状がある
- 湿疹やじんましん、かゆみなどの皮膚症状がある
- 疲れることをしていないのに、いつも疲労を感じる
- ベルトや靴下などむくみやすい
漢方薬はその効き目の穏やかなものが多く、安心と思われがちですが、副作用の起こりかたも緩やかで、気付かないうちに悪化していくことがあります。
セルフチェックでひとつでも当てはまった人は、「そんなにひどくないから…」と放っておかずに、医師や薬剤師に相談してみましょう。
イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:曽川 雅子(株式会社リテラブースト代表、薬剤師)
東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。2017年にセルフメディケーションサービスを展開する「株式会社リテラブースト」を設立。処方せん薬に偏ることなく、予防医療やヘルスリテラシーの在り方、そのサポーターと連携の意識を分かち合うため、薬局だけでなく、健康経営を掲げる民間企業へのセミナーも積極的に行っている。